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【銀月外伝】 グラディウス - 相反するもの

トールが還り、初めての満月が夜空に架かる。

グラディウスはひとりブルーヤロウの滝に打たれている。



世界が遠くなる。
意識は遠くない。


ただ目前の世界が、一枚の紗をへだてたようにすうっと遠ざかる。

自分から離れてゆく。

きつい水流に打たれながら持ち上げる手の感触も、どこか遠い。



遠くへ。
遠くへ。


どこかへ追い立てられる。

ここは自分に許された世界ではない。


誰かの夢。
その人が目覚めれば跡形も無く消えてしまう、夢。




遠くへ。
遠くってどこへ。


帰りたい。
帰るってどこへ。





自分は何も持ってはいないのに。





凍えてきた手を動かしたとき、岩にこすってふやけた皮膚が切れた。

だらりと流れ出す血液。 ……その痛みすら、遠い。


ぼんやり眺める手からしたたる血は、赤く見えた。




ほら。

これはやっぱり祝福された誰かの世界。

自分はここにいてはいけない。
この身体はこの心の持ち物ではない。



どこかへ。
どこかへ。

正当な持ち主にこの身体を返して。





オマエニユクトコロハナイ



光も闇も双方がきつく追い詰め追い立てる。







オマエニ ユクトコロ ハ      ナ   イ







凍えた歯の根がふるえてきても、冷たいそこを動けない。




「なんだお前。ずいぶん冷えてるな。笑 」
「もう上がれよ」 

穏やかな声と一緒に、暖かい手に腕を掴まれた。
ぼんやりしたままその手から肩先へ、一緒に水に打たれている顔へゆっくりと視線を上げる。
明るい黄緑の瞳がこちらを見ていた。

「まだ上がる気は無いのか? 」


上がる?
ここから?
ここから上がって……どこへ?


働かない頭で呟く。
帰れるところなどないのに。
暖かい場所にいる資格などないのに。


すると彼は少し怒ったように言った。


「今日はだめ。上がってくれ。
そうやって自分を責めるのは、今はだめだ。強引にでも連れ出すから。
嫌だったら私を殴り倒すなり切り捨てるなり自由にやれ。」


……切り捨てる? デューク、お前を?

そんなことができるわけがない。


腕を引っ張られるまま、グラディウスは湖から上がった。




-----




……なのに。

せっかく、迎えに来てくれたのに。


少し落ち着いてくると逆に、怯えた記憶は骨の芯を凍りつかせて、小さく身体をふるわせ縮こまらせる。
闇が、いや自分を取り囲むすべてが怖い。



触れられない。

この世界中でもっとも信頼している彼にさえ。


びしょ濡れの髪をタオルで拭いてくれる暖かい手に恐れを感じる。
身体を暖めるためにと差し出されたグラスの酒を飲むことができない。


頭でわかっている、心で知りぬいているはずの安全と安心すら
凍えた過去の記憶は押しのけて支配しようとする。



彼は違う とわかっているのに、勝手に避ける身体に嫌悪を感じる。
骨の奥が軋む。



一緒にいられない。
居れば傷つける。


彼を嫌悪する自分も許せない。


理由はない。
理由はある。


戦闘技術だけを叩き込まれた自分が、追い詰められたとき何をするかなど
想像したくもない。


剣のそばに、息づく命のそばにいてはいけない。
自分が何をしてしまうかがわかっているから。



誰にも触れられたくない。
あの人を傷つけたくない。



グラディウスは部屋を飛び出した。
外で暴れたくなる衝動を抑え、もう一度滝に飛び込む。

冷たい水の矢が何本も身体に刺さると、わずかながら痛みに救われるような気がした。
氷のような温度は力の衝動を鎮めてくれる。
頬を流れる水の源はどこだろう。


剣で言葉で体術で、彼を傷つけずにすんだことにほっとする。




けれど。


このときデュークが出かけていたことを、グラディウスはまだ知らない。

















<デューク  - tracking code ->
http://blog.goo.ne.jp/hadaly2501/e/93d8ebca1ced8072f13c1e333ce8ef82



-----

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◆【外伝 目次】

前話の続きです。
続き物とわかりやすいよう、前話のタイトルを「記憶」から「浮かびくるもの」に変更しました。


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Comment

Re:【銀月外伝】 グラディウス - 相反するもの 

さつきのひかりさん~
この感覚携えての日常生活はけっこうキツかったでしょうね…
タイミングがドンピシャ…!
読んでてフラッシュバックするなぁ~
今生ではないけど似たような感情を持っていた感覚があることに気付いたかも…
今だから気づけたのでしょうね~
ありがとう♪
続きを楽しみにしてます♪
  • posted by 撫~風~羽~♪ 
  • URL 
  • 2010.07/07 16:34分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【銀月外伝】 グラディウス - 相反するもの 

こういう感覚持ってる人、結構いるのかも。
昔私も、同じように感じてました。でも、リアルな自分というよりは、感覚の再生だったように感じます。
  • posted by なつ 
  • URL 
  • 2010.07/07 22:38分 
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  • [Res]

