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【銀月物語 60】 羽ばたいて 3

ジョゼたちが辞去した後、部屋に帰った少女が退屈しているのを知って、トールは顔を出しにいった。とはいえ気晴らしの種はそろそろ尽きかけている。そこで、別の方面からやってみることにした。

「なにか知りたいことがあったら、今のうちに教えるけどどうだい?」

すると少女は緑の目をきらきらさせて、色々と質問してきた。
ステーションの授業を逃げ回っているからといって、けして頭が悪いわけではない。むしろ好奇心にあふれていて怜悧なのだが、授業に出ないのは本人のやる気の問題なのだろう。

ひととおり質問しつくすと、彼女は部屋からトールを追い出して自分なりのおもちゃを一生懸命作り始めた。

「えーっと・・・・・・結界食べるドラゴンに一部穴をあけさせてー、そこから相手に気付かれないようにもぐりこませてー、一瞬で目的のグリッドを貼る道具をつくるには・・・・・・。つくったら回収できなきゃだし・・・・・・」

などとぶつぶつ言っている。
独り言の破片をつなぎ合わせると、どうやら、「自分で自分の周りに強固な結界を張ったまま、本人が今生、もしくは現在そのことに無意識になっててすっかり上の存在とのコンタクトをなくしており、どうにもアクセスができない人の結界に、本人と本人のこれまた上とすでにコンタクトがない守護存在に気付かれないまま穴をこじあけて一瞬で通信用グリッドを本人のエネルギーフィールドの中にとりあえず構築する道具」
とかいうものを作っているらしい。

これはもしかしたら、また彼女の本体の娘に怒られる羽目になるのかもしれない。後始末は覚悟を決めておいたほうが良さそうだ、と彼女の呟きを背中で聞き、部屋を押し出されながらトールは思った。



それも一段落すると、今度はフレデリカが大きな袋を持ってやってきた。
羽を出したままにしている少女を見て笑み崩れる。カワイコちゃん、えらいわっ! と盛大にハグをして、それからルキアの風呂場に彼女を連れていった。

「ほぉ~ら、キレイにしましょうね。せっかく可愛い羽なんだから」

フレデリカは持参した特殊な洗剤で、少女の羽にべったりとついた年代ものの黒い汚れを落とし始めた。

「・・・・・・かわいい、かな・・・・・・」

べそをかきながら、ひとりごとのように少女は呟いた。もうそんなに怖くはなく、羽を触られてもじっと我慢はしていられる。
丁寧に何度も汚れを落としながら、フレデリカはにっこりと大きくうなずいた。

「可愛いわよぉ。すっごく可愛いわ。羽はきれいでカワイイものよ」

だいたいの汚れを落としてから改めてシャンプーしつつ、羽がどんなに素敵なものかとキラキラと楽しいイメージを混ぜて少女に聞かせる。

「羽はきれいでかわいい・・・羽はきれいでかわいい・・・」

少女はぶつぶつと唱えだした。フレデリカはそれに相槌をうちながら、慣れた手つきで栄養剤をすりこんでゆく。大きなドライヤーのようなもので丁寧に乾かすと、あれほど汚れていた羽はふわふわの真っ白になった。
ついでに髪も洗ってふわふわに整え、持ってきた羽を出して着られる白いワンピースを着せた。

「ほぉ~ら、こうやってちゃんとお手入れすればキレイでしょう?」

見違えるような格好になった少女を大きな鏡に映し、その横で微笑む。
鏡と自分の背中とを交互に見ながら、ぎこちなく少女はうなずいた。

白い羽に対する恐怖。直結する死のイメージ。
それがなぜなのか、なぜこんなにも怖いのか、彼女はまだ思い出していない。
ただフレデリカやマリアになだめられ、慰められて、すこしずつ羽があるという事実から認めはじめていた。


