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【陽の雫 8】 神降

銀髪の少年がベッドに横たわっている。
身体が熱い。
特に耳たぶに開けた穴がひどく疼く。無意識のうちに手で小さな石のついたピアスをむしり取ろうとすると、その度に誰かの手に止められた。

頭を挟む位置にクリスタルを身につけること、しかも四六時中外さずにいることは、神官としての能力を向上させる方法のひとつとなりうる。
神殿の医術の心得のある者によって開けられた穴は、きちんと血管も神経網も避けていたため、痛みもたいしたことはなく血も出なかった。
しかし一ヶ月以上も経って、最近その穴に血がにじむことが多くなった。

それは珍しいことではないらしく、高熱を発するアルディアスに付き添っていた壮年の巫女は、慣れた手つきで布に消毒液を含ませ、その血を拭き取っていた。

身体に過負荷がかかっているのだ。
神降ろしの才能はなかったが、その分医術の専門家として何人もの看護をしてきた女は思った。

まだ十三歳にしかならない、幼さの残る少年を見やる。
この歳であれだけのエネルギーを降ろすのは、やはり才能としか言いようがない。しかし同時に、まだ完成しない肉体にかかる負荷も並大抵のものではないだろうと思われた。


熱い。熱い。
真っ白い世界にアルディアスはいた。
自分の上に降りてきた、真っ白で強烈な光のかたまり。世界を漂白するような強さで、光は彼の身体と魂を灼いた。

他に呼びようがないから光と呼んでいたが、そこには光も闇も善も悪もなかった。何もなく、そしてすべてを含んで、ただただ大きな振動が、エネルギーが存在していた。

神殿に来てすぐは、自分のエネルギーを制御することを中心に教えられた。それを習得し、十歳のころから今度は積極的に使うことを覚えはじめた。

そして三年。
年老いた白髪の大神官は、これは試験である、と言った。
これを通ったなら、この者は次の大神官になるであろうと。

アルディアスは普段は大神官その人しか近づけない奥の院に連れて行かれ、神降ろしの秘事を教えられながら執り行った。

……結果、神は降りた。

祭礼の近づく夏のある日、真白の光が大きく神殿を照らす。
この星を支える、次の大神官が決まった瞬間だった。

史上最年少ともいえる資格者の誕生に、神殿は沸いた。けれども当のアルディアスは……とりわけ嬉しいと思ったわけではなかった。
元々、信仰心あって神殿に入ったわけではない。現れはじめた彼のサイキック能力に対応しきれなくなった両親が、五歳のときに預けたのが始まりであったから。

こんな能力なんてなければいいとずっと思っていたから、力の制御に関する勉強には最初から真面目に取り組んだ。
しかし力は消そうとすればするほど彼を苦しめ、逆に使いこなすしかないのだと、あらゆる機会をもって教えられた。
そして、半分嫌々ながら研鑽を積んだ結果のことだった。

曇りない大きな光は、アルディアスの内外を白く染めあげてゆく。
夢の中まで真っ白だった。

浅い息の下、太陽がいっぱいに照らしているような白い夢の世界に少年は立っていた。

ふと誰かの気配がして振り返る。

「だれ?」

呼びかけに応じたのは、自分よりも少し小さな女の子だった。十歳くらいだろうか、金茶の髪をふたつに結んで、きれいな目で彼を見ていた。

知らない子にも物怖じせず、あそぼ、と彼女は笑った。
どこの妖精だろう。いつだったか、まだもっと小さい頃に神域の森で会ったことがあるような気がする。
何もない白い世界で、その子の存在はとても温かかった。

「うん、あそぼ」

アルディアスはその妖精の手をとって歩いた。行けども白い空間は、何もないようでいてすべてが内包されていた。
どこに隠れたのだか判然としないのに、かくれんぼも鬼ごっこも宝探しもできる。

少年と少女は、互いの名も知らぬままに手をつないで遊びまわり、笑いころげた。
日なたぼっこをするように暖かな世界だった。

神さまってこういうものなのかな、と少年のアルディアスは思った。
ただただ暖かいお日様のようなもの。
誰かと笑いあう幸せのようなもの。

それを皆に届けるのだったら、大神官とやらになってみてもいい。
浄化作用で熱が出ても、今はとても楽しいから。
この子の笑顔が嬉しいから。





「リフィア、リフィア」

呼ばれて、少女はベッドの上で目を開けた。

「よかった、ようやく熱が下がったわね」

見慣れた部屋の天井に、母親と兄妹たちの顔。母親は冷水で絞ったタオルを少女の額に乗せながら、あなたは原因不明の熱で寝込んでいたのよ、と微笑んだ。

「あのね、お日様のいっぱいな場所でね、知らない子とたくさん遊んだのよ」

喉の渇きを覚えながらリフィアは言った。
そう、よかったわね、と母親が答える。熱にうかされて見た夢だと思われていることが、少女にもわかった。

半身を抱え起こされ、白湯を飲ませてもらいながらリフィアは考えた。

たしかにここは自分の家だ。
あの白い場所はどこだったのだろう。
あの銀髪の子は、見えない妖精かなにか?

