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【銀月物語 87】 星の隙間

「オルダス……いやアルディアス!」

七夕パーティの後、紳士連に次の河岸へ連行される途中、背後からいきなり声をかけられた。
振り向くと懐かしい人物の顔があり、トールは目を細めた。

「セリー。セラフィト、君か」

「なんだよ、お前……何億年姿消してやがった。今頃のこのこ戻ってきやがって。天使エリアの新統括だって、ばかやろう」

最後は涙声になっている。飾らない言葉づかいに、あたたかな親愛の情がにじみ出ていた。

すまないね、ありがとう、とトールは旧友の肩を抱いた。
セラフィトは力をこめて銀髪の男の背をたたき、何度も頷く。

彼は、トールがルシオラの魂に出会った生よりさらに前からの知り合いだった。オリオン大戦の渦中、成長したエル・フィンと出会った頃だ。そのときの転生では、彼はアルディアスと名乗っていた。

「……んだよ、じゃあエル・フィンを引き抜きやがったのはお前か。俺が共有エリアの警備にスカウトしようと思ってたのに」

はっと気づいたように身体を離すと、自分より高い位置にあるトールの顔を睨みつける。

セラフィトは天使族であるが、今はステーション共有エリアの警備主任をつとめていた。天使エリアなどと違い、共有エリアはさまざまな波動が入り乱れるため、セキュリティや警備は当然激務だ。そのため、エリア統括の下にさらに専用の担当部門が置いてある。
彼はぶつぶつと指を折った。

「奴だけじゃない。セーラム、ユーリグ、エルリック、フィリア……目をつけてた将来有望株、いざ声かけようとしたら、誰もいやがらねえ」

「……みんなうちの遊撃隊員の名前だ。ふうん、エル・フィンはさすがだな」

のんびりとトールは言った。最初からエル・フィンの人脈と人を見る目を信頼していたから、多忙も重なってどこから引き抜いてきたかなど尋ねたこともない。人数も人選も彼に一任して、こちらはその結果を了承しただけだった。

「さすがだな、じゃねえ! どーしてくれるんだ、俺の将来計画が。しかも、そっち見限ったらいつでも来いよ、と言ったら皆して、それはないと思う、とか返しやがった。ったくどいつもこいつも……」

やってられん、というように両手を広げてから、彼は表情を変えてトールを見上げた。

「……でもまあ、トップがお前じゃしょうがねえな。奴らの気持ちもわかる。
それにしても、ルシオラ嬢、いや緑の姫君のツインがお前とはな。月の騎士のバラッドでそうじゃねえかとは思っていたんだが」

「……あれで気づいたのか?」

びっくりした顔で旧友を見やると、セラフィトは当たり前だ、と大仰に太い眉をあげた。

「だがああいう試練を受けた魂は他にもいたし、同じことをやった者だっていただろう」

「馬鹿。自分でオペやってツインのコードを切るとか、瀕死なのに表情も変えずに闇に飛び込む天使とか、気が遠くなるほど長いあいだ世界樹の守人になるとか、魂の融合を了承して手放して、それでロストにもならずにその後も追って転生し続けるとか、……あと何だ、翼と種か。どれか一つか二つなら、そりゃやる奴はいたさ。
だが俺だって天使人生長いがな、全部引き受けてなお穏やかに笑っていられるような奴なんぞ、一人しか知らん」

「そういうものか」

「あのなあ……。そういう珍しいケースだからこそ、バラッドなんぞの題材にされてるんだろうに……お前って、ほんっとーに昔からそういうところ鈍いというか己をわかってないよな……。エル・フィンにも言われないか」