「さあ、最後は見た目もだいじ。フレデリカママ特製の魔法のお薬をかけてあげましょうね」

そういうとフレデリカは、キラキラするラメのような粉を少女にふりかけた。首をかしげ、ためつすがめつして愛娘を眺める。

「う~ん、キレイになったわ。さすがアタシのカワイコちゃんね。
さあ、アタシはもう帰るから見せてらっしゃい。それじゃあね」

誰に、とは言わずにフレデリカは笑って姿を消した。

ひとりになって、緑の少女は逡巡した。
フレデリカが言ったのはトールに違いないが、なんだかどうにも恥ずかしい。
鏡に映る白くて大きな羽を持つ人が自分だとは、なかなか思えなかった。しばらく手をあげてみたり羽をちょっと動かしてみたりして、それが自分であるということがようやく飲み込めると、彼女は意を決してトールの部屋に行った。
決してけなされることがないのはわかっていたけれど、やはり何と言われるかはどきどきする。

少女にはめずらしくノックをしてドアを開けると、トールは机で何か仕事をしているところだった。羽に関することは完全にフレデリカやマリアに任せることにしたらしい。

扉を振り返った彼は、軽く青灰色の瞳をみはって立ち上がった。

「その・・・・・・フレデリカに洗ってもらったんだけど」

恥ずかしさのあまり、下を向いてぼそぼそと話す。

「綺麗だよ。・・・・・・とても」

顔をあげると、優しい微笑みがそこにあった。ぱっと顔が赤くなるのがわかる。また視線を外して、柄にもなく少女はもじもじした。

「散歩にいこうか」

トールは彼女の返事を待たずに窓に向かい、バルコニーへむけて大きく開け放した。
その背に大きな白い翼が現れる。

彼は振り向くと少女にむけて手をさしのべた。
前回よりずっと楽な気持ちで、彼女は大きな手をとった。トールがバルコニーを蹴ると、二人はあっという間にルキアの上空に舞い上がる。

針葉樹の林の間に、大きな銀色の月がかかっていた。
たくさんの星々がまたたく中、二人の天使はそれぞれの羽を使って空中散歩を楽しんだ。さわやかな夜風が彼らの頬をなぶってゆく。

しかししばらく普通に飛んでいた少女は、やがていきなり急降下して地上ぎりぎりで旋回、などということをやりはじめた。

「危ないぞ」

「シュリカンに一体化して乗ってるんだからやり方は知ってるよ」

トールは慌てたが、少女はまったく平気らしい。
そういえばシュリカンは、こちらからあちらへ行くのにただまっすぐ穏やかに飛ぼうとせず、わざわざ急上昇したり急降下したりする飛び方が好きだった。

万一のことがないように魔法陣の準備をしておきながら、元気いっぱいになってきた少女を見てトールは微笑んだ。
明日の朝には退院だな、と思いながら。


















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◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第一部 目次

だいぶ元気になった緑ちゃん。羽も見られるようになり、いよいよ次回退院です♪



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おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。
どれも大切に嬉しく拝見しております♪
続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪


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Comment

もじもじ緑ちゃん! 

なんだかいいですね~(*'-')
トールさんと空中散歩。ほほえましいです☆
  • posted by しっとり:) 
  • URL 
  • 2009.07/02 23:35分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【銀月物語 60】 羽ばたいて 3(07/02) 

フレデリカママの、いつも包み込むような大きな愛に癒されます☆
見た目はかなりいかついみたいですがw、とっても素敵なお母さんですね♪
  • posted by たまねぎ 
  • URL 
  • 2009.07/04 11:59分 
  • [編集]
  • [Res]

59が60になっています 

目次から読んでいますが、60の記事のところに59がリンクされていて、60が抜けているようです。
お知らせまで。
  • posted by ライア 
  • URL 
  • 2009.08/30 16:51分 
  • [編集]
  • [Res]

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Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

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ルシフェルの翼Calling You 開発者。
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