おへんじ 

>撫~風~羽~♪さん
これね、小学校時代に何年かあった感覚で^^;
初めてではなかったので。
似た感覚をお持ちの方、けっこういらっしゃるかもですね。


>なつさん
私が小学校時代に感じていた感覚は、精神医学的に言うとまんま離人症の症状でした。
日常生活を送れていたので病院には行っていませんでしたが、行っていたら診断が下りていただろうなあと思います。爆
感覚の再生ということは、どこかの過去生にあったのでしょうか…。
  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2010.07/10 17:38分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【銀月外伝】 グラディウス - 相反するもの 

さつきのひかりさん、記事に関するコメントでは無く質問なんですが、ご回答頂けますか。
さつきのひかりさんのブログを大変興味深く読ませて頂いています。
ところが、初回から読ませて頂いていない為か、物語なのか現実の話しなのかが今一つ明確ではありません。
さつきのひかりさんが、ヒーリングを実践されている方でブログ中に出て来る物語や登場人物は、何らかの霊的示唆であるのかとも推測出来ます。
しかしながら、物語だけ取ると何やらコンピューターゲームか小説のようにも受け取れます。
実際のところ、現実のヒーリング実践をされているのか物語なのかを教えて頂けませんでしょうか。
トンチンカンな質問で、ごめんなさい。
Standing Bear
  • posted by Standing Bear 
  • URL 
  • 2010.07/12 02:16分 
  • [編集]
  • [Res]

おへんじ 

>Standing Bearさん

現実のヒーリング実践も、物語を書くことも両方やっております 爆
記事も増えてきましたし、携帯からですと遡りづらいかもですねえ、すみません^^;

「銀の月のものがたり」は元々、私の内面の人格であり、上次元で実際に活動している人の記録として書き始めたものなので
こちらも私にとっては真実なのですね(第二部は過去生の話ですが)。

けれど、読まれる方にとっては普通のファンタジーと変わりないものでしょうし、
私自身物語形式で書き留めることが性に合っていてやりやすい、ということで
物語として公開しております。

私の中には存在する人たち、私という魂の沢山の側面といってもいいかと思いますが、
そういう現在進行形の存在の話ですので、ヒーリング記事に登場人物の名前が出てくることもあるわけなのです。

ヒーリングはヒーリングとしてリアルに普通に実践を続けております。
それはたくさんの方々のご参加コメントを見ていただければ、嘘ではないということがわかっていただけるかと思います^^
  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2010.07/12 10:03分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【銀月外伝】 グラディウス - 相反するもの 

さつきのひかりさん。
大変ご多忙な方と推測致します。
大切なお時間を割いて、私の場違い(さつきのひかりさんのブログに参加されている方は皆さん、理解されていることを)な質問への回答を頂きましたこと、本当に感謝します。
また、とても嬉しく思います。
また、ご丁寧に説明を頂いたことで、さつきのひかりさんのブログ内容にも活動されていることにも、更に興味が深くなりました。
ありがとうございます。
本当におもしろい(変な意味では無く純粋に)ですねえ。
天上界のこと、天上人のこと、さつきのひかりさんたちとの交わりなどなど。
勿論、物語としてもとてもおもしろいですが、高位次元(認識出来る人には、現次元とも被さるものでしょうね)での現実の移り変わりの様を垣間見させて頂く意味でもおもしろいです。
瑚月さんの明治神宮のお役目の話しから、さつきのひかりさんにたどり着いたのですが、明治神宮のお役目の話しもとてもおもしろく、興味深く拝読しました。
いやあ、書き始めるときりがないので、今日はこれくらいでお暇します。
さつきのひかりさん、瑚月さんたちと『浄化』『ヒーリング』頑張ってください。
人も場所も地球も。
沢山の善きことがありますようにお祈りしています。
Standing Bear
  • posted by Standing Bear 
  • URL 
  • 2010.07/12 17:30分 
  • [編集]
  • [Res]

おへんじ 

>Standing Bearさん

瑚月さんのところからおいでくださったのですね~♪
あの方も尊敬する人のひとりで、すごいですよね。

上位次元といっても、現在の三次元よりもほんのちょっと上、というくらいのもので
まだまだものすごく人間くさい部分があったりするのですけれど、
それこそが多分、三次元と共鳴してトラウマを解消するのによい位置なのでしょうし
物語としても起伏が出て面白いですね(爆
や… 渦中が終われば言えるんですが^^; ←

どうもありがとうございます。
  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2010.07/13 11:53分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【銀月外伝】 グラディウス - 相反するもの 

さつきのひかりさん、
お返事ありがとうございます。
そうですかあ、三次元のチョット上位次元の話しなんですねえ。
天上界(天上人)の話しでは無いと云うことになる訳ですね。
そうかあ、それで随分人間臭い部分が伺われるのですね。
そしてそれが、三次元に肉体を持ち活動している現世人の癒やしに強く作用出来る(出来易い)関係になって来るのですねえ。
この超三次元(勝手に仮に呼ばせて頂いていますから、訂正ください)とも呼べる次元へも天上界の意志が伝えられているのですよね、キット。
ところで、さつきのひかりさんが仰る『渦中を過ぎれば~』と云うのは、上位次元での『渦』と云うことなんですね、キット。
話しは、コロッと変わりますが、瑚月さんのところも極最近訪問させて頂いたばかりで、まだまだ状況がよく分かってはいないのですが、兎に角興味深くおもしろく拝読しています。
また、書かせてください。
お元気で過ごされますように。
Standing Bear
  • posted by Standing Bear 
  • URL 
  • 2010.07/13 15:22分 
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物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
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