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【陽の雫 43】 偵察

目標の施設に近づき、三人で地上に降り立つ。
移送艇は周回偵察の形をとり、十数分後に戻ってくることになっていた。

エル・フィンが、彼一流の魔法と技術で作り上げた、薄い端末を風に乗せて偵察に出す。
かなり薄い欠片で一見端末には見えないが、同調すれば思うままに動かせるし、中継して物を見ることもできる。

「周囲は特に警備が厳重という状態ではないようです。あくまで一般警備の配置です。ただ装備がちょっと大げさな感じがします」

半眼を閉じたエル・フィンが、実際に軽量とはいえプロテクターをしっかり身につけているのを指摘する。持っている火器も通常より戦闘地域で使うような代物だった。

「そのようだね。少し端末を借りるよ」

アルディアスは言うと、宙に舞う端末のいくつかをエル・フィンの支配下のまま動かして周辺状況を脳裏に映し出した。
やはりというか不思議にというか、そこにないはずのものが見つかる。

「何があった?」

怪訝な表情になったのがわかったのか、デオンが聞いてくる。眉をしかめてエル・フィンが答えた。

「偽装されているけど、多分これは有機分解炉だ」
「はあ? なんでそんなものがあそこにある?」

周囲からは見えないが、確かにそれは有機分解炉のようだった。
通常地上に設置するものだが、大きな穴を掘り、その中に下げて設置されているらしい。上の排気口から入った端末では、やはりそれは中型の有機分解炉だった。

「何故こんなものがここに? 通常の施設であれば小型のモノがあれば十分にその機能は果たせるはずだ」
「もしかしたらあの事件と繋がりがあるかもしれないよ」

怪訝そうなエル・フィンに、アルディアスは言った。デオンとの通話の最中、見えたものが真実であるならば。
金髪の青年が顔をしかめる。デオンが口を開いた。

「なんだかよく分からんが、移送艇が戻ってきたら一気に一度攻めてみますか?」
「いや、一度このまま3人で行ってみたほうがよさそうだ。とりあえず警備には手を出さず、施設の確認だけにとどめること。撃ってきた時のみ応戦。着いてこれるね?」

アルディアスは二人がうなずくと見るや、即座にそのまま警備員の死角に二人を連れて瞬間移動した。施設のESP遮断区域をぎりぎり外れた場所だ。

エル・フィンは端末を通して、デオンは読み込んでいたらしい配置図の記憶をもとに、すぐに自分達のいる場所を理解したようだ。やはり二人とも只者ではない。

「分解炉は第3棟と第4棟の間だ。とりあえずそこですね? 向かう場所は」

デオンの声とともに、隙を狙って走り出す。次の建物の死角に入ったところで、朱色の瞳の男が小声で毒づいた。

「ふん、何がただの訓練所だ。あの建物もあっちも軍並みに設備だぞ」
(あまり声を出さないほうが良いようだよ)

一見体育館や何かに見えるものでも、近くに来れば一目瞭然に違うとわかる。見つけた監視装置にエル・フィンの端末を貼りつけて邪魔をしつつ、アルディアスは心話を送った。
ESP遮断区域内には結界が張り巡らされていて、三人でテレポートなどの大技は使えないが心話程度ならば気をつければ可能だ。

(通常内部にここまでの監視装置は不要なのでは?)
(通常は、ね)

心話で話しながら更に進んで、有機分解炉がある穴まで辿り着く。
ここは丸見えのためそれこそ短時間しか確認できないが、伏せた状態で中を覗くと、確かに有機分解炉だった。

しかし、その近くに積まれたものが異様だ。
かなり大雑把に砕かれ、端末を飛ばすまでもなく確認できる、異臭を放つそれは……人体だった。それも、子供の。

(作戦変更する。とりあえず戻ろう)

やはりあの時見えたものは。
アルディアスの中に嫌悪と怒りが生まれる。それは二人も同様のようだった。顔をしかめたエル・フィンが、ふいに心話を送ってきた。

(右斜め上45度と左170度から接近があります)
(とりあえずいったん人影のない、ESP遮断区域外に出よう)

三人は同時に走り出し、なんとか見つからずに物陰に身を寄せた。端末で情報を取得しながら、警備の合間を縫って同じ物置の陰に戻る。
と同時に、アルディアスは自分達を最初に降り立った場所に瞬間移動させた。

「作戦変更! 大至急俺たちを回収し、R789区域に移動」

デオンの連絡で移送艇が予定を早めて戻ってくる。
殺人事件も裏で繋がっていることが証明された今、潜入して情報の奪取などと生ぬるいことを言っている場合ではなかった。

一旦ミッション中止、再ミーティングとなって、全員がまた作戦室に集まった。

「エルンスト、お前一度あの訓練所に体験入所したよな? そのときのことを」

デオンの指名でエルンストが話す。

「そうですね、入った限り感じたのは自警団というよりは町の悪童やチンピラを集めている感じです。力がすべてという感じであまり感心する人間はいませんでした。それこそそういう人間の巣窟といった感じでしたね。勧誘の仕方も銃器とか体術とか力技を力説していたので、暴力を強さと勘違いしている奴らが喜びそうな感じでした」
「他に何か気付いたことは?」
「施設が半端でなく広く、あちこち一般人立ち入り禁止という感じでした……」

