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【陽の雫 44】 制圧

暁の最初の光が施設の無機質な壁を照らす。
それを合図として、多方面からいっせいに攻撃が始まった。人数は三個小隊二十五名。施設ひとつを制圧するには多いとはいえないが、綿密に要所を押さえて展開している。

アルディアスは左右にエル・フィンとデオンを従え、正面から中枢部に向かって真っ先に切り込んでいった。
事前に隊が入手していた見取り図をもとに、効率がいいだろうとデオンから進言があったルートだ。

灰色の無機質な建物の中、剣を片手に容赦なく進む彼の周囲を、凍てついた氷晶のオーラが取り巻いている。
いたいけな子供たちを何人も犠牲にした集団に対しての、彼の怒りは深い。
さすがに自警団を称するだけあって多くの敵が武器を持って前をさえぎったが、いささかも突撃の速度をゆるめることはできなかった。

「すげえな……」

自身もかなりの腕前で邪魔する敵を切り捨てていきながら、デオンが呟いた。
三人の勢いに逃げる敵も多かったが、深追いはせずに前進してゆく。散った敵は後でまとめて捕まえることになるだろう。

「遅れるなよ」
「お前こそ」

左右に血煙を上げて走りながら、エル・フィンとデオンが言い合う。
二人とも戦場で、それも最前線の白兵戦でアルディアスの隣に立つのは初めてだった。

燃え上がる白い焔のような上官を追いながら、今まで耳にしてきた鬼神の噂が誇張ではなかったのだと実感する。
そしてそれでいてなお、彼らは致命傷よりも相手の動きを止めることに重点を置いて攻撃をしているのだった。

「トップはどこにいる」

内装が変わってきて豪華になり、中枢と思われる場所の近く。少し身なりのいい男を見つけたアルディアスは、無言で駆け寄るとただ一合で相手の剣を叩き落とした。
尋ねた低い声は、背後のエル・フィン達ですらぞっとするような氷温下だ。

「コ、コントロールルームに」

痺れる手を空いた手で押さえながら男が言う。アルディアスの凍てついた瞳は、氷のように消えた色の奥にルビーの輝きを宿し、いっさいの嘘を許さぬ峻厳さをもって男を見据えていた。

エル・フィンはごくりと唾を飲み込んだ。
銀髪の上官の瞳は、戦闘時になると普段の深い藍色から色がだんだん失われて凍てついた氷の色になる。その後奥に紅い輝点が生まれ始め、それが広がって藤色、さらに怒りが深いとき、最後には深紅になる……らしい。

らしいというのは、滅多にそうはならないこと、そして真っ向から見た者は全員すでに墓の下にいて、証言する者がいないからだ。味方のうちでは、唯一セラフィトが藤色になったときを目撃しているくらいだという。

「根性のない奴だな。マスター、嘘かもしれません」
「ああ、吐くのが早すぎるな」

エル・フィンとデオンが血濡れた剣を構えてじりじりと押し包むと、男は半泣きになってわめいた。

「う、嘘じゃない! 頭はコン、コントロールルームだ。俺は奴に義理なんかない」
「義理なんかない? さんざん儲けていい思いをさせてもらったんだろ、ああ?」

デオンが男の背に回り、ぎりぎりと腕をねじあげる。エル・フィンは冷ややかな目線を油断なく周囲に配りつつ、剣を相手の喉もとに突きつけた。
周辺にはほとんど人影がない。このあたりまで来るのは中枢に近い人間だけなのだろう。

「た、助けてくれ。教えたじゃないか」
「あいにく俺達は、今あんたに容赦してやるほど優しい気持ちじゃない。コントロールルームとやらに案内してもらおう。トップがそこにいなかったら……わかってるな?」

曇りない青い瞳が冷たく光る。
デオン隊の苦心によっても、中枢近くの地図は入手できていなかった。この男に案内させるしかない。

トップのいる部屋にみすみす敵を連れてゆけば、後でどうなるかは目に見えている。しかし、今目の前にいる三人の死神のほうが恐ろしかったのだろう、男は震える首を振って了承した。

警報の鳴り響く中、利き腕をデオンに押さえ込まれたまま、男は目的地へ向かって歩いた。もはや一刻も早くこの状態から逃れたいという思いしかないのかもしれない。足は震えてもつれがちではあったが、意図的に遅くしようという様子は見られなかった。

嵩にかかって弱い者をいたぶる者ほど、自分が死地に立たされると意気地がない。びくびくと微笑をうかべて襲撃者の機嫌をとろうとする男に、三人は舌打ちしたい気分になった。

お前たちのせいで殺された子供達の声を聴け。
そう怒鳴りつけてやりたい衝動に駆られる。

遠慮会釈なくぎりぎりと男の腕をねじりあげたデオンの斜め後ろから、アルディアスとエル・フィンが続いた。感心にも阻止しようという敵兵は、あっという間に二人の剣に倒されてゆく。
同時に心話を使って、他の部隊との連携をとる。

(マスター、他小隊も順調に要所制圧にむかっています。外に出ようとする奴はドラゴン部隊が抑えています)
(よし。ではこちらはこのままコントロールルームに向かう)

階段を上ると内装はいっそう贅を尽くしたものになり、トップの居場所が近いとわかった。
ひときわ豪華な扉の両脇に立つ守衛を倒して、両開きの扉をエル・フィンが開ける。同時にデオンが男の腕を離し、部屋の中にむかって蹴りこんだ。
男が両手をばたばたと振り回しながら二、三歩進んで倒れる。

