のんびり、やさしく。

ヒーリングと物語とものつくり。

Category [外伝 ] 記事一覧

【銀月外伝】 夏至の扉

ガキン、と鍔が鳴った。 よし、と小さく呟いてからの数合。互いに走り寄って激しく打ちあったが、鍔ぜり合いになれば筋力の強さでこちらが勝つ。本体にも昔していたような日常での基礎鍛錬を課して、毎日十キロ前後は歩かせているのだ。 しかし相手はほんの瞬間力を抜いたと思うと、猫のように細い身体をしならせて一気に間合いの向こうまで飛び退った。手元から流れ去る銀髪に、オーディンの唇が短い口笛を奏でる。相手にとって不...

【銀月外伝】 星明りの音色

新月の夜。 目覚めた私はそっと部屋を抜け出し、壁際に飾られた小さなハープを抱えて外に出た。長い銀髪と白くゆったりしたワンピースをひるがえし、風が運んでくるのは木々の匂い。裸足に草原が柔らかくきもちいい。 眼を上げれば、音がしそうなほどの満天の星空。 広く澄んだ湖に星影が映りこんで、上にも下にもきれいな天の川が見える。空気はキンと澄んでいるけれど、まだ寒いというほどではない。 湖畔をしばらく歩いてから、...

【銀月外伝】 Happy Valentine

「お誕生日おめでとう、ルナ。さ、どれでも食べてみて♪」 バレンタインの日、昼休みのステーション。 満面の笑顔でそう言うと、テーブルの向かいに座った少年が嬉しいような困ったような笑顔を浮かべた。 複雑な表情だけど、頬が赤いから嫌がってるわけではないと思う、たぶん。「ありがとうございます。マリエさん……」 テーブルの上には試作品のトリュフがたくさん。それだけじゃ可哀想だからカフェの紅茶と小さなプレゼントも並...

【銀月外伝】 hummingbird - あなたのお部屋に歌う小鳥を

β-325。ぼくが造られたのは、機械仕掛けの時計がお茶の時間を告げた木曜日でした。材料が散らばった机にお気に入りの工具を置き、片目に填めた拡大鏡をはずして、その人は言いました。「さあ、これでお前は歌えるはずだ。歌ってごらん、hummingbird」長い器用な指がぼくの喉に細い釘で打ちつけられた金色の魔法陣を撫でると、ぼくは歌いはじめました。最初にプログラムされていたのは、その人の故郷の歌でした。歌い終わるとその人...

【銀月外伝】 春ノ足音

春の足音を、聴いているのが好きだ。白い雪に埋もれていた透明な氷が、ぴん、とはりつめて割れてゆく。張りつめたならば割れるのだ。冬を閉ざした氷雪はやがて、春の陽のまえに溶けてゆく。陽だまりに芳しい花が咲き始める。春は花の季節だ。競い合うように甘い香りが満ちて、凍えた冬を忘れさせてゆく。翼をひろげ、氷雪を従えて翔けていた空。眼下にやわらかな緑が萌えはじめると、我は飛翔の速度をゆるめる。春というやさしき世...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - Party Party, Twin cats. -

アイレイの心は浮き立っていた。 なにしろ今日はとてもいい日だ。 オフと言ってもしがない戦闘員のことだ。普段はトレーニングと寝るくらいしかすることがないのだが、昨日のうちに琥珀の髪の司令官殿から声がかかり、まず双子の兄弟と一緒に豪華なランチをごちそうになった。 戦闘員の宿舎では想像もつかないような、華やかで繊細な見た目と味付け。食べ盛りの少年達にあわせたアラカルトで、にこにこしながら腹いっぱい食べて、...

【銀月外伝】 水面(みなも)のむこう

ピリピリ、イライラ、ソワソワ。のべつまくなしに落ち着かない自分自身に落ち着かなくて苛ついて、どうしてこうなんだろうと色々考えて。満月など自分じゃどうしようもない理由もいくつか見つかったけれど、もしかして陽の気がオーバーロードしているのかもしれない、と思いついた。活動的に動き回る陽の力は、過剰になると落ち着かないことになる。炎と水、陰と陽。身の裡に内在する、相反するもののバランスをとるのが私はまだ上...

★桜祭り★ 【銀月外伝】 play the clown, like a clown.

さくら、さくら。桜散り敷く月の森。 一重に八重にほんのりと緑がかったもの、さまざまな群落が艶を競う。中天には大きな満月がかかり、森はしずかに桜の唄をうたっている。 ひとりででも、多くとでも。誰もが望むように過ごせるというその森は、彗星の視点からはたくさんのレイヤが芍薬の花弁のように重なって見える。 時に無邪気な、時に悲しい、それぞれの忘れられない大切ななにか。ひとつひとつの花びらに、ひとりずつの想い...

★Fairy Festival★ 【銀月外伝】 ベツレヘムの星 3

翌朝まだ暗いころ、イアンナはそわそわと落ち着かなげに、見晴らしの良い道の真ん中に立っていた。腕には乳飲み子が眠っている。ゆっくりと身体をゆすってやりながら、彼女は目を凝らして東のほうを見つめていた。 砂の墓場からオアシスに向かうなら、そして彼の男の部族のもとへゆくのなら、きっと通るだろう東の街道。 寄る辺のない者たちが、たがいに身を寄せ合って生きるロマの部族。 ことにリア達のような定住型とは違って移...

★Fairy Festival★ 【銀月外伝】 ベツレヘムの星 2

日中の酷暑を、二人はセスの知る手頃な洞窟に避難して過ごした。 男の鞄からは皮袋に入れた水や携帯用の硬パンと塩、ほんのり甘い干し棗が出てきて、泣き続けで乾いたリアの喉と腹を癒してくれた。 ある程度腹が満たされると、疲れはてた少女はうつらうつらと舟を漕ぎだした。眠れるようにと師匠がくるんでくれた厚手の外套からは、香木のようないい匂いがする。時間はあるからゆっくりお休みと微笑んでくれる声も優しくて、リアは...

★Fairy Festival★ 【銀月外伝】 ベツレヘムの星 1

「う…うえぇっ…うわぁぁぁぁん!!!! おかーさーん! おとーさーん!! こわいよぉー!! こわいよぉーー!!!」 気温が上がり始めようとする夏の砂漠に、甲高い子供の泣き声が響いている。日除けと防塵を兼ねたケープのフードに手を添えて、セスは顔をあげた。 通称<砂の墓場>を見下ろす崖の上。眼下を覗けば熱い砂に洗われた白骨が、いくつも黄土色の海に埋もれている場所だ。声の主は7つ8つの女の子だろうか、砂丘に...

【銀月外伝】 中華幻想 - 落英繽紛

そは夢現にてありしや。 笛を奏してくれと言われ、いっしんに吹き鳴らしていたはずであった。 紅葉にはまだ少し早い初秋、しっとりと墨絵のごとく山々のにじんだ深い霧に高欄の朱が映える。 金銀の桂花(木犀)に埋もれるような街があると聞き知ってはいたものの、実際にその地を踏んだことはない。 なのに鳳仙人のしなやかな手の動きに乗るように小さな竜が舞い、薫る花片がはらはらと散る。 室内、だ。 ここは室内であったはずだ...

【銀月外伝】 中華幻想 - 仙楽風飄

次に老師の庵を訪れたとき、碧炎はいきなり子供に半泣きの顔で抱きつかれた。 「武人殿、うちの娘虎がごめんなさい! 普段は賢い子なんです」 少女とも少年ともつかぬその子は、まだ幼い細い身体にあっさりした白い服をまとっている。 子供から顔をあげると、庵の柱の向こうでかの仙人殿が面白そうにこちらを見ていた。 中央の床に敷かれた毛氈には老師が笑っている。その膝元には大あくびをする白い大虎。 腰に子供の手を巻きつ...

【銀月外伝】 中華幻想 - 紅鳳飛翔

噂は耳にしたことがあった。真紅の羽毛に純白の斑模様の翼の鳳(おおとり)。 天変地異の前兆であるとか、年経た紅天狗茸が化けたとか、さまざまな憶測が里では乱れ飛んでいた。しかし目の前に悠然と舞い降りたその鳳は、崖縁で大虎と対峙していた彼の目を奪って惹きつけるに足る美しさだった。鳳は優雅に長身の人へと姿を変えると、牙を剥いていた白虎になにごとか話した。小さく唸りながら、虎が首をめぐらせて帰ってゆく。ほっ...

【銀月外伝】 瑠璃色綺譚 3  ~ 奏歌蕩蕩 ~

婚姻から、年神が二十回ほども走り去ってゆきました冬の始め。 故国が当初の何倍にも大きくなり、領主様も代替わりして一通り落ち着いた頃、旦那様は人としてのお役目を終えられました。 出向先でそれは起こり、ご遺体は光になって消えてしまったということで、わたくしは目にしておりません。 竜飛も時を同じくしていなくなってしまったそうでございます。 わたくしどもの国では、人間を魂(精神)と魄(肉体)でできていると考え...

【銀月外伝】 瑠璃色綺譚 2  ~ 天弦琵琶 ~

わたくしには、天変地異や戦乱が及んだ際には、何を措いても抱えて逃げると決めていた宝物がありました。 紫檀の胴に繊細な螺鈿細工で鳳を彩った、一面の琵琶でございます。 鳳凰は鳳が雌、凰が雄であると申しまして、よく二羽を向い合せなどで描かれるものですが、その琵琶には尾羽を長く引いた一羽が大きく描かれ、弦をはさんでその斜め上に花の絵柄という、非対称の少し珍しい意匠でございました。 それは婚礼の祝いの品のひと...

【銀月外伝】 瑠璃色綺譚 1

それは、桃の花もそろそろ終わり、新緑がとってかわろうかという頃合いでございました。 父母に連れられていった大きなお屋敷の中庭には、しなやかな枝にたくさんの新芽をつけた立派な柳の木と、大きな茉莉花の茂みがありました。 両親が領主様と話している間、五つになったばかりのわたくしは、胸に布製のちいさな人形を抱いて、その中庭をうろうろしていたのです。赤く塗られた柱の渡り廊下がその周囲をめぐっており、そこから出...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - Party Party -

「来たか」 昼間がそろそろ終わろうとする時間。 グラディウスを私室に呼び出した琥珀色の髪の司令官は、到着報告をするとかけていた椅子から立ち上がった。 そのまま近づいて背を押される。その先には寝室のドア。 明かりをつけた部屋に押し込まれた背後から、「そこの服に着替えて来い」という声がかかる。 彼ひとりを残してあっさりと閉まったドアを見やり、広いベッドへ、そして脇のクロゼットの表側に吊るされた服へと視線を...

【銀月外伝】 La promessa del mare - lettera d’amore -

親愛なるシレーナへ。 この手紙は、君に届くかな…。 わからないけど、伝わることを祈って綴るよ。 肉体を失くした今、私の髪は何色なんだろう。銀色? それとも、彼の焦げ茶色? まあ、どちらでも変わらないけれど。 ようやく思い出したんだ。 あの時、焦げ茶の髪をしていたとき、私はいわゆる海賊に親しい友人がいて。 まともな商人なら報酬を払えば護衛もする、弱小商人の寄り合い船なら頼まれなくても護ってやる、でも悪徳で儲...

【銀月外伝】 La promessa del mare 3

胸元の小瓶から、海のちいさな囁きが聴こえる。 列車の窓からはもう、青く広い輝きが見えていた。 もう少し。 もう少し。 はやる心を抑え、何度目か荷物を確認する。 旅行用のマントがひとつ。鞄の中には私の本と、身近な細々としたものが少し、それから金髪にも黒髪にも似合いそうな、金色の縁取りのついた鮮やかな緑色のリボン。 自分なりの身仕舞いをととのえて、私はあの海に向かっていた。 陸に戻ってからずっと、繰り返して...

【銀月外伝】 La promessa del mare 2

一日二日で、足は立ち上がって水場に行ったり周囲に生えている食べられそうな草を採ってくるくらいはできるようになった。 しかし思ったよりも難儀したのが左手首で、甲をそらせると鋭い痛みが走る。力を入れてオールを漕ぐことはしばらく難しそうだった。 流された小舟もなかなか見つからず、月が二度満ちるほどの間、私はその岩場に暮らした。 何度も彼女が海藻や貝を届けてくれた。夜に見た時は黒かった長い髪は、昼は青い海に...

【銀月外伝】 La promessa del mare 1

ごほっ、と水を吐いた。 しばらく咳き込み、やっとのことで上半身を起こすと足に刺すような痛みが走った。生きている。思わず自分の手を見つめた。 白く浮かぶ月に寄せ返す波音。 「ここは…。君は……?」 岩礁に両手をついてこちらを見ている若い女性に問いかけた。 その下半身は岩に隠れて見えないが、波の下のはず。長く波打つ夜色の髪も濡れ、服は着ていないように見えた。 彼女が助けてくれたのだと聞いて、ほっと息をつき落ち...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - nightmare 3 -

※作中えぐい表現があります。苦手な方はお気を付け下さい。------ 夢に、うなされる。 遠く時を経て、過去の痛みを見つめながら。 足を引きずって歩いている。手をついた壁に、不規則に途切れた赤い波線がいくつも描かれてゆく。 死体置き場から出ようとして。 浅い呼吸。 酸素が足りず、長くゆっくり息を吸おうとすると冷や汗が額に吹き出す。 歩いても歩いても、灰色の廊下が終わらない。 辿り着いた部屋の医師が、肥った女幹部...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - nightmare 2 -

※作中えぐい表現があります。苦手な方はお気を付け下さい。------「よう。元気か?」 無遠慮に開けられたドアの脇。若い男の赤茶の髪をかすめ、飛ばした指弾が硬質な音を立てて跳ね返る。うっかり制服組に当てたら処罰ものだから、銀玉は威嚇であってはなから当てるつもりはない。 体内時計は、約20時間眠ったと告げている。 声の主は小さく口笛を吹いて、面白そうに緑色の目を細めた。 「弱っても戦闘員か。たいしたもんだ」 「...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - nightmare 1 -

※作中えぐい表現があります。苦手な方はお気を付け下さい。------<死神>と呼ばれたグラディウスが、まだ10代半ばの少年の頃の話。 背中の激痛で、一瞬目が霞んだ。 戦場でそれは命取りだ。右腰に重い一撃を受け、衝撃で前にのめる。どうにか踏みとどまると、振り返りざまに相手の脇をかいくぐって致命傷を与えた。 片手で傷をかばっていては戦えない。 患部の筋肉に力を入れて、血止めを意識する。手持ちの布を巻きつけて戦い...

【銀月外伝】  天翔ケル白銀ノ翼

星を、眺めているのが好きだ。 大きな翼を高い山の頂に休め、眼下の雲海と星の海がひとつに混ざってゆくさまを見ているのが。 音がしそうな満天の星が、中天をめぐり人界に流れこんでゆく。 生命のいない岩山の上で、ちいさないのちの息吹を雲の下遠く確かに感じながら、眠るのが好きだ。 ああ生まれくるのだ、と思う。 はかない泡のように結んでは消えてゆくいのちの輪廻。 我が翼は白銀の息吹。 遠く凍る天に羽ばたけば氷雪を喚...

【銀月外伝】 月の森のティールーム ~本番編~

そしてティールームの開始時間。 待機しているバトラーは、トールやアルディアスなど銀髪の人々に、シエル、ルカ、ユーリヒ、ラウシェン、オーディン、ニールス、リューリエル、レイヴン、デセル、リンクス。 リンクスは女性だが長い髪を背に三つ編みでまとめ、ベストを着て軽やかに歩いている。 裏方のリフィアが順番に銀髪の人を呼んでは、本人たちが適当にやったのでは足りないと、その長い髪を背できれいに「一本みずら」に結...

【銀月外伝】 月の森のティールーム ~準備編~

リチャードは片眼鏡の奥の瞳をやわらげ、にこにことして周囲を見回した。 夜にティールームが開催される月の森。今回は手伝いも多いこととて、わいわいした賑わしい人の流れも心を高揚させる。 かつて吸血鬼ヴェスパタインの元で半世紀の長きにわたって仕えた彼は、一流の執事たる矜持を持っている。 今回手伝いに来るシエルやレイヴンといった若者たちに、服の着こなしや立ち居振る舞いなどまで細かく教え込んでゆくのも楽しいこ...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - 嫦娥 -

サラは本能的に眼を閉じて身体をちぢめ、上がった息を止めた。  殺される。 しかし鋼鉄の暴風は彼女の脇を素通りし、背後で構えられていた剣の持ち主を両断した。 恐る恐る焦げ茶色の眼を開けたときには、相手はもうはるかに遠く背をむけている。 敵味方の区別なく重なる、魂の抜け殻たち。その切れた命の重なりとむせ返るほどの血の匂いの向こうに、長大な剣を振るう銀髪の長身が見える。 自分は敵として倒すべき脅威とは見なさ...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - 鴉 -

「手当て、してやるよ」 「断る」 不意にとられかけた手を、グラディウスは直前で振り払った。 司令部から離れた地方の前線。簡素なコンクリートで築かれた基地は、部屋も通路も中央のものより狭い。 黒髪の青年は、すぐに笑顔になって続けた。 「簡易キット、双子ちゃんにあげちゃったんだろう? 俺見てたんだよ。今日は負傷者が多いからね、医者はもうとびきりの変態しか残ってないぜ」 グラディウスがかすかに舌打ちする。 こ...

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さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

エンジェルリンクファシリテーター、
レインボー・エナジー・フレイム(REF)
ルシフェルの翼
Calling You 開発者。

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コメントレスはできたりできなかったりで、のんびりですみません^^;
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