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【陽の雫 72】 推測

「ではレディ・リフィアが今日休日だったのは、偶然だったと?」
「はい。昨日同僚の代わりを頼まれて出勤して……だから、昨日決まったんですわ」

エル・フィンの声に、飲み物の缶を両手で持ったリフィアがうなずく。
胃が痛くなりそうだったが、ソファのすぐ隣に座るアルディアスの体温を感じてようやく少し落ち着いてきた。

「計画的な犯行じゃねえってことか?」
「でも、あの偽運転手によると、暗殺の準備自体は前からしていたようだけどね」
「マスターの暗殺、軍用車の爆破、レディ・リフィアの身柄の拘束と官舎の襲撃。三段構えのうち、タイミングを見て動かすのに手間がかかるのは、官舎の襲撃ですね」

エル・フィンが腕を組む。燃料電池の取替えは都度だし、整備担当は一応決まっているが誰でもできることだ。車に仕掛けをするのは簡単だった。
考え深げな顔で聞いていたアルディアスが口を開いた。

「私と彼女は心話ができるからね。それが彼らの懸念材料だったんだろう」

もし心話を考慮に入れなくていいなら、暗殺を唆した運転手を捨て駒にしてもろともに軍用車を爆破し、同時にいやむしろ先に、どのようにでも嘘をついてリフィアを拘束してしまえばよい。
軍の道具を使える環境にあるなら、携帯機器の電波を妨害することは難しくはない。

彼女の身柄さえ押さえてしまえば、暗殺あるいは爆破が成功してアルディアスが死んでいればよし、もし失敗しても無事であろうと怪我であろうと、好きに追い詰めることができる。

「だけど官舎に先に襲撃をかけて、落ちる前にレディ・リフィアがアルディアス様と心話をなさった場合、企みのすべてがばれてしまうってことですね」

ニールスの声にアルディアスはうなずいた。
ESP結界もあるにはあるが、アルディアスが強いサイキックであることは知られている。
銀髪の男の到達領域を知らない敵方は、心話がなされた場合の辻褄を合わせるために、どうしても軍用車の炎上を先にしなくてはならなかったのだ。

それが結果的にタイムラグを生み、こうしてリフィアを無事に救い出す隙につながった。

「准将、車が爆発したとき、炎が真上に噴き上がったのは……」
「爆発自体を押さえ込むことも、あの規模ならばできなくもないんだけどね。爆破成功を敵方にアピールしたほうが油断するだろう。といって、周りに被害を出したくはないしね」

穏やかに微笑んだ上司を見て、オーディンは舌を巻いた。

あの運転手が暗殺者でそちらの計画だけを練っていたというなら、爆破を察知して瞬間にブレーキを動かしギアチェンジをしたのも上司なのだろう。
同時にテレポートで彼らを逃がし、自分は爆発を制御するために戻った。
一瞬とも思える間の時間に、どれだけのことを考え、行動しているのだろう、この人は。

その考えが表情に出ていたのだろう。銀髪の上司はオーディンを見ると、困ったように肩をすくめた。

「そんなに理詰めに考えていたわけじゃないよ。咄嗟のことで、身体が勝手に動いただけさ」

アルディアスの戦歴は十五年。この場にいる男性では、年下のニールスやエル・フィンよりもかなり長く、三歳年上のオーディンとほぼ同じだ。一瞬の判断に、やはり歴戦の経験がものを言ったのかもしれない。
オーディンの脳裏に、まだ幼さの残る少年のアルディアスの記憶がちらとよぎった。あのとき二人は同じ二等兵だったのだ。

「しかし……アルディアス様を相手にするなら、暗殺も爆破も、容易に失敗する可能性が見て取れますよね。すでに今まで何度も失敗しているのですから」

心配げにリフィアを見やりつつ、ニールスが口を開いた。
結婚前に襲撃に遭ったときも警備にあたっていたから、彼女のことを案じているのだ。
ただでさえ軍人の夫が命を狙われて平気でいられる新妻はいまい。

「私もそれは考えました。マスターの強さは知られていますから」

空になった缶を手でもてあそびながらエル・フィンが続ける。

「計画性はありながらも緩やかなもので、最初から今日と決まっていたわけではないと思います。レディ・リフィアの急な休みに合わせて、突発的な召集がかかったということではないかと……。新婚の気の緩みを狙う意図もあったでしょうが」

「てことは、あまり成功するとは思っていなかったということかよ?」
「そうだね……成功率を考えると、実行部隊はともかく少なくともゴーサインを出した側は、挨拶程度の気持ちかもしれないねえ」

嬉しくない推測結果にアルディアスがため息をつく。

「挨拶かよ」

ふざけんな、とそのへんのものを蹴飛ばしたそうな表情でオーディンが呻いた。
今日は大祭からちょうど一ヶ月。ということは上司は新婚一ヶ月でもある。嫌がらせとしてはある意味上出来とも言えた。

「今後はどうします、マスター」

エル・フィンの声に、アルディアスは隣のリフィアを見やってから答えた。
妻から流れてきた、言葉になりきれない思惟のかけらを拾い出す。

「とりあえず、今回のことは爆発事故、重傷者なしで報告を上げる。爆発自体は音も炎も大きかったし、彼らも失敗したからといって隠蔽はできない。
狙われたことは明白だが、今後はおそらく少しおとなしくなるだろう。首都圏で騒ぎを起すようなテロリストに、ギルドは協力しないからね」
「あ……なるほど」

ニールスがうなずいた。この国の経済力の基盤であるギルドにそっぽを向かれては、いくら黒幕が軍の上層部にいようとも気軽に動くことはできない。
表でも裏でも、どんな作戦であっても軍資金は必要なのだから。

それから、と銀髪の男は続けた。

「今後は私の自宅にはホットラインを設置し、ここにいるニールス、オーディン、エル・フィン、それにセラフィト……私と親しくてリフィアが直接面識のある人間のみそれを使えるようにする。一般通信も遮断はしないが、大事な連絡は必ずホットラインを使用するように。いいかな?」
「アイ・サー。それがいいと思います」

三人とともに、リフィアも少し安心した顔でうなずく。そうすれば誤情報に惑わされる心配はほとんどなくなるからだ。

「リン、一般通信で今日のような情報が入ったときは、必ずホットラインの対象の誰かに問い合わせてね。もちろん、その前に私に心話で確認してくれてもいいけれど。この惑星上ならば、たぶんどこでも通じると思うよ。宇宙は……場所によるかな」

アルディアスの言葉に、思わずエル・フィンがため息をつく。

「惑星上って……どれだけの到達域なんですか、相変わらず」
「うん? 相手がリフィアだからだよ。普通だとそうだな……たとえばエル・フィン、君となら頑張ってあの地方の赴任地あたり、かな」
「充分ですっ!」

のろけているのだか天然なのだか、自覚のない上司に思わず怒鳴ってしまったが、銀髪の男は怒るでもなく笑って続けた。

「君だって、シェーンを介せばティーラとはどこでも惑星上どこでも話せるだろう。私にも守護竜はいるんだよ。それにグリッドラインと繋がっているから、助けがなくても話せるんだ」
「へえ……えっ? マスターに守護竜が?」

初耳だ、という顔で男達が顔を見合わせる。

「シェーンのように三次元的な姿はとっていないけれどね」

面白そうにアルディアスは笑った。























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と、いうわけでお約束の続きです。
70話からの引きほどではないとはいえ、あっという間に日が経ってしまってすみません 汗


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Re:【陽の雫 72】 推測(02/22) 

ふう~よかった、一安心しました。
けど、今回のが挨拶って…やだな。
またまた続きが気になります。
  • posted by ぐりおぐら 
  • URL 
  • 2011.02/22 15:13分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【陽の雫 72】 推測(02/22) 

アルディアスさんのしゅごりゅうぅぅ~、
次回楽しみです。
  • posted by あもー 
  • URL 
  • 2011.02/22 22:08分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【陽の雫 72】 推測 

アップありがとうございます!
リフィアさんの心中を思うと。。。早く安心できるように、黒幕ともども一網打尽にしてもらいたいです。
いつもながら、アルディアスさんってすごい!!!

  • posted by あんず 
  • URL 
  • 2011.02/22 22:10分 
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Re:【陽の雫 72】 推測(02/22) 

あぁ。緊張感のある中で、新婚のふわふわ感がところどころ出ていて、アルディアス、にくいですね☆いえ、嬉しいのですけど。笑
  • posted by おいも 
  • URL 
  • 2011.02/23 03:11分 
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  • [Res]

Re:【陽の雫 72】 推測(02/22) 

…むぅ。
黒幕のヤツラめ…
挨拶程度でなんて卑劣なことをっ!!
あわよくば、くらいの感覚だったのでしょうかね。
許せん!!
でも、本当にリフィアさんがご無事でよかったです♪
でも、素敵ですね~。
惑星のどこにいても心話が可能、だなんて。
まーさーに『心で繋がっている』お二人だわ♪
むふふ。
アルディアスさんの守護竜…
もしかして…???
  • posted by 月の娘 
  • URL 
  • 2011.02/28 23:43分 
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  • [Res]

おへんじ 

続き、気になってるところで伸ばしちゃってすいません (爆
守護竜は・・・・・・・じつはまだ書けてないのですな~
外伝書いてる間にわかる繋がりとかもあって、ほんとにもうwww
どこぞのプロデューサー様の掌の上で踊っておりますよ。

世界は根底で繋がっているので、外伝ともども楽しんでいただけたら嬉しいです♪

  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2011.03/04 14:47分 
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