その隙に三人は素早く中に走った。
正面の奥壁に大きなモニタが二つ設置されている。片方には分かれた画面にグラフがいくつも映し出され、もう片方は警備関係らしく、施設の外や内部がいくつも映っていた。ところどころに黒一色の画面が混じるのは、すでに監視カメラを破壊されているのだろう。

手前側にはそれぞれ数台の端末を備えたいくつかのブース。隅のひときわ暗い雰囲気のブースは『商品』の編集場所であろうか。
その他、動画を売りさばいて売り上げを監視したり、一番手前は警備関係らしく、端末画面に出ている見取り図にずっと赤いランプが点滅し、警報が鳴り続けている。

扉を開けた瞬間、部屋内にいた数人が入り口を振り向いた。だがエル・フィンが放った強力な捕縛魔法に拘束され、そのまま動きを凍らせる。そこへアルディアスが電撃を放って気絶させた。この中には武装した人間はいないようだ。
三人はそれに目もくれず、モニタの右側にあるドアへと突進した。

剣を構えたデオンが扉を蹴り開ける。その小部屋は大きな窓とゆったりしたソファセットのある、豪華なつくりだった。
しかし走りこんだ三人は、次の瞬間にはトップの左右にいた数人の護衛と見える人間と斬りあっていた。

この侵入者には、まったく容赦というものがなかった。三本の剣が稲光のようにきらめいて正確に敵の急所を狙い、同時に雷撃と魔法陣が展開される。

それぞれほんの数合の撃ち合いで決着がつき、あっという間に豪奢な装いをした中年の男はただ一人取り残された。

「ちっ、弱いな」

血刀をさげたデオンが吐き捨てた。こんなに弱いくせにあれほどの悪事を働いていたのかと思うと、逆に憤りが沸いてくる。
アルディアスは冷ややかな無言で首謀者を見つめていた。

机にある通信機から指示を求める連絡がひっきりなしに入っていたが、男はエル・フィンの捕縛魔法できつく戒められ、動くことができない。
トップを押さえられた自警団は、見る間にぼろぼろと連携が崩れていった。

機動力とコンビネーションがうまく機能した結果、朝日が昇りきる前にアルディアスの軍によって施設は制圧された。

付け焼刃の自警団など、まるきり歯が立たない。トップを抑えられただけで烏合の衆と化し、すでに問題にもならなかった。

そうして、通常の作戦ではありえない三十人弱という少人数で、ありえない速さで決着がついたのだった。
 















<ただの物語 断片52 作戦4> エル・フィンさん
http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-209.html


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◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第二部【陽の雫】目次



エンジェルナンバーがこんな話^^;
まあ、前の回でなかっただけいいか 爆

勢いで書きましたが、もうちょっとじっくり追いかけてもよかったかな?


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手に汗握る… 

気がつけば、クッと息を詰めて一気読み。読み終わった後、(はぁ~)と息を吐いてました(笑)
エンジェルナンバーだったんですね(◎o◎)!何か意味があるのかしら。
いつも楽しみにしています。この文章量、尋常じゃないたいへんさだと思いますが、これからも、ぜひぜひ続きを読ませてください<(_ _)>
  • posted by ももんが 
  • URL 
  • 2010.04/29 12:17分 
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Re:【陽の雫 44】 制圧 

うわ、すげっ!
軍神とでも表現できそうな…
かっこいい~とミーハーなことをいいそうです♪
実際には察するだけで、こんなすごい場面はなかなか彼女や奥さんは見られないんですよね~♪
映画のよう…
  • posted by 撫~風~羽~♪ 
  • URL 
  • 2010.04/29 12:47分 
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Re:【陽の雫 44】 制圧(04/29) 

ゾクゾク☆思わず目を見開いて読んでいました。
目の色が変わるあたり、引き込まれました。
かっこよすぎです。良かった、無事制圧ですね。
いつもドキドキさせてもらっています。
続き、楽しみにしています!
  • posted by unico☆ 
  • URL 
  • 2010.04/29 14:24分 
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Re:【陽の雫 44】 制圧 

さすが、の強さですね。
胸がスッとしました。

いつもありがとうございます♪
  • posted by あんず 
  • URL 
  • 2010.04/29 23:04分 
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  • [Res]

Re:【陽の雫 44】 制圧(04/29) 

いつ読んでも、さつきのひかりさんの文章力に感激です。
ついつい、ファンタジー小説のように引き込まれてしまいます。が、これがもし実際今生で自分の身に起きていたことだと想像すると・・・、日々の平和な生活に感謝です。
このような事件を見て見ぬふり、いやそれから利益も得ていたであろう、悪代官を早く知りたく、そわそわしている自分がいます。
続きを楽しみにしています。どうぞ宜しくお願いいたします。
  • posted by ニャン太 
  • URL 
  • 2010.04/30 09:38分 
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Re:【陽の雫 44】 制圧(04/29) 

本当にあっという間に決着がついたみたいですね~
戦闘技術だけじゃなく、お互いに強い信頼で結ばれているアルディアスさんたちに、
こんなショボい犯罪集団が勝てるわけないのは、ある意味当然なのでしょうが。。。
私も読んでてスカッとしました♪
  • posted by たまねぎ 
  • URL 
  • 2010.04/30 18:14分 
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たまらんですー 

いやはや。。。
最近涙もろくて、
意味なく泣きそうになる。。
戦闘なのに(笑)
この物語、たまらんですっ☆
いやホント、たまらん。。。
  • posted by げてん 
  • URL 
  • 2010.04/30 19:57分 
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物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
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