のんびり、やさしく。

ヒーリングと物語とものつくり。

Entries

【銀月物語 55】 結界

先日、緑の少女に対するオペがステーションの高度医療フロアで行われた。
かつての手術で操作された、内分泌系の復旧が目的だ。
簡単にエーテル体のどこかをいじる、というようなものではなく、直接脳に触れるような大手術だった。

トールははるか昔のルシオラに対する施術以来、ずっと封印していた手術のメスをふたたび執る決心をしたのだった。
あのときの記憶、ツインのコードを切断した感触などは、今もくっきりと掌に残る。けれどもそれを越えるときが近づいていたのだ。

繊細かつ緻密な準備と手順をかさねて、慎重にオペは進行した。直前、普段どおり無意識に緑の少女に意識を繋ごうとした彼女の本体に、トールは言ったものだ。

「どうしても様子が知りたければ止めないよ。
でもあなたは本当の医療現場ってものを知らないだろう。
ある意味戦争よりも残酷でグロテスクな部分があって、しかも、それを受けているのは、今は別の体として外から見るにしたって、自分、だ。
私はあなたにどの瞬間も幸せでいてほしいんであって、苦しみの部分はできれば感知などさせたくない。
昔のオペのときそのまま体感してしまったことがいまだにトラウマを残しているのでもわかるように、今の彼女の体に意識を残してわざわざそれを体感する、なんてことはする必要もないし、してほしくない。わかったかい?」

本体は素直に言うことをきき、その後ずっと繋ぐときは黒い女性のほうにしてくれていた。上でも下でもギターばかり弾いている、と笑いながら。
少女が回復するまでは、リアルでのオーラも薄くなってしまうはずだ。なるべく早く回復させることができればいいが、とトールは思った。


オペ自体は成功だった。
本体も今生でエネルギーワークの経験を積みつつあるし、腕は鈍ってはいなかった。

しかし転生時のミスコピーが元で原組織との癒着がひどく、施術は20時間を越えた。
途中でラファエルが代わろうかと言ってくれたのだが、トールは「これだけは自分にやらせてくれ」といって断ったのだ。

当然術後トールは疲れはててしばらく動けないような状態だったが、それはまあいい。
問題は彼女のほうだった。

少女は元々エネルギーが完全ではない。
ステーションのどこか、つまり道などでいきなり寝ていることが多いとよく言われているが、それはそういうことに無頓着なだけではなくて、総エネルギー量が足りないために起こる「電池切れ」現象でもあった。

世界樹を出てからの転生回数は約十回。天使の子としてうけた魂のダメージから、まだ完全に回復していないのだ。
当初は手術後二、三日で回復する予定であったのに、延長されたオペの負担が想像以上に大きく、術後すぐルキアに移してもう四日めだがまだベッドから動けないでいる。

エネルギー値を測ると40%弱だった。そろそろ目は覚めて、動きたくはなるが力は足りない、というくらい。

さてどうしようか、とトールは思った。少女は実は結界についてはステーションで免許を持っているくらいで、普通ならば破れない結界はない、ともいえる。
ルキア内を歩き回るくらいなら別に構わないのだが、問題はポータルの使用だった。
短距離ならばともかく、中~長距離になると、最悪の場合作って入ったはいいが出口に至る前にエネルギーが枯渇してぱたっと寝てしまい、次元ポケットに落ちてしまう、という可能性がある。

ポータルというのは、慣れると呼吸のように自然に使用できる。
緑の少女レベルであれば、ふと気持ちが向いたときにはもうそこに出来ている状態であろう。「どうしてるかな」と思ったときには、入る入らないは別にして、もうそこにポータルができてしまう。
距離感などわからなくても直接相手方の空間に繋いでしまうのであろうし、無邪気で好奇心のかたまりの彼女に、それに入るなとか距離に応じて出入りを加減しろとかいうのは、かえって難しいと思われた。

次元ポケットに落ちるということも、普段ならばどうということはない。
きちんと意識があって落ち着いていればすぐに出られるし、よくあることだ。

しかし次元ポケットの中で意識を失い、長時間が経過すると、作ったポータル自体が消えて、繋がれていた「道」が閉じてしまうことがある。
そうなるとその時空間は周囲から隔絶され、トールでも探し出せるかどうかわからない。否、なんとしても探し出して助けはするが、今度は彼女や彼自身の存在そのものが危うくなるかもしれなかった。
あげられる命の種はもうないのだ。

一応、「ポータルは使わないでくれ」と直接伝えてはみた。
彼女はうんと答えてはくれたが、無意識のうちでもできてしまうものを、あえて使わずにいるのは難しいだろう。
なにより入り口の構築ができるなら、自分はもう回復しているのじゃないか、と思えるはずだ。問題は中を通るとき、それも途中で意識がなくなってしまったとき、なのだが。

