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【銀月物語 6】 目覚め 2

目覚めると、朝日が木の間からさしこんでくるところだった。
ぼんやりとした頭のまま、もう一度分身に繋いでみる。

時間の流れなどあるようでないような世界だから、一晩あのままだったのかどうかわからないが、デセルの形をした氷の彫像は、やっと溶けはじめたようだ。

彼は、そろそろと銀巫女の身体に腕を回していた。
強く抱きしめたら壊れてしまうと思っているかのように、そっと。
そんなデセルの頬にも、光るものが流れていた。

しばらくして、お互い少し照れ笑いしながら離れると、デセルは彼女の前にひざまづいた。
ほんの少し芝居がかって、しかし真剣な瞳で彼女の手をとり、甲にくちづける。

「私の女神、わが主のお妃様。
私の第一の愛と忠誠は、まず貴女のおんもとに。
もしよろしければ……貴女の形見を何かひとつ、この私にいただけませんか?」

涙を拭いた銀巫女が、重ねていたうす絹の袖を一枚破って渡す。
彼は移り香の残るすみれ色のシフォンを押しいただいて、愛おしそうに唇に押し当てた。

「私はこれを身につけて戦い、どんなときでも、この形見にかけて自分自身の命を護ることを、それ以上に貴女の御身をお護りすることを誓います」

銀巫女は微笑む。

「わたくしの騎士、頼りにしておりますわ・・・・・・」



アーサー王時代の風習だな、と見ていたトールは思った。
昨日に勝るとも劣らず気恥ずかしい場面だが、二人の関係が新しくなるための儀式だったのだろう。
これからは、犠牲の影なしに愛を与え、受け取ることができるのかもしれない。


根底の部分で問題が解決に向かったことを知ったトールは、心軽く大きな伸びをした。
起き上がってみると、身体に暖かい布がかかっていたのに気づいた。薄く光を編んだごとく七色に輝き、朝の光の中で溶けるように消えてゆく。

「これは君達がかけてくれたのかい?」

トールはかたわらの大樹のうろに向かって呼びかけた。
すると、うろの中から双子の小さな妖精が羽をぱたつかせながら顔を出した。
「違うわ」
「違うわ」
「それは彼の想い」
「それは彼の想い」
「あなたを護ろうとする想いが、夜霧に形を与えたもの」
「あなたを護ろうとする想いが、夜霧に形を与えたもの」

澄んだ声が森に輪唱をひびかせる。

「想いはかならず届くわ」
「想いはかならず届くわ」
「気づくかどうかはわからないけれど」
「気づくかどうかはわからないけれど」

「誰かを護りたいという純粋な想いは」
「誰かを護りたいという純粋な想いは」

「私たち妖精の矢よりも早く、相手を包むわ」
「私たち妖精の矢よりも早く、相手を包むわ」

トールはしばし、消えた布の暖かな感触に思いをはせてから、妖精たちに笑顔をむけた。

「教えてくれてありがとう」

「どういたしまして」
「どういたしまして」

妖精たちは笑顔を残して、またうろに姿を消した。
トールは立ち上がった。森を少し歩くと泉がある。こんこんと湧き出る水は絶えることなく、はるか昔から流れていた。

冷たい水をたっぷり飲み、顔を洗う。
泉の底では、泉の精がすべてを見通したような笑顔をみせていた。

短い呪文を唱えると、手の上に剣と鞘、そして紐があらわれる。
トールは手櫛でいつものように髪を結び、清らかな泉の水で剣先の血を洗い流した。

朝の陽光が泉にふりそそぎ、湖面はきらきらと光っている。水を切るために振って鞘におさめた剣は、光をうけて流星のようなきらめきを残した。

デセルの儀式を思い出して、トールはちょっと微笑んだ。愛する人に直接忠誠を誓えるというのは、なんにせよ幸せなことであるに違いない。
自分も申し込んでみようかな?と一瞬思い、すぐに「嫌がるだろうなあ」と笑いながら声に出してつぶやいた。

彼の想い人は、そういうことをものすごく嫌がる人であったから。
儀式ばったことや上に立つことが嫌で、本人は隙あらば逃げようとしているのに、まわりがそうはさせておかない輝きを持った人。

彼女を困らせるのは本意ではないし、なにより彼女の回りには、守護をもって任じる存在がすでにたくさんいる。彼らと喧嘩をする必要もないことだった。
今までどおり、想いとできることの最上を捧げてゆけばいい。
誓いは自らの胸の中に。

トールはすっきりした顔で、朝の光の中歩き出した。

彼女は、自分の存在をわかってくれている。



それより他に、望むものなどない。











----------

◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第一部 目次



ねたが恥ずかしいのは私のせいじゃありません・・・きっと(爆
だってそれしか展開しないんだもん! うわーん!orz

次回、ついにあの人が登場ですw

引越し先でネット開通に数週間かかるとか言われてるので
今のうちに更新しておきます・・・。
ヒーリング記事こまるなあ><


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3月3日(火) ロシアンレムリアンヒーリング

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Comment

うふふ~ 

>自分も申し込んでみようかな?と一瞬思い、すぐに「嫌がるだろうなあ」と笑いながら声に出してつぶやいた。

一瞬、「きゃーきゃー誰だろう!!??」って思いました。トールさんの想い人!ww
  • posted by しっとり: 
  • URL 
  • 2009.03/03 17:39分 
  • [編集]
  • [Res]

涙なみだ・・・ 

>「想いはかならず届くわ」
>「気づくかどうかはわからないけれど」
>「誰かを護りたいという純粋な想いは」

あああ~、涙ナシには読めません。重なりすぎるっ!
(↑勝手なこと言ってすみません。汗)
私、三期生でいま上級篇におそるおそるチャレンジ中なのですが、
友人へ届かぬ想いを伝える術がなく、宇宙の片隅で叫んだら叶うのではと
勝手にそっと試みていまして・・きっと届くはずと信じて。
(騒音公害にならぬよう一言なんですが、だめでしょか・・;)

トールさんの想い人はどなたなのでしょう☆もう前述の方かな~?また読み直してみまっす^-^
  • posted by show* 
  • URL 
  • 2009.03/03 20:22分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【トール 6】 目覚め 2(03/03) 

なんだかとっても切ないですねぇ。。。
トールさんにも銀巫女さんにもデセルさんにも、
幸せになってもらいたいなぁ。
ハッピーエンドを希望します^^
  • posted by オリーブ 
  • URL 
  • 2009.03/03 20:48分 
  • [編集]
  • [Res]

おへんじ~ 

>しっとり:さん
あの方です~~~~
うふふw


>show*さん
重なってましたか^^
こうして書いてみると、どこかに重なる部分があったりして面白いですよね。
なにかのお役にたったなら幸いです。ありがとうございます♪


>オリーブさん
ハッピーエンド、ほんとですよね。
でもリアルタイム進行中のお話なので、私も結末がぜんぜんわからないのですよ~~~~
ハッピーエンド希望!!

  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2009.03/04 13:34分 
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  • [Res]

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