のんびり、やさしく。

ヒーリングと物語とものつくり。

User Tag [連載 ]を含む記事一覧

【陽の雫116】 尋問

なぜだ。どうしてこうなった。 ハンス・テレマン准尉は粗末なパイプ椅子の上で膝を握りしめ、震える自分の手を信じられない思いで見つめていた。 冬の物資横流し事件後に公安から接触され、隊長じきじきの目通しがあった。そこで素質を見出され、フェロウ隊のクーデター証拠をつかんで提出すれば栄転確実だったのだ。 大切な軍需物資の横流し事件からもわかる通り、フェロウ隊は平素から軍より民間を重視しがちだ。まして隊長はど...

【陽の雫115】 Trumps 8

足音を荒げ、すでに人でいっぱいの書斎の戸口まで公安部隊がなだれ込んでくる。 優越感に満ちた顔でグエンが頷いた時、突如として部屋に女性の声が響き渡った。きれぎれの震えた声で少々聞き取りづらいが、その様子から録音を最大限のボリュームで再生しているようだ。 「……教えるわ。……私もあんなことされるのかと、怖くて……。喋る、…から守って。……だって、…あんな……」 続くすすり泣きに、一度は笑んだグエン・ミン大将の顔が真...

【陽の雫114】 Trumps 7

「……こちらへ」 赤っぽい焦げ茶の髪の青年は、周囲をうかがいながら背後の男をそっと部屋へ招き入れた。きっちりと軍帽をかぶった長身が、青年に続いてドアの隙間に消える。 ドアを閉め灯りをつけると、埃のにおいが鼻をつく。フェロウ隊の備品倉庫のように使われているその小部屋には、さまざまな書類や備品が半分雑然と保管されている。狭い通路のみ残して周囲三方は無機質な灰色の棚が天井まで据えつけられており、下にはダンボ...

【陽の雫 外伝】 Crocus vernus

お腹が痛いのかと思ったのだ。 道端に変な姿勢で蹲り、地面を見つめているようだったから。 大丈夫ですかと背後から声をかけて、近づいてそっと肩を叩こうとしてわかった。その人は、長い手足を窮屈そうに折りたたみ携帯機器のカメラを構えて、足元に咲きそめた紫色のちいさな花を撮ろうとしていた。 春の女神の爪先みたいなその花は、ぬるみはじめた土を割って地面すれすれに咲く。舗装された道路の脇は広い公園になっていて、春...

【陽の雫 外伝】 水晶の鈴

リン、リィン、リィィ…ン。水に波紋をひろげるように澄んだ音が響いて、ざわついていた艦内がすうっと静かになる。壁際に立ったイェルド・ソールベリ中佐は己の判断の正しかったことを確信しつつ、音の先に視線をあてた。小さなラッパを伏せたような形の鈴は、ひとりの青年の手によって静かに奏でられている。上着を脱いだ軍支給の白シャツに、ゆったりした白いマント……に見えるシーツ。流れ落ちる長い銀髪のためなのか、とてもあ...

【陽の雫109】 Trumps 2

「…ってわけで、南部のメソラ湖の近くの坊主らしいんだけど。おふくろがえらい心配してっから、俺も遊びに連れ出すくらいはしてやろうかと思ってさ。あー、名前何てったかな」 年末進行の書類を書きあげて上司に届けつつ、セラフィトは首をひねった。人の名前を覚えるのは昔から苦手だ。 アルディアスは銀髪をかきあげて旧友を見上げた。 「訓練所に入ったのはいつ?」 「おふくろが聞いた時点で二日後とかだって言ってたからな。...

【陽の雫107】 白のぬくもり 3

一行が中央大神殿についたのは、昼をすこし過ぎた頃だった。 ライキにとってここは、年に一度農閑期に地域の子供会でバスをしたててきて、冬祭りの飴を貰い、出店を楽しむためにやってくる場所だ。今年はさらに夏の大祭にも、アルディアスの幼馴染である大人たちと一緒に礼拝堂に入れてもらっていた。それなりに遠い場所であるから、まさかもう一度今度は訓練所の生徒となって門をくぐろうとは思ってもみない。 物珍しそうにしてい...

【陽の雫106】 白のぬくもり 2

ルカが呼び鈴を押すと、開けられた扉から楽しそうな家族の空気があふれ出てきた。金色の小さな明かりがいくつも灯された室内には、終わった食事のいい匂いと、家族のあたたかさが満ちている。 「はじめまして。中央大神殿の司祭をさせていただいております、ルカ・フィテオルと申します」 寒さが入り込まないようにドアを閉めてから一礼する。不安そうな顔で挨拶を返す両親の前に立って、その少年は白い神官服を見上げていた。 「...

【陽の雫105】 白のぬくもり 1

(すみません、ホットミルクをお願いできますか) 茶碗を豪快にひっくりかえして号泣している子供を抱き上げてゆすってやりながら、ルカは目と心話で巫女に話しかけた。心得た巫女が、微笑んで一礼しそっと部屋を後にする。 書類仕事をしていた椅子を回して腰かけ、しゃっくりが止まらないらしい小さい背中をさすってやった。ルカの神官服にぎゅっと掴ってぼろぼろと涙をこぼすから肩口はぐしゃぐしゃだが、全身で自分に頼りかかる...

【陽の雫104】 セピアの仕事部屋

ちいさな卓上のランプだけが灯り、その光もうずたかく積まれた資料や書類に阻まれてドアまで届かない、うす暗い部屋。 質素だが頑丈で大きい机に向かって、ルカは背を丸めるようにして仕事を続けていた。 大神官室の隣にある、通称仕事部屋。 使い込まれた机と椅子、それに壁を埋める書棚、ガラス戸のついた腰高のキャビネット。奥には大きな窓もあるが、今は厚手のカーテンで外界からさえぎられている。 華美な装飾はないが、神殿...

【銀月外伝】 春ノ足音

春の足音を、聴いているのが好きだ。白い雪に埋もれていた透明な氷が、ぴん、とはりつめて割れてゆく。張りつめたならば割れるのだ。冬を閉ざした氷雪はやがて、春の陽のまえに溶けてゆく。陽だまりに芳しい花が咲き始める。春は花の季節だ。競い合うように甘い香りが満ちて、凍えた冬を忘れさせてゆく。翼をひろげ、氷雪を従えて翔けていた空。眼下にやわらかな緑が萌えはじめると、我は飛翔の速度をゆるめる。春というやさしき世...

【陽の雫103】 Winter songs 2

ケントゥリア家への滞在は、アルディアスにとってすばらしく魅力的な日々だった。 大神殿のホームが殺風景だというわけではない。子供たちの絵がそこかしこに飾ってあったり、壊れたおもちゃが棚の上に「入院」していたり壁に落書きが残っていたり、ホームもできるかぎりの配慮と温かさがあふれている。 それでもやはり、子だくさんの普通の家庭における雑然としたぬくもりは、その空間が完全なプライベートであるぶん濃縮している...

【陽の雫 外伝】 旅の祈り

 今日の恵み、愛情のこもった幸福… ルカは静かに筆をすべらせ、神殿の紋章を入れたカードに次々と美麗な飾り文字を書きつけてゆく。 大神殿謹製の御守をつくる作業はとても地味なものだが、緑がかった髪の青年はこの静かな時間がわりと好きであった。 盆にのせてインクを乾かした指先ほどの小さな厚紙は、そのまま大神官執務室に届けられる。そこでこの星のすべての神殿を総べる大神官その人から、きちんとエネルギーを封入される...

【陽の雫102】 Winter songs 1

「セリー、北部司教との久々の対面はどうだった?」 隊員たちを打ち上げに送り出した夜更け。報告書のチェックをしていたアルディアスは、手伝ってくれた旧友の前に、濃いコーヒーの紙コップを置いた。 礼を言って一口すすったセラフィトが、思いきり顔をしかめる。 「どうもこうも。あのじいさん、歳喰っても変わんねえなあ。いつぞやの冬祭りの仕返ししてきやがった」 「それはそれは…」 「笑いごとじゃねえぞ。夜討ち朝駆けで事...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - Party Party, Twin cats. -

アイレイの心は浮き立っていた。 なにしろ今日はとてもいい日だ。 オフと言ってもしがない戦闘員のことだ。普段はトレーニングと寝るくらいしかすることがないのだが、昨日のうちに琥珀の髪の司令官殿から声がかかり、まず双子の兄弟と一緒に豪華なランチをごちそうになった。 戦闘員の宿舎では想像もつかないような、華やかで繊細な見た目と味付け。食べ盛りの少年達にあわせたアラカルトで、にこにこしながら腹いっぱい食べて、...

【陽の雫101】 祝杯

「よくやった、さあ好きなだけ喰え! おばちゃーん、とりあえず生ビール十一杯とピッチャーに水! 食券はこれから買うから!」 隊員たちがルビィを囲んで祝杯をあげたのは、おなじみ終夜営業の基地食堂である。 囮捜査のあれこれが終了し、すでにとっぷりと暮れた夜。 基地には、主に肉体労働者ご用達の食堂と、若い女性や内勤者がよく使うカフェテリアがある。それほど離れた場所にあるわけではないが、入ってみると中の雰囲気...

【陽の雫100】 囮捜査4

倉庫の出入り口付近には見張りが三、四人。それに少し離れた場所に二人ほど影が見える。誘拐実行係に、連絡係や子供輸送車の運転係を兼任というところだろうか。 実行犯とおぼしき若い男がつけ髭とサングラスをむしって海に投げ捨てようとして思いとどまり、ズボンのポケットにねじ込む。波間に浮いてしまった場合を警戒してのことだろう。 男は子供たちを放り込んだ後、運転手とともに出入り口の見張りに参加していたが、最初から...

【銀月外伝】 水面(みなも)のむこう

ピリピリ、イライラ、ソワソワ。のべつまくなしに落ち着かない自分自身に落ち着かなくて苛ついて、どうしてこうなんだろうと色々考えて。満月など自分じゃどうしようもない理由もいくつか見つかったけれど、もしかして陽の気がオーバーロードしているのかもしれない、と思いついた。活動的に動き回る陽の力は、過剰になると落ち着かないことになる。炎と水、陰と陽。身の裡に内在する、相反するもののバランスをとるのが私はまだ上...

【陽の雫 99】 囮捜査 3

シエルが誘拐されそうになり、背筋を凍らせたのは黒髪の男だけではない。 冬祭りゆえに神事にかかりきりのアルディアスに代わって、神殿側の責任者を務めるルカもだった。 警備員は皆目立たぬようにインカムを装備しているが、彼はその大きな心話到達域を生かし、テレパスを開放して両用で連絡を図っている。 警備本部の部屋に残って、広げた地図を前に、遠目に見れば頭痛持ちか居眠りかとも思えるような姿勢で座っていたり(しか...

【陽の雫 98】 囮捜査 2

ざわ。 ざわ… ざわ。 精神統一をする心の隅に、かさかさと耳触りな雑音が感じられる。 広い中央神殿の敷地内はもちろん、遠くあふれてあまねく流れゆこうとする神気。その導管たる銀髪の大神官はその流れに心をひらき、中庸の眼で物事を把握している。 奥院にて祈りのささげられている黄金色の飴。これの散供を今か今かと待っている子供たちの浮き立つ心は、花咲き若木の萌え立つようでとても気持ちがいい。 雑音は、彼らを狙う毒...

【陽の雫 97】 囮捜査

「では、まず紹介しようか。今回手伝ってもらう、ルヴ・イース・ドロテェア少尉」 「よろしくお願いしマス」 西域訛りを残してルビィが軽く頭をさげる。 実際に間近で会ってみると、彼は女性よりももしかしたら小柄かもしれないという体格の持ち主だった。 耳の横だけ伸ばした赤い髪を三つ編みにし、顔立ちも幼げに見えるのは、大きめな朱色の瞳がいたずらっぽく輝いているからかもしれない。 所属の空戦隊、赤い翼が存続の危機に...

【陽の雫 96】 山麓の翳り 3

拘留されている北部基地の一室で、セラフィト・ケントゥリアはのんびりと目を覚ました。 目の前には蜂蜜色の髪をした若者。すこし呆れた顔をしているのは、セラフィトに焦りの色がまったく見えないからだろう。 「よう、ニールス。おはよう」 にやりと笑って伸びをする。 どうせこのところ激務で睡眠時間が減っていたから、ちょうどいい機会とばかりに睡眠薬と知りながら出された飲み物を飲んで、気持ちよく爆睡していた彼であった...

【陽の雫 95】 山麓の翳り 2

「儂は、軍を信用しておらぬ」 神殿の重鎮、老体を理由に現大神官の結婚式の取り仕切りは断ったものの事実上のNo2たる北部司教の言葉に、すでに零下となっているであろう外気のように部屋の中が凍りつく。 背筋をのばして自分よりよほど大神官らしい威厳を備える老神官をまっすぐに見つめ、ひとり静かに答えたのはアルディアスだった。 「……よく存じております」 「神官と軍職の兼務に反対なのも変わらぬ。その儂に何ぞ御用かな」...

【銀月外伝】 中華幻想 - 紅鳳飛翔

噂は耳にしたことがあった。真紅の羽毛に純白の斑模様の翼の鳳(おおとり)。 天変地異の前兆であるとか、年経た紅天狗茸が化けたとか、さまざまな憶測が里では乱れ飛んでいた。しかし目の前に悠然と舞い降りたその鳳は、崖縁で大虎と対峙していた彼の目を奪って惹きつけるに足る美しさだった。鳳は優雅に長身の人へと姿を変えると、牙を剥いていた白虎になにごとか話した。小さく唸りながら、虎が首をめぐらせて帰ってゆく。ほっ...

【陽の雫 92】 水の星

ざざぁ、と視界がひらける。 緑濃き森をぬけて、果ても見えぬ大海原へ。 寄せては返す波の音はるか、空も海も蒼く染まって透明に輝き、たくさんの鳥が舞っている。 海鳥の声を聴きながら身をひるがえして水面に飛び込めば、冷たいしぶきが心地よく身体を包む。 ぶくぶくと立ちのぼる泡のむこうには、ゆらめき射しこんでくる陽の光。揺れてつくる網目模様を、あまたの魚たちが背に映しながらゆったりと泳ぐ。 どこまでも蒼い、碧い...

【陽の雫 91】 水と宿と緑

中央大神殿の大神官執務室の窓からは、中庭の緑がよく見える。 ななめに射す秋の木漏れ日が落ち着いた色のカーペットにちらちらと踊る中、アルディアスは大きめのプロジェクタに画像を出してじっと見つめていた。 一面の星の大海。 中央やや下、緑の丸印で囲まれている惑星が、彼の住むヴェールだ。 右上の黄色の丸印はサライ。 左上の水色の丸印はアキュームという。 現在、この三星の勢力で星間争いをしているところだった。 サ...

【銀月外伝】 瑠璃色綺譚 3  ~ 奏歌蕩蕩 ~

婚姻から、年神が二十回ほども走り去ってゆきました冬の始め。 故国が当初の何倍にも大きくなり、領主様も代替わりして一通り落ち着いた頃、旦那様は人としてのお役目を終えられました。 出向先でそれは起こり、ご遺体は光になって消えてしまったということで、わたくしは目にしておりません。 竜飛も時を同じくしていなくなってしまったそうでございます。 わたくしどもの国では、人間を魂(精神)と魄(肉体)でできていると考え...

【銀月外伝】 瑠璃色綺譚 1

それは、桃の花もそろそろ終わり、新緑がとってかわろうかという頃合いでございました。 父母に連れられていった大きなお屋敷の中庭には、しなやかな枝にたくさんの新芽をつけた立派な柳の木と、大きな茉莉花の茂みがありました。 両親が領主様と話している間、五つになったばかりのわたくしは、胸に布製のちいさな人形を抱いて、その中庭をうろうろしていたのです。赤く塗られた柱の渡り廊下がその周囲をめぐっており、そこから出...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - Party Party -

「来たか」 昼間がそろそろ終わろうとする時間。 グラディウスを私室に呼び出した琥珀色の髪の司令官は、到着報告をするとかけていた椅子から立ち上がった。 そのまま近づいて背を押される。その先には寝室のドア。 明かりをつけた部屋に押し込まれた背後から、「そこの服に着替えて来い」という声がかかる。 彼ひとりを残してあっさりと閉まったドアを見やり、広いベッドへ、そして脇のクロゼットの表側に吊るされた服へと視線を...

【陽の雫 90】 冬の手前に

シンプルなジャケットに長い銀髪の長身が、なにやら考えるふうにゆっくりと歩いている。 珍しいのはそれが基地や神殿内ではなく、ショッピングモールのそれも大型書店とは反対側の区画という点だ。 そもそもここに彼がいるという時点で、かなり稀な確率であると言わねばならない。 時移りから二週間。晩秋の陽差しはまだ暖かいものの、日ごとに朝晩は冷えるようになってきて、ショーウインドウは冬物一色だ。 眺めつつ歩いている彼...

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さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

エンジェルリンクファシリテーター、
レインボー・エナジー・フレイム(REF)
ルシフェルの翼
Calling You 開発者。

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