 そこでエルンストは、何かを思い出したというように一端言葉を切った。

「何か気にかかることなら些細なことでもいい、話しなさい」

アルディアスに言われ、考え込みながら言葉をつなげる。

「そういえば、その禁止区域の窓に似つかわしくない子供が居たような……」
「子供」
「はい、何故ここに居るのかと聞いたら、親から手がつけられないという理由で預かっていると。そう言う感じではなかったのですが……」
「何時の事になるのかな?」
「大体、今から2か月前かと」

その台詞をうけて、エル・フィンが端末に2~3か月前に行方不明になった子供たちのフォトをアップした。彼らがあの街に着任してからは少なく、それでも5名が居なくなっていた。うち2名はただの家出なのだが。

「この中にその子はいるか?」

端末をエルンストに向けてエル・フィンが問うと、青年はちょっとむっとした顔をしつつも、じっくりと画像を見た。

「いる、この子だ」
 
指名された子供をチェックするエル・フィンの眉根が寄る。目線で問いかけるアルディアスに、吐き出すように彼は言った。

「……一月半ほど前に『商品』になっている子です」

拠点に居なかったので、通常の誘拐か家出と油断した子だった。裏で流れた『商品』を抑えてから愕然としたのだ。

「何?」

エルンストの顔が険しくなる。
エル・フィンはそこで初めて、上司の了承のもとに極秘事項になっていた捜査案件の詳細を周知した。
子供、下は8歳から上は16歳までの子供たちの誘拐・殺人ムービー作成事件を。

ダンッ、と大きな音が作戦室に響いた。
怒りに震えたエルンストが机を叩いた音だ。

「もし、俺があそこでそれがわかっていたら、あの子を助けることが出来たんだな?」
「お前のせいではない」

間髪いれずにそう言うデオンの瞳にも、怒りが燃えている。

「けどっ!!」
「八つ当たりは辞めておけ」

エル・フィンが冷ややかに口をはさんだ。彼を睨むエルンストを、絶対零度の眼差しで射る。
 
「その怒りは奴らに向かって発散しろ。無駄に動いて怪我するな」

思い切り釘をさして黙らせた後、彼は上司に向かって言った。あそこを制圧するとなると、この人数では少し厳しい。

「うちの隊はアリシアとゼインがすぐに合流できますが、どうしますか?」
「いや、そちらを動かして逆に誘拐犯グループに警戒されても困る。このままで行こう」
「分かりました」
「ほう、『左遷』された割に部下が居るのか」

面白そうにデオンが言う。こちらに来る前話しておいたから事情は知っているはずだが、あえて言うのは部下の代わりだろう。
 
「任務だからな」

エル・フィンは一言返した。だがそれだけで、左遷に見せかけた秘密任務だったというのは、ここに集まる人間にはわかったはずだ。

デオン隊が入手した「訓練所」の図面を見ながら、改めて配置を組み直す。
武装しているこの移送艇、およびドラゴンたちは上からの陽動に使い、要所要所を押さえるようにする。
ドラゴンは普遍的にいるものではないが、エル・フィンのように守護竜を持つ人間もいるし、人型になれるドラゴンも多かった。

そして再ミッションは夜明けと同時に決まった。

「諸君、遠慮はいらない。速やかに要所を押さえて制圧してほしい」

作戦を練り直した最後、アルディアスは全員に言い渡した。
「訓練所」が想定よりも大きな事件に絡んでいたことがはっきりしたため、最初の軍議ではデオンに譲っていた指揮権は今彼のもとにある。

その声音は通常ではありえないほどに低く、そこにいた全員が、彼の背後に凍った炎が見えたと思った。
悪党に対する腹の中から湧き上がる怒り。

「Yes、Sir!」

全員がそれを共有して唱和した。
















<ただの物語 断片51 作戦2・作戦3> エル・フィンさん
http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-207.html
http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-208.html

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Re:【陽の雫 43】 偵察(04/25) 

あらゆる状況から判断すると、残念ながらこんなものにそれだけの需要があるということで、
しかもその顧客やスポンサーには中央の、それもかなり上層部の人間も
含まれているかもしれない、ということですね。

それでも今回アルディアスさんの下に集まった部下たちの中には
そんな人は一人もいない、ということだけが救いでした。
本当はアルディアスさんたちの方が人間として当たり前のはずなんですが。。。

  • posted by たまねぎ 
  • URL 
  • 2010.04/26 14:28分 
  • [編集]
  • [Res]

うう・・・ 

有機分解炉ってとこで“もしや~”って思ったのですが。
みなさんの炎のような氷のような怒りがヒシヒシと伝わってきます
続きのお話を待ちます。
  • posted by さゆのこ 
  • URL 
  • 2010.04/26 19:11分 
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  • [Res]

Re:【陽の雫 43】 偵察(04/25)  

殺人ムービーって何なんでしょう。
何で需要があるんだろう。
そゆのを必要とする魂もあるのかな・・・・
神官の時の彼はこんな怒りに対してもニュートラルでいるんですよね。
大変だ~。すごい人生だ・・・
頑張れアルアル!
  • posted by ゆえつん 
  • URL 
  • 2010.04/27 12:15分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【陽の雫 43】 偵察 

気持ちわるい…(ToT)ケモノだって無駄な殺生しないというのに、なしてそこまで堕ちるかなー。もう理性なんて残ってないんだろうけど、あとで誰より苦しむだろうに。直接任務に当たってる皆さん、ほんとに頑張って下さい。
一人一人が愛を増やして振りまいていくっきゃないな☆と思うです!
  • posted by あいちん 
  • URL 
  • 2010.04/29 08:20分 
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