「……そういえば言われるな。アシュタールにも」

そうだろうそうだろう、とセラフィトはうなずいた。それからふと、左右を見てから言いにくそうに小声で尋ねてくる。

「いないのか、その」

ひどく抽象的な質問であったが、トールには意味がわかった。

「いるよ。会場入って左手の、ハープを弾いてる女性を見たかい?」

セラフィトが一瞬記憶をさぐる表情をする。考え込む間もなく、彼は大きく首を振った。

「おお、見たとも。銀髪のすげえ波動の高い美人だった……ってそういえばお前に似てたな」

性別は違ったが、顔も波動もよく似ていた。そして彼女を護るように背後に立つ、正装した長身の技術主任。室内の灯りにも明るくきらめいていた、ペリドットの双眸が思い出される。

そうか、そういうことか、とセラフィトは呟いた。
しばらく互いに無言で足を動かし、ふと思い出したように言う。

「あのさ、またオルダスって呼んでもいいか?」

それが小さな子供のような瞳だったので、トールは思わず微笑んだ。

彼がその昔アルディアスという名であったとき、友人だったセラフィトはそのつづりを見て、俺の出身星ではこう発音するんだ、大好きだった叔父と同じ名前と銀髪だな、と言って、ひとり彼をオルダスと呼んでいた。
その叔父が戦乱で亡くなったことを聞いていたので、当時のアルディアスもその呼び名を拒否はしなかったのだ。

「かまわないけどね。他人に言うときは気をつけろよ。アルディアスだってもう古すぎて通じないぞ」

「わかってる。今はなんだっけな、トール、か? ルシオラ嬢に会う前の封印された名は?」

「それはまだ出てこない。あと、一応頭に入れるだけ入れておいてほしいんだが、性別以外で本質的に今アルディアスにより近い半身は、どちらかというと彼女、マリアのほうだ。アルディアスは強い巫覡の質だったからね」

そうだった、とセラフィトは昔を懐かしむ目つきになった。例年本部で大祭が催されるときには、アルディアスが神事を取りしきっていたものだ。
庶民ゆえ秘事の内容までは知りもしないが、あの賑わいは懐かしい。
長い長い戦乱がいつか祭りを忘れさせて、もう幾とせが過ぎるだろう。

「……お、もう店だな。お前とつもる話でもしながら飲みたいところだけど、今夜はおやじ連中が放さねえだろうなあ。あのグリッド計画、もう実験に入ってるんだろう」

「ああ、できるところからね」

「そういうとこも昔通りだな。よかった、今度暇見てゆっくり飲もうぜ。で、そのときには優秀な人材を引き抜きやがった詫びに、高い酒おごらせてやるからな」

わかったよ、とトールは笑う。
先に店に入った紳士方が彼らを手招きしていたので、二人は足早にそちらへ向かった。













水晶薔薇庭園館綺譚9 遊撃隊の仕事(6月頭くらい?)>(エル・フィンさん)


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◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第一部 目次


セラフィトさん、こっちにも思い出させるために、エル・フィンさん本体さんに↑の記事を書かせたかもしれない疑惑が^^;
ものすごーーーーーく長いつながりのようです。びっくり。


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Re:【銀月物語 87】 星の隙間 

またまた新しい人物が!
不思議ですねぇ~♪
続き楽しみにしていまーすo(^-^)o
  • posted by にこにこ◎^∇^◎みかん 
  • URL 
  • 2009.08/13 11:57分 
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  • [Res]

気の遠くなる年月・・・ 

>何億年姿消してやがった
お、憶( ̄□ ̄;)!!
単位の違いにまずぶっとんだものの。
すぐに「何億年ぶりかの再会かあ・・・」とこちらもうるっと来ました(つω-`。)

  • posted by マイ 
  • URL 
  • 2009.08/13 16:31分 
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Re:【銀月物語 87】 星の隙間(08/13) 

ボーっとお盆を満喫している間に大計画の発表&新キャラ登場と、
なんだか息もつかせぬ展開ですね~。
もしかして二回目のトール氏&緑ちゃんのヒーリングも、
この壮大な計画に関係している!?

  • posted by たまねぎ 
  • URL 
  • 2009.08/16 13:58分 
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