気が進まないが、部屋に閉じ込めるしかないだろうか。
これほど療養が長引くならば、デセルに相談して新しい結界を考えておくのだったな。

トールがそう思っていると、ちょうど本体のところにメールが来た。
緑の少女が入院加療中のため、黒の女性モードになっている。話の流れで次の週末のクリロズコンサートのことになり、「緑に機材を触られたくないから、ルキアに閉じ込めておいてほしい」とあった。

それはまあ黒の女性にとっては半分(以上かもしれないが)本気であろうし、なにより「上」からのそういうメッセージでもあろうと思われた。


トールは嘆息した。

少女をルキアに閉じ込める。

できないわけではない。
今の時点で方法がないわけではない。

けれどもそれは、できれば最後まで使いたくないと思っていた手段だった。
少女の自由を制限するということのみならず、彼がもっとも愛する彼女の魂の輝きを鈍らせるような、それは手段であったから。
彼が知っているうちで、最大に精神力を使う手段でもある。

使い果たせというのだな、と彼は思った。
エネルギーのキャパシティをあげる、一番手っ取り早い方法は「限界を超えるまで負荷をかける」ことだ。
三次元の筋肉と同じ、一度断裂させると、そこを強化して回復する。
おそらくまずは次の手術にそなえて、トール自身も下の本体も、もっとキャパシティを上げなければならないのだ。

どうりでステーションでの施術後、エネルギーの回復を待つ暇もなく他のオペが次々に入ってきたりするわけだった。
ララーの本体、そしてデセル。
ララーの本体にいたっては三度にわたっての手術であったし、デセルに関しては、彼が過去世に受けた傷の修復をおこなった。二人ともこれから大きな変化があるのではないかと思われるが、それはまた語ることもあろう。

上のスパルタとはよく言うものだ。
すでにエネルギーが半分近くになっている状態で、トールは立ちあがり、森に出て歩き出した。
あとはルキアに一人、クリロズに一人。これ以降、人格として三次元に一人置いておく余裕はない。トールはデセルに心話をつなぎ、これから作る結界について説明しながら森を歩いた。

視線の先に穏やかな白い光にきらめいた建物と塔が見える。

それは光に満ちたルキア内でももっとも清浄な場所、神殿だった。




























----------

◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第一部 目次

なんかもう、めちゃくちゃな不定期連載になっててすみません^^;
アップするタイミングも、どーも上で決められてるんじゃないかと思う今日このごろ。
なるようになるさー精神でいきたいと思います。(まて

さていよいよ入院編。
じぇいど♪さんがどこかでおっしゃってた、緑ちゃんがトールに喧嘩をふっかける、のは次のお話ですwww
お楽しみに~ 笑


コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!
おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。
どれも大切に嬉しく拝見しております♪
続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪


拍手がわりに→ブログランキング



6/16 サンダルフォンヒーリング 



関連記事

Comment_form

Comment

入院していたんですよね・・・ 

いつも楽しく読ませていただいています(^^ゞ

クリロズでコンサートが行われたとき、
緑ちゃんは入院していたんですよね…
私が見た緑ちゃんとトールさんのツーショットは
何だったんだろう・・・
う~む、まあいいか!
  • posted by しっとり:) 
  • URL 
  • 2009.06/15 09:41分 
  • [編集]
  • [Res]

おへんじ~ 

>しっとり:)さん

ありがとうございます♪
思わず感想を拝見しに行ってしまいましたw
しっとり:)さん、退院祝いミニライブはご欠席だったのですよね。
二つを重ねてご覧になってたのかもしれませんねー。
緑ちゃんの様子とか、ミニライブの方とそっくりな感じなのでw

  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2009.06/15 16:02分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:おへんじ~(06/15) 

さつきのひかりさん
ご訪問ありがとうございました☆
そうなんです。退院祝いミニライブは、そのまま
accessを歌いそうな勢いだったので、欠席しました。苦笑
重ねて見ていたかもしれない!おお!なるほど・・・
  • posted by しっとり:) 
  • URL 
  • 2009.06/15 16:27分 
  • [編集]
  • [Res]

ご案内

Moonlight

Counter

ブログ内検索

Calendar & Archives

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

MONTHLY

Profile

さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

エンジェルリンクファシリテーター、
レインボー・エナジー・フレイム(REF)
ルシフェルの翼Calling You 開発者。
プロフィール詳細

コメントレスはできたりできなかったりで、のんびりですみません^^;
お手紙はこちらのフォームから。
土日はPCに触れないことが多いので、メールのお返事は平日になります。

携帯(ガラケー)版スマホ版



Twitter
Instagram

New entry

Twitter



Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR