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【銀月外伝】 hummingbird - あなたのお部屋に歌う小鳥を

β-325。
ぼくが造られたのは、機械仕掛けの時計がお茶の時間を告げた木曜日でした。
材料が散らばった机にお気に入りの工具を置き、片目に填めた拡大鏡をはずして、その人は言いました。

「さあ、これでお前は歌えるはずだ。歌ってごらん、hummingbird」

長い器用な指がぼくの喉に細い釘で打ちつけられた金色の魔法陣を撫でると、ぼくは歌いはじめました。最初にプログラムされていたのは、その人の故郷の歌でした。
歌い終わるとその人は満足そうにうなずいて、温かい大きな手で頭を撫でてくれました。それから引き出しを指さし、あそこに曲を記録した円盤が入っているから、一日に3曲ずつ覚えるようにと言われました。

新しい歌を覚える日々は、楽しかったです。
ぼくは毎日、自分で引き出しから円盤を出して蓄音機にかけました。最初は聴いて、次に一緒に歌って、三回目にはちゃんと一人で歌うことができました。
上手に歌えると、その人は目を細めて頭を撫でてくれました。

だけど何十曲めかを覚えたとき、ぼくはその工房にいられなくなりました。
ぼくは子どもの姿でしたが、もっと大きくて、強くて、役に立つ人形をかかりきりで沢山造らなければならなくなったから、ぼくが居られる場所はなくなってしまったのです。
ふしぎな機械やしゃべる植物の鉢植えがあふれる工房は大好きでしたが、ぼくは町のお店に売られることになりました。

「hummingbird あなたのお部屋に歌う小鳥を」という看板を首にかけて、お店の入口横に立ち、お客さんを呼ぶために日がな一日歌います。
「歌を歌いましょうか、ご奉仕いたしますか」というのがぼくに許された台詞でしたが、ぼくは小さくて力もあまりないので、あんまりできることはありません。
だからお店に入ってゆくお客さんはみんな、ぼくより大きくて強そうな人形ばかりを眺めて買ってゆきました。
強い人形を車に乗せて去ってゆくとき、(これで……)と灰色の空を見上げる家族が何組もありました。

空はいつもどんよりと曇っていた気がします。毎日どこかで砲撃の音が響き、湿った風に火薬の匂いがすることも多く、人々は商店街でも首をすくめ、身体を丸めて慌ただしく動き、いっときでも早く家に帰りたいと思っているようでした。
ぼくの歌は子どもには人気でよく足を止めてくれましたが、その手はいつも、繋いでいる急いだ大人によって強く引っ張られてゆきました。

誰もが、急いでいるように見えました。
誰もが、空を怖がっているように見えました。

不安そうな眼をした人々は、武器を持った人形を身近に置くことで、少しでも身を護りたいと思ったのかもしれません。人形用のさまざまな武器が店の壁にかけられるようになり、「人形が人間を害することはありません」という大きな説明書きが何か所にも貼られました。
ぼくたちの心臓部にはそういう基本プログラムがされていたからです。人を護って身を挺して壊れることはできたけれど、相手を攻撃することはできないようになっていました。武器は主に、相手の武器を壊すとか瓦礫を壊すとか、そういう使われ方をしていたそうです。

周囲がきなくさくなってくると、歌うしか能のないちいさなぼくは、いつしか店頭からもひっこめられ、片隅でほこりをかぶって立っているだけになりました。
それでも暇なお金持ちに目を留められて、ぼくはそのお館へ買われることになりました。生まれたばかりのお坊ちゃまに歌を歌うこと、遊びの相手をすることがぼくの仕事でした。
お坊ちゃまはとても可愛らしかったですが、あっという間に人形よりもずっと早く走るようになり、ぼくでは相手が務められなくなって、また数年物置に忘れられた末に、大掃除のときに転売されることになりました。

それから何人かのご主人様に買われ、色々な仕事をしました。とはいってもぼくにできることは少なくて、成長しない華奢な身体は、強さや逞しさを求める世間の風潮には完全に合わなくなっていたのでしょう。

この世界の人形は、みんな石を核(コア)にしています。
ぼくは瞳と同じ色の紅い石が心臓の位置に填まっているのですが、そのうち、そのコアだけを集めてより大きなエネルギーを作ろうという動きが活発になっていきました。
廃棄された人形や、不要な人形からコアを抜いて、あるいはそのまま白熱の溶鉱炉に放り込んで、なにか大きなものの燃料にしようというのです。

その炉の力で何を支えているのか、ぼくは知りません。
ぼくを取り囲み、縛りあげて炉の縁まで運んでコアを外そうとした人間たちは、何も教えてはくれませんでした。

(歌ってごらん、hummingbird)

抵抗したわけではありませんが、造ってくれたあの人のやさしい声を忘れたくなくて、ぼくは歌い続けていました。歌っている間コアは強く明るく輝き、ぼくの身体から外すことはできませんでした。呼吸のいらない人形であるのをいいことに、猿轡を填められても、声にならない声を出し続けていました。
コアさえ外せれば、腐らない人形の身体は組み替えて再利用もできるのだそうです。だけどぼくは歌い続けていたから、人々は諦めて、舌打ちしてぼくをそのまま溶鉱炉に投げ込みました。

真っ白でまぶしくて熱くて、ずっと細かく振動しているような気がする場所です。
ぼくは目を閉じて、歌い続けました。

先に猿轡の布が焼けてしまったおかげで、少しだけ喉が自由になりました。
銀色の髪が焼け身体が先から溶けてしまっても、紅い石だけになっても、真白の溶鉱炉の中でぼくは歌っています。

人間は寿命が短いものだから、ぼくを造ってくれたあの人は、きっとずっと昔に死んでしまったでしょう。
あのふしぎな工房も、ぼくが店先に立っていた灰色の町も、もうとっくに無いのかもしれません。

人間たちがぼくらを燃料にして何を作りたいかなんて、わかりません。
ぼくを造って何をしたかったのかも、わかりません。
ただぼくはこの世界にいて、歌い続けました。



だって、どこにも還る場所のないぼくが持っているのは、覚えた歌だけですから

できるのは 歌うことだけですから


歌い続けている限り、ぼくはずっと、ぼくでした。



それが 「楽しい」 のかと聞かれれば
人形であるぼくに確かなことはわかりませんが、たぶん、楽しいという感情で合っていると思います。
ぼくがぼく以外の誰でもないと、たとえ量産型の人形であっても、「いま歌っているぼく」はここにしかいないと、自分自身に証明し続けること

それは、ぼくにとって 「楽しい」 ことだったのです。



……歌はいつか、届くでしょうか
hummingbird とぼくを呼んでくれたあの人に……



ただただ真っ白に燃える炉の中は 時の流れすらも無いようで
いつか届きそうな気がしてきます。




遠い遠い 時のむこうで
いつか ぼくの歌を 届けることができたら …











http://youtu.be/bhYAnAjtN8s
You Were There - Libera ~ あなたがいるから ~ 



※ハミングバード
ハチドリ。ネイティブ・アメリカンの間では部族を問わず愛と美と幸せのシンボルであると信じられ、大きな出来事や旅行の前にその姿を見ることは吉兆とされた。
平和のメッセンジャーであり、体と魂を癒し、人生の困難に際して導きを与えてくれるとも言われている。




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◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆【外伝 目次】


おはようございます。

今日明日と銀行の確認ができる時間前に家を出なければならず、帰りも遅いのでPCに触れないかもしれず、、、
神戸講習会のお振込みをくださった方、ご確認が遅くて金曜日になるかもしれません、すみません><
なるべく早くするようにいたします!

そしてお詫びの代わりに小話など投下いたしまして(爆)、行ってきますー


 ☆ゲリラ開催☆ 9/1~9/7 REF & water of love 一斉ヒーリング

いつも応援ぽち&シェアありがとうございます♪ とっても励みになります^^ →   
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Re: 【銀月外伝】 hummingbird - あなたのお部屋に歌う小鳥を 

更新ありがとうございます
やっぱ 泣きます・・・・;;

「想いだけは 残るのだ」って アメリカンパイだっけ?

