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【銀月物語 79】 強制休暇

祭のあと、皆は足りないビーズは何なのか、をずっと探していた。
光(白)から闇(黒)をつなぐならば、三原色の黄色が足りない、と発見したのはデセルだ。シュリカンのルビーを含めて、エメラルド、ベニトアイト、ペリドット。確かに黄色はない。

ではその「黄色」は具体的に何を指すのか。色の言語によると、黄色は人間の意思であるという。
ならば下が寝落ちしたりせず、最後まで意識的にエネルギーを扱うことがまだできていないからではないか、という説が導かれていた。

その後、クリロズで人形のようになっていた少女が解放されたため、この説でおそらく合っているのだろうと推測する。練習をしなくてはならないね、という結論が出ていたが、いまいちすっきりしないまま日が過ぎていた。



一方、ステーションではおなじみの会話が交わされていた。

「エル・フィン。もういいから、休みなさい」

「大丈夫です」

夏至当日、金髪碧眼の彼は別のイベントに出るために休暇をとっていた。もちろん、それはまったく悪いことでも、責められるようなことでもない。

彼