それまで彼女はよく、神殿の外苑の森で遊んでいた。神域の森まで入り込んでしまったこともある。
そこには、目に見えないような友達もたくさんいた。
普通の目に見える友達ともよく遊んでいたから、誰にも不思議がられたことはない。交友関係が広いと親も思っているだけだろう。

しかし、そろそろ物語の森を卒業する時期が近づいていた。
十歳になると、商家の子供たちは皆習い事を始める。

高熱は熱射病でしょう、と医者は言った。
その熱とともにただ遊んでいればいい子供時代は終わりを告げ、リフィアは現実の世界に帰るとともに、見えない友達やその少年のことはすっかりと忘れていった。

















-------

◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第二部【陽の雫】目次



ピアス、実はこの夏に開けました。ずっと悩んではいたんですが、日蝕前に、なんか開けなきゃいかん気がして 笑
イヤリング苦手だったので、シンプルに石を身につけられるのがよいですね♪
ただ・・・失くすからな、私… orz

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12/22 ご先祖様一斉ヒーリング

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Re:【陽の雫 8】 神降(12/20) 

例のパーティー以前にも、こんな形で二人は出会ってたんですね~。
よく考えてみればマリアさん&デセルさんの時代からのご縁のようなので、
お二方の魂って本当に深い絆で結ばれているんだな~、としみじみ思いました。
  • posted by たまねぎ 
  • URL 
  • 2009.12/20 13:44分 
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Re:【陽の雫 8】 神降 


そうだったんだぁ~♪
夢の中であっていたんですか~♪
不思議ですね~o(^-^)o
  • posted by にこにこ◎^∇^◎みかん♪ 
  • URL 
  • 2009.12/20 14:13分 
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陽の雫 8 

 いつも読み逃げですみません~.
印象的なお話ですね.
 実は私は時々登場人物のお名前のほうに
なんとなく胸をつかれるような氣がする
ときがありまして.なぜだかわかりませんが.
これからも楽しみにしております.
  • posted by アゲ 
  • URL 
  • 2009.12/20 22:52分 
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Re:【陽の雫 8】 神降 

子供の頃の二人って…きっと傍から見ても妖精さんのように愛らしかったんでしょうね♪
それにしても銀月の時にトールの過去世として出てきた時のアルディアスの印象とは随分違う感じ。なんかもっと暗い冷たい印象でした(^^;
続き楽しみにしてますっ☆
  • posted by あいちん 
  • URL 
  • 2009.12/21 04:25分 
  • [編集]
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Re:【陽の雫 8】 神降(12/20)  

いつも読み逃げですみません(汗)
お二人の接点が出会う前にあったことに驚きました!
でも彼の孤独をあの場面で癒してくれたリフィアちゃんに感謝です^^

私も読みながら時々どうしようもなく懐かしい思いに駆られるときがあります。。。
ほんっと不思議ですよね^^*

これからも楽しみにしてます☆
  • posted by *水音(みおん)* 
  • URL 
  • 2009.12/21 10:25分 
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Re:【陽の雫 8】 神降 

あれ?私の勘違いでしょうか?
二人が子供の頃に神殿の森で出会っていたイメージがなぜだかあったんですが…他のお話と勘違いしているのかな?(*_*)
二人の空気感が自然でいいですね~♪
  • posted by 撫~風~羽~♪ 
  • URL 
  • 2009.12/21 13:36分 
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おへんじ 

>たまねぎさん
どこが始めか、だんだんわからなくなってきましたけど 爆
深~~~いご縁なのは確かですね~。


>にこにこ◎^∇^◎みかん♪さん
ほんと、不思議ですよね~。


>アゲさん
名前ですか。
なにか聞き覚えでもおありだったのでしょうかね~


>あいちんさん
それはたぶん、「グラディウス」です・・・
わざとじゃないのですが、似たような名前でごめんなさーいー><
同じ私の過去世ではありますが、性格はまったく違います。。


>*水音(みおん)*さん
接点があったことなんか、当人さっぱり忘れてたんですけどね。
後から記憶をさぐったらあれ?みたいな 笑
でもこれで大神官職を受ける決意をしてるので、けっこう大事なエピソードだったようですw


>撫~風~羽~♪さん
見覚えありましたか~。
まだ書いてはいなかったと思いますけど、なにかご覧になったのでしょかw
面白いですね^^

  • posted by さつきのひかり 
  • URL 
  • 2009.12/22 12:30分 
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Re: 【陽の雫 8】 神降 

おはようございます。

いつもゲリラヒーリングでお世話になっております岩手県盛岡市の高橋です。
いつもありがとうございます。
ひとりの時間に、ふうとこころを穏やかに、自分によしよし…、としたい日はさつきのさんの物語から癒しの時間を貰っています。言葉ひとつひとつがていねいで、何故か文章からあたたかさのようなものをよく感じています。
まだまだ読みはじめですが…
アルディくんを思い浮かべると、我が家の繊細な二番目も思い浮かびます。不思議です。

これからもゆっくりじっくり読ませていただきますねm(_ _)m


長文、失礼しました。
  • posted by 高橋 
  • URL 
  • 2014.07/27 11:04分 
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