さつきのさん、子育てして、役員こなして、ブログなさって、ヒーリングいっぱいして、講習会もきてくださって
・・・・今この瞬間も何かに愛を注いでいるのかな って
時々おもいます。
おんなじ地球の上にいるんだ^^
なんか とても うれしい^^

ご自愛くださいますよう 感謝をこめて
  • posted by うめたろう 
  • URL 
  • 2014.09/03 10:05分 
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  • [Res]

 

素敵です。

焼かれても歌い続けて、コアだけでも歌い続けて、人間よりも人間らしい。きっと最初にその子を造った方の暖かい思いがきちんとその子に伝わったのだと思います。

  • posted by ごちぃ 
  • URL 
  • 2014.09/03 11:36分 
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Re: 【銀月外伝】 hummingbird - あなたのお部屋に歌う小鳥を 

やさしいお話しをありがとうございました。
情景がありありと思い浮かべられました。
  • posted by みか 
  • URL 
  • 2014.09/03 18:41分 
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Re: 【銀月外伝】 hummingbird - あなたのお部屋に歌う小鳥を 

こんばんは。
いつも心に響くお話しをありがとうございます。

今回のお話しはなんとも表しがたい悲しい切ない気持ちが込み上げました。

やさしくありたい、
ただそれだけ感じました。

ありがとうございました。

岩手県盛岡市
高橋より
  • posted by unknown 
  • URL 
  • 2014.09/03 18:49分 
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Re: 【銀月外伝】 hummingbird - あなたのお部屋に歌う小鳥を 

なぜか 「神世水奇譚」の神様方が思われました。

愛だけが 残るんですね。

届くのでしょうか? 届きますように。
長い長い旅をするんだ。

日々の暮らしの中でも、愛を感じ取れる目と耳でありますように。受け取れる心でいられますように。

一日だってまだ響いているので・・・
もいっかい 失礼しましたm(_)m
  • posted by うめたろう 
  • URL 
  • 2014.09/04 09:08分 
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  • [Res]

Re: 【銀月外伝】 hummingbird - あなたのお部屋に歌う小鳥を 

切なくて、でも強くて暖かいストーリー。
紅い石、銀髪、細い体、美しい歌声・・・これって、、、あの方、と縁がある?w
意思を持ってしまったら、それはもう魂があるということなのでしょうかね。。。Hummingbird君に、もう一度、幸せな時が訪れますように・・・

まきどす
  • posted by unknown 
  • URL 
  • 2014.09/04 14:11分 
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  • [Res]

 

芸術は、いつでもすぐ日常で使える能力に比べられて、大体あまり良い評価って得られないんですよね。比べるものではないんですけどね……。
『そんな暇があるなら勉強しなさい』『もっとお金を稼げることをしたら?』
確かにお金を稼ぐことは素晴らしいし、知的好奇心を満たすのも必要なんですが、それだけだと人生に余裕というか、『ゆるみ』が無いと言いますか。
芸術に携わる人はそんな『ゆるみ』を作ってるのだと思います。風当たりが強くても、美しさや安らぎ、自分の求める表現を目指して毎日葛藤しながら過ごしている人たちを応援出来る人間になりたいな。美しいものを美しいと言える気持ちを持ち続けたいなと思いました。

ちょっと感想からずれてしまいました、すみませんf(^_^;


木箸
  • posted by 木箸 
  • URL 
  • 2014.09/07 08:28分 
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  • [Res]

>おへんじ 

>うめたろうさん
たくさんコメントありがとうございます!
この子は、なんだかとても純粋な子だったようなので
その想いが届くといいね、と思っております^^



>ごちぃ。さん
ありがとうございます。
そうですね… 貰った愛は、消えずに残るのかもしれないですね。
本人が気づいていなくても、ずっと。



>みかさん
ありがとうございます。
情景が浮かぶような文章を書きたいと思っているので、嬉しいです♪



>高橋さん
ありがとうございます。
なんだか最後が茫洋とした話なのですが、そういうのもいいかなあと思ってみました。
余韻がうまく伝わっていたら嬉しいです^^



>まきどすさん
ありがとうございます。鋭いw
そうです、あの人の系統だろうなーと思っております。
本人はいたってゴツイくせに、若いのはやたらと純粋なのが多いです 笑



>木箸さん
ありがとうございます。
そうですねえ… この子も、必要ないからと歌うことを止められていた時期がありました。
それでも彼は歌うことが好きで、最後の瞬間まで歌い続けて楽しかったらしいので
自分の楽しいことを見つけて、続けられたらいいですよね^^




  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2014.09/11 16:47分 
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