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【銀月物語 32】 蛍 3

ルキアの医務室にデセルは寝かされていた。傷も着衣もきれいになっており、規則正しい寝息をたてている。
心臓のかけらはバンドで留めてあった箇所が四つ、留めていない箇所が二つ、すべてソフィアが見つけてきていたが、それはまだ戻されていない。トールの調整した機械がそのまま使われていた。

あの後ミカエルが言ったのだ。

「どんな小さなかけらでも、それはあなた自身なのだから、無くてもかまわないと言ってはいけないよ。いらない、という意識があるかぎり、かけらと体は融合しない」

「自分にもロストした部分があると気がついたとき、それを拾うのは次の人生でもいいと、先送りしようとしただろう。そこに反応して新しい生へ移行すべく、準備が始まるところだったのだよ。彼だけ置いて行くわけにはいかないのだから。もう少し言動と思考に注意しなさい」

結局心臓のかけらは、今戻しても融合はできなそうだった。
また失くしてしまうよりは、時が来るまで大切にしてくれる人に持っていてほしい・・・・・・そう、本体がソフィアに頼んだのだ。

彼女は快く了承し、彼が全快してからでいいのだけれど、と逆に頼みごとをした。
それはソフィア自身のかけらに関することだった。
デセルの心臓を捜しにいって、彼女は自分の腎臓のかけらをも同時に見つけたのだが、案の定自分では取り戻すことができなかったのだという。

ぜひ手伝わせてください、とデセルは言った。
だが目覚めたその日に勢いこんでゆくと、まだ傷が治りきってないのにと、マリアに追い返されてしまった。

ベッドに飽きていたデセルは、しかたがなく、その足で泉のほとりへ行ってひなたぼっこをすることにした。
思いつきのままにそこらの石を拾って、手の上にしばし転がし、水面に投げる。放物線を描いて飛ぶ小石の周囲に、運動と位置のエネルギーが鮮やかに視覚化されて現れた。
子供用の教材になるかもしれない。

「すごいね。教職を紹介しようか? 絶対採用されると思うけど」

様子を見に来たらしいトールが笑った。

「柄じゃありませんよ」
「君なら生徒にも人気出そうだけどねえ。じゃあ、気がむいたら僕の個人的助手っていうのはどうだい。報酬は君の欲しいものでいいよ」
「それならいいですよ。……報酬は、いつかそういうものができたら、それで」

デセルが答えると、銀髪の錬金術師は友の隣に腰を下ろしながら苦笑した。

「君は本当に欲がないな。もっと望んでいいんだよ?」

いやだって、となぜかデセルは戸惑った。

「俺ここに置いてもらってるヤドカリで。ベッドも飯も用意してもらって……そろそろ、家、建てないと」

何言ってるんだ、とトールの手が彼の肩を叩く。

「僕の仕事を手伝ってくれているんだから、お願いしてここにいてほしいくらいなんだよ。食卓に君がいるとマリアも喜ぶしね。君はものすごく美味しそうに食べてくれるからって。……だいたい君、一人暮らしなんかしたらまともに食べないだろ」

目をすがめる。デセルが反論できずにいると、錬金術師は調子を変えた。
立てた片膝に肘を乗せ、まぶしげに水面を見つめる。

「ソフィアも喜ぶんだ。表には出てこないけどね」

その名を聞いて押し黙り、すがるような目で見たデセルに視線を移して、トールは申し訳なさそうな顔をした。

「ごめん、困らせて」
「え、いやその……すいません」

トールはデセルにとって、尊敬する同性の友人であるが、同時にソフィアと同じ魂をもつ人でもある。
どういう態度をとればいいやらわからなくなって、デセルはうつむいた。
ぽかぽかとした陽光が金茶の髪にふりかかる。

「君が謝る必要はないよ」
「でも」
「ひとつだけ確かなことは、僕達のうち誰一人として、君の不幸は望まないってことさ。苦しめるだけなら忘れてくれればいい。それこそ勝手な願いごとで申し訳ないけど。君が幸せでいてくれるなら、それでいいんだ」

だいたいさ、僕悩んだんだけど。
また声の調子を変えて、トールは若草の上に寝転んだ。

「もしも君とソフィアが結婚でもしたら、君と僕はいったいどういう関係になるんだろうね? ソフィアは僕と同じ魂を持っているけど、全部イコールというわけではないし。義理の兄弟・・・・・・くらいが一番近いのかなあ」

青灰色の瞳が、いたずらっぽい光をたたえて友人を見上げている。
一瞬、それも悪くはないかもな、とデセルは思った。


「君がより自由に、より幸せを感じるほうを選んだらいい。我慢して一緒にいるよりは、君の幸せのほうが大事だよ」

そういって銀髪の友人は去って行った。

自分の幸せ。
それは何だろう、と思う。

いまのままではいけないのだろうか?


「ずっとお傍にいます」
「永遠にお護りします」

あのときそう言ったら彼女は泣いてしまった。
なぜかわからなかった。

ソフィアは君と家族になりたかったんだよ、と後でトールが教えてくれた。
でも家族って何だろう。
そんなもの、もうずっと持ったことがない。
いつだって独りだった。

彼女には銀巫女さまと同じように、捧げられる限りの敬愛を、尽くせる限りのすべてを。
それではいけないのか?
それ以上の? それとも、それ以外の?

求められているものも、彼女がくれようとした何かも、デセルにはわからなかった。


もしかして自分は朴念仁なのだろうか、と彼は考えた。












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◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第一部 目次


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まだまとめられないので先にこっちアップしちゃいます~^^;
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さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

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ルシフェルの翼Calling You 開発者。
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