のんびり、やさしく。

ヒーリングと物語とものつくり。

Entries

【銀月外伝】 Dark Age  ~妖精の囁き~

銀髪の男が学院長室で嫌々仕事に励んでいると、分厚い本を抱えて後輩がやってきた。

「ありがとうございました。読み終わりました」
「ああ、書棚に戻しておいてくれるかい。ついでに学院長職も代わってくれると嬉しいんだけど」
「……何言ってるんですか、まったく」

本を背後の書棚に戻した金髪碧眼の後輩は、あきれた顔でこちらを見た。かけていた眼鏡を外してポケットから出した布で拭いていたが、相手の肩口を見て驚いた表情になる。

「先輩……いや、学院長。なんですか、それ。妖精ですか?」
「エルス、これが見えるのかい?」

メイオンは仕事の手を止めた。

「妖精とはちょっと違うかな。物心ついたころからいるんだよ。でも私以外に見えたのは君が初めてだな」

長い銀髪をゆらして微笑む男の左の肩口に、ちいさな蛍のような光がふわりと止まっている。

「ずいぶんと希薄な……。自分もリミッターなしでないと駄目ですね」

眼鏡をかけ直した後輩が目をこらしたが、見えないようだ。

「そう、会話もほとんどできなくてね。ようやく私の名前を覚えてくれたかどうか、っていうところだよ」

それでも愛しげに指先に蛍をとまらせて笑う。
光を自分の肩口にそっと戻して、彼は仕事を再開した。



(メ……オン?)

かすかな囁きが、歌うように夜のしじまに流れる。
男は読んでいた魔法書から顔をあげて微笑んだ。

「そうだよ。メイオン、私の名前だ。覚えてくれた?」

(イオ……ン)

耳をそばだててやっと聞こえるほどの、小さな小さな声。
彼の名前に近い音をようやく発するようになったその声と、同じような問答を彼はもう何百回と繰り返していた。
それでも気にせぬふうで、彼は続ける。

「メイオン。メ・イ・オ・ン」
(メ…オ……ン)
「そう。リン、これは君の名前。リ・ン」

リル……ン、と妖精から鈴のような澄んだ音がする。

「うん、その音から私がつけたんだったね、リン」

雪の結晶のように小さな光を指先にとまらせ、だいぶ上手になったね、とメイオンは微笑んだ。

この不思議な妖精との関係は、何もわからない。
なぜ彼の元にいるのかも、どういう存在なのかも。

物心ついたときからずっと傍にいてくれるのだから、なにかしらの因縁があるのだろう。けれど前世の記憶を持つこの世界ですら、彼はその蛍のことを何も覚えてはいなかった。
それでもその小さな光は、いつも彼の心を癒してくれた。

ぽっかりと身の半分に空いた、理由の知れぬ巨大な虚無。
愛するものがいた記憶を抱きながら、それのいない世界で生きること。

両方を彼は知っていた。

身を灼くような虚無と絶望を超え、ようやく手に入れたと思った輝きは、今は世界樹で眠っている。
回復までどれほど時がかかるものだか見当もつかず、今の彼は世界樹に見せている夢のひとつだ。

あのひとはここにいない。
この身を暖めてくれるものはない。

いないことを知って選んだ転生ではあるけれど、それでもどうしようもなく孤独が押し寄せることがある。

昔と今と、二重に生まれた空虚の記憶。
気を抜くとその闇に飲み込まれそうになる。

だからわかるのだ。
誰彼となく声をかけずにいられない彼の寂しさも、自棄の上でかりそめの繋がりを続けてしまう彼らの孤独も。
そしてだからこそ、見守らずにはいられない。
少しでも幸せでいてくれるようにと、祈らずにはいられない。

リル……ンと心配げに鈴が鳴る。小さな蛍は指先から飛び立ち、身をすりよせるように彼の頭のまわりを回って、また肩先に舞い降りた。

「うん、ありがとう、リン。君がいてくれるんだね」

リル……ン。

涼やかなその音色は、遠い日に失われた何かのささやきのようで。

……おそらくは、小さな小さな魂のかけら。
大元はきっと眠るか、べつに転生しているのだろう。
その魂とのつながりは何も思い出せず、蛍も何も答えてはくれないけれど。

「……君のおかげで、私は自暴自棄にならずに目的を果たせるよ」

メイオンは呟いた。

彼らを見守ること。
魔法の研鑽を積むこと。

中間生にあってすら、蛍の存在はわからなかった。
けれど実際は、独りの時間をどれだけ助けられていることか。
涼やかな音色とかすかなペリドット色の明滅が、吹きすさぶ冬の嵐のような孤独をどれほど潤してくれたろう。

眠る人を待ち続ける彼を。

「君のことを何も思い出せなくてごめん……でもいつか、君の大元の魂にお礼を言うことができるかな」

すまなそうな声。
深い関わりがあるのだろうに、思い出せない申し訳なさともどかしさが募る。

けれど、リル……ンと鈴が鳴る。

大丈夫、できるよ、と言いたげに。













<Dark Age> たか1717さん
http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-173.html

<Dark Age ver.Luke> wakka○さん
http://witchouse.blog19.fc2.com/blog-entry-453.html

<Dark Age ver.Ray> よしひなさん
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1359927210&owner_id=21303894

<Clear Missing Mass > 妖精さんw
http://blog.goo.ne.jp/hadaly2501/e/29359bfea8a4a50209719be6ee85fdac



-------

◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆【外伝 目次】

今生になって、お礼を言うことができてよかったです♪


ご感想をくださる皆様、本当にありがとうございます!!
なかなかお返事できなくて申し訳ありませんが、いただくと小躍りして喜んで
次書こう~♪ってなりますので(←単純w
ぜひぜひがんがんコメントしてやってください♪


拍手がわりに→ブログランキング
webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→





emoji code="h144" />☆ゲリラ開催☆ 12/11~12/13 天使の森保育園♪お泊り保育♪
http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200912110000/

12/15 ご先祖様一斉ヒーリング
http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200912120000/


関連記事

Comment_form

Comment

Re:【銀月外伝】 Dark Age  ~妖精の囁き~ 

妖精さんは誰の魂のかけらだったんでしょう(*^O^*)
こんな魂の物語がみんなに、私にも、きっとあるんだろうなと思うと、少し寂しい夜も気持ちが暖かくなっちゃいます。
続き、楽しみにしていますo(^-^)o
  • posted by あいちん 
  • URL 
  • 2009.12/13 23:51分 
  • [編集]
  • [Res]

おへんじ 

>あいちんさん
妖精さんは、あの方です、ほらペリドットな瞳の(爆
どんだけお世話になっていることやら…^^;

そう、物語は皆さんにあるのだと思います♪
暖かくなってくださってありがとうございます~♪


  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2009.12/14 07:40分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【銀月外伝】 Dark Age  ~妖精の囁き~(12/13) 

妖精さん、あのお方だったんですね~。
私もどなたなのか気になってました。

すごく儚いような切ないような、それでいて優しさと暖かさが
いっぱい詰まっている物語ですね。
私も読んでいて暖かい気持ちになりました。

P.S.
ごみ箱の用途を教えていただいてありがとうございますwww

  • posted by たまねぎ 
  • URL 
  • 2009.12/14 08:03分 
  • [編集]
  • [Res]

おへんじ 

>たまねぎさん

そうなんです~。あの方です~~。
ゴミ箱どういたしましてwww
  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2009.12/20 12:31分 
  • [編集]
  • [Res]

ご案内

Moonlight

Counter

ブログ内検索

Calendar & Archives

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

MONTHLY

Profile

さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

エンジェルリンクファシリテーター、
レインボー・エナジー・フレイム(REF)
ルシフェルの翼Calling You 開発者。
プロフィール詳細

コメントレスはできたりできなかったりで、のんびりですみません^^;
お手紙はこちらのフォームから。
土日はPCに触れないことが多いので、メールのお返事は平日になります。

携帯(ガラケー)版スマホ版



Twitter
Instagram

New entry

Twitter



Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR