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【陽の雫 57】 祝福

エル・フィン達の歌が終わった後、一般の参列者のいる大礼拝堂では担当の神官達が取りしきって祈りが行われた。

静かな音楽にあわせ、神官が祈りの言葉を歌うように語ってゆく。
広い礼拝堂を埋めた参列者は、頭を垂れたり目を閉じたり、思い思いに自分達も祈りを捧げた。

はじまりの歌がもたらした金色の光は満ちたまま、さらに虹色の輝きが奥院の方角からもたらされているように思える。
煌きは波のように礼拝堂の人々を洗い、そして外へとあふれ流れ出してゆく。

その強さは、サイキックのない者にも目にうねる輝きが見えるほどだ。
夕映えの海の中にいるようだとオーディンは思い、隣の老婆は胸の前に手を組み合わせ、うっとりした顔で高い天井を見上げていた。

「先代の大神官様の陰陽の儀を思い出すね。あの時もそりゃあ綺麗だった……だけど、今回のほうが光が強いような気もするよ。ああ、祝福をいただくのが楽しみだ」
「祝福?」
「そうだよ。この後、神事を終えた大神官様がこの礼拝堂にいらして、一人ずつに祝福をくださるんだ。大きな祝福はこの星の皆にくださるけれど、一人ずついただけるのはここだけさ」

得意そうに老婆は囁いた。
そうか、だからこんなにも人が詰め掛けているのだと、今さらながらオーディンは気づく。

美しい夢に泳いだような祈りの時間が終わると、人々がざわめいた。
当然この後の流れを知っているのだろう。

彼らの視線の先で、神官たちが厳粛な祈りの言葉を唱えながら道を作る。
祭壇の斜め後ろにある扉が開かれ、石造りの大礼拝堂にさっと光がさしこんだ。そこに長身の影がある。

神官の何人かが、列に座っている参列者達の誘導を始める。左右の長細い椅子にかけている参列者たちを順番に立たせ、中央の通路に並ばせていった。

最後尾に近い席にいるオーディンは座ったまま、何が起こっているのか見ようと首を伸ばした。
一段高くなっている壇の上で、銀色の綺麗な人が軽く錫を鳴らしながら、人々の頭に手をあてて何か呟いているようだ。

(准将どの……か?)

話の流れからいってもそうなのだろうと思うのだが、なんとなく実感がわかない。
半信半疑で見つめている間に、ゆっくりと列は進み、ついに老婆とオーディンも立ち上がって通路に並ぶ番になった。
祝福を受けた人は、満足そうな顔で左の壁際を通って外へむかって歩いている。

オーディンは老婆の足を気にしながら通路に並んだ。列が進むにつれ、すずやかな錫杖の音がはっきりと聞こえてくる。
同時に、一人ずつ礼を言ったり、「祝福を」と答える声も聞こえた。

礼拝堂の参列者には妊婦や赤子連れ、病気などの者もいて、そういった人々には少し長く祝福の時間がとられるようだ。

「大神官様、ご結婚おめでとうございます。……その、妻が来月予定日なんです。子供にも祝福をいただけますか」
「ありがとう。……元気に生まれるよう、そして家族が愛と安らぎに包まれるように」

大きな腹に手を当てて光を流せば、その姉になるらしい幼子が父の腕の中から教えられた台詞を舌足らずに言う。

「しんかんさま、おめでとうございます」
「ありがとう、よい子だね。君の前途に素晴らしい贈り物が満ちているように」

そうして一人ひとりに祝福を授け、列はゆっくりと動いてゆく。誰一人おざなりにされることはない。

だんだんと近づいてくる錫を持つ長身に、オーディンの目は惹きつけられた。

(け、化粧してる……のか?)

赤い紅を刷いた目元と唇。額に描かれた神紋。目元には薄いグレーも入っているように見える。
軍人でいるときのアルディアスしか目にしたことのない彼は、いつもと違うその神秘的な外見に目を瞠った。
よく考えれば宗教的な行事で祭主が化粧するのは不思議ではない気もするが、似合いすぎてどう反応していいかわからない。

困っているうちに列は少しずつ進んで、ついに老婆とオーディンの番になった。

「大神官さま、このたびはご結婚おめでとうございます。これで冥土の土産ができました」

かねて準備していたらしい台詞を言って、老婆がにかっと笑った。微笑みかえしたアルディアスが、すいと腰をかがめて老いた足に手をあてる。

「足を痛めてしまったのだね。早く治るように……」
「そんな大神官様もったいない。あたしは大丈夫ですから」
「そして、貴女が次の旅に出るまで自由に動くように。お祝いをありがとう」

ヒーリングを終えて立ち上がった長身に、老婆は何度も拝むようにして進んだ。歩き方はすっかり溌剌として、足を痛めていたとは思えない。

次に祭主を間近にしたオーディンは、何も言えずに立ち尽くしてしまった。
どきまぎした彼の様子に、くすりとかすかにアルディアスが笑う。

(そこで笑わないでくれ!)

思わず心に叫ぶ。
グレーと紅に彩られたいつもよりも陰影の深い夜空の瞳に、気を抜くと吸い込まれてしまいそうだった。

とにかく尋常じゃない、人であって人ではない。
のまれる、圧倒される。

「……取って喰ったりはしないよ、大丈夫。君にも祝福を、オーリイ」

半神半人の長身は、しゃらりと錫を鳴らして片手をかざした。呼ばれた愛称がいつも通りであったことに、ついほっとしてしまう。
額にかざされた手からは、柔らかな光が降りそそいでくるかのようだった。

なんとなくぎくしゃくとオーディンが歩いてゆくのを見やり、アルディアスはふっと目尻を和らげた。
そんなに別人に見えるものか、自分にはそれほどの自覚はないのだけれど。

参列者のすべてに祝福を授け終えると、次はここで頑張ってくれていた神官達の番だ。
大勢の人が出てがらんとした礼拝堂には依然として光が満ちている。
人々は今度は、大階段から手を振る大神官とその伴侶をひとめ見るために、階段前の広場に押しかけていることだろう。


神官達に送られて礼拝堂を出たアルディアスは、ゆったりとした歩調でリフィアの休む控えの間へと向かった。
にわか仕込みの訓練をこなしただけの彼女には、神を降ろすのは大変だっただろう。神経は冴えてしまっているだろうが、少しは休めただろうか?

入り口の前に立っていた衛士が一礼して扉を開ける。
リフィアはすでに起きて、着替えをすませていた。朝一番に身に着けたような、白い衣装と大きめの頭飾り、それに紗のベールだ。

「リフィアン、大丈夫かい? 大階段へ出られる?」
「ええ、大丈夫……だと思うわ」

なんとなくぼんやりするのは続いていて、いまいち自信がない。アルディアスは微笑むと手をさしのべた。

(疲れたら私にもたれておいで、支えるから。今日の仕事はこれで最後だからね)

銀髪の長身に連れられて控えの間から外回廊を抜け、大階段の上の門へゆく。衛士の守る大扉の前に並んで立つと濃い影が落ちた。
傾いてきたとはいえ夏の太陽は、まだ強い光を投げかけてくる。

両脇の衛士によって扉が大きく開かれると、歓声が巻き起こった。
バルコニー状になっている手すりのところまで進む。

同時に大階段上部を巡る外回廊の全ての扉が開け放たれ、西の陽射しが午後の太陽から渡された橋のように人々の上を越えていった。

(リン、手を振って。笑顔は無理しなくていいから)
(すごい人なのね……)

眼下の人の波を見ているだけでもくらくらしそうだ。
人々は手に手に小さな光る物を振っている。大神官の錫を簡略化したクリスタルのワンドで、お守りになるというものだった。
はっきりとは聞こえないが、口々に上がる歓声は、結婚を祝ってくれているもののようだ。

気づけば彼らは、陽の光を背負って人々に手を振っているという演出になっていた。
朝早くから儀式をこなしていたが、いつのまにこんなに時間が経ったのだろう。

遠くまで集まった人々の手にあるクリスタルが小さな波頭のように光って、本当に夕映えの海が押し寄せているようだった。

「祝福を」

アルディアスはリフィアの手をとり、空いた片手でひときわ高く錫の音を響かせる。
錫の先端のクリスタルが陽を受けて輝き、その煌きがまた返す波のように波紋のように円を描いて広がっていった。
広場にはきらきらした霧雨が降り、それがクリスタルのワンドに染み入ってはまた放射されて、幾重にも光が響いてゆくようだ。

同時に下の階の門が開かれ、準備されていた馬車が何台もパレードを始める。
奏者や舞手たちを載せたその馬車は、大神殿から参道をずっと下って、海までその祝福を届けるのだ。

馬車には次席の神官が同乗し、海で祭祀を行って海水を一瓶持ち帰ってくる。
守護者を得た惑星から、恩恵としてもたらされる母なる命の水。

それを大神殿に迎えることによって、大祭は終了となるのだった。
















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重陽の節句に祝福を




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Re:【陽の雫 57】 祝福(09/09) 

少し前からヒーリング受け取らせて頂いています。
陽の雫も引き込まれる様に一気に読ませていただきました。
これから他の物語も遡って読ませていただきますね。
素敵なお話をありがとうございます。
更新されるのをこれからも楽しみに待っています。

Ri-fa(名前の読み方が一緒で恐縮です)
  • posted by Ri-fa 
  • URL 
  • 2010.09/09 11:34分 
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Re:【陽の雫 57】 祝福 

うっとり♪
大がかりなとても大変なお仕事だけど、それだけのことはありますね~♪
改めておめでとうございます♪そしてお疲れ様でした!
重陽の節句、今日も大切な日ですね~
厄払いで~何をするのかな?やっぱりお酒ですかね~♪
  • posted by 撫~風~羽~♪ 
  • URL 
  • 2010.09/09 12:31分 
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Re:【陽の雫 57】 祝福 

祝福を♪
なんか凄く世界に飲み込まれてました
キラキラ眩しいです☆
  • posted by アキレス 
  • URL 
  • 2010.09/09 13:43分 
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Re:【陽の雫 57】 祝福 

こんばんは
更新されるのを、今か今かと待ちわびております。
この話が掲載されるのに連動してか、私の周りにもよい話がちらちらと…
引き寄せ?と思ってしまいますo(^-^)oとはいえ、私自身は全く気配なし(笑)
それでも、幸せな話を見聞きするのは嬉しいですね。
光が、在るもの全てに充分に届きますように
ありがとうございます
  • posted by mama 
  • URL 
  • 2010.09/09 22:50分 
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Re:【陽の雫 57】 祝福(09/09) 

いつも、さつきのひかりさんの物語、楽しみに読ませていただいています。
さつきのひかりさんの書く人物像が暖かくて、とても素敵。

今は色々あって休筆中ですが、私も趣味が小説書き。
さつきのひかりさんの物語から、いろんなパワーもらっています。
感謝。

続き、楽しみにお待ちしています。
  • posted by ton-tan 
  • URL 
  • 2010.09/10 10:11分 
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Re:【陽の雫 57】 祝福(09/09) 

素敵です(*^_^*)
アルディアスさん、リフィアさん、ご結婚おめでとうございます。
あはっ^_^やっと言えました。
拝読させて頂き、心がとても温かくなりました。一人ひとりに祝福が授けられ、誰一人おざなりにされることはない・・・(感涙)
リフィアさんとすべてを包み込みこんでくれるアルディアスさん・・・。幸せを感じます。
こんな気持ちはみんなにおすそわけしたくなりますよね~(*^_^*)
守護者を得た“惑星”から恩恵としてもたらされる母なる命の水。ですね。
ひゃ~。なるほど。ありがとうございます。
つづきを楽しみにしております~。
とはいえ、季節の変わり目でもありますし、さつきのひかりさんもお体ご自愛くださいね。

  • posted by しま 
  • URL 
  • 2010.09/10 12:40分 
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Re:【陽の雫 57】 祝福(09/09) 

いつもヒーリングありがとうございます。
ちょっと前クリロズのDLをしました☆
こういうことは全然わからないんですけど、
解説があって簡単にできました。

本当にありがとうございます♪
物語もすっごくおもしろいです(^^♪
これからも楽しみにしてます☆ミ
  • posted by みく 
  • URL 
  • 2010.09/11 16:30分 
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Re:【陽の雫 57】 祝福(09/09) 

リフィアさん、慣れない大役、本当にお疲れ様でした&おめでとうございます☆
オーディンさん、ずーっと足の悪いおばあさんに付き添ってたんですね~
なんていい人なんだ!

  • posted by たまねぎ 
  • URL 
  • 2010.09/11 18:46分 
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Re:【陽の雫 57】 祝福 

さつきのひかりさん、こんにちは~。
『惑星の守護者からの祝福☆』
もうこれ以上ないくらい強力な『護りのちから』ですね(*^_^*)
あやかりたい~、なんて不謹慎(?)なこと思ってしまいましたけど、でも、読んでいて不思議と『あ、なんかきっと読者全員にも、祝福の波動が受け渡されてるのかも』と思いました♪
文字を正確に読むこと、正確に辿ることは、魔法の発動には欠かせない要素ですしね☆
読むだけで幸せな気持ちになれるのは、事実なので、魔法でも魔法じゃなくてもいいんですけど♪
昨日今日と、花嫁さんを拝見したり、役所で婚姻届を提出してるカップルを見たり、なんだか『しあわせ』オーラを引き寄せているようです。
嬉しいですねぇ~
リフィアさんも、ほっとひと息、ですね(*^_^*)
本当に大役、お疲れさまでした。
オーディンさんがあんまりに可愛らしくて、失礼かとは思いますが、ほんわかと微笑んでしまいました♪
性別関係なく、美人さんがお化粧したら、もうそれは性別を越えた美しさでしょう。
そりゃ、どぎまぎしちゃいますよね(笑)
あ、私も拝見したいですぅっ
こっそり夢にいらしていただけないですかねぇ。
もちろん!
リフィアさんとご一緒に!!
  • posted by 月の娘 
  • URL 
  • 2010.09/13 13:24分 
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  • [Res]

おへんじ 

>Ri-faさん
いえいえ素敵なお名前かとw
読んで楽しんでくださって、どうもありがとうございます♪
嬉しいです~♪


>撫~風~羽~♪さん
大仕事ですが楽しかったですw
花嫁さんは綺麗でしたしねえ♪ ←ヴェール人的のろけ


>アキレスさん
ありがとうございます♪
祝福が世界に満ちるのは素敵ですよね^^


>mamaさん
ありがとうございます~! 今日も1話アップしました!
またお楽しみくださったら幸いです♪


>ton-tanさん
おお、ご趣味が一緒なのですねw 楽しいですよね~ww
物語を楽しんでくださってありがとうございます♪


>しまさん
お祝いをありがとうございます♪ 楽しんでくださって嬉しいです。
しまさんにも祝福を☆


>みくさん
クリロズ誘導瞑想、いかがですか~。楽しんでいただけたら嬉しいですw
物語もありがとうございます♪


>たまねぎさん
オーディンさんいい方ですよ~。大好きです♪
リフィアさんは疲れたでしょうねえ^^;


>月の娘さん
そうですね~。そうかもしれないです<祝福
アルディアスはそれくらいやってそうな気がする…(遠い目
楽しんでいただけて嬉しいです♪
  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2010.09/15 11:01分 
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Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

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ルシフェルの翼Calling You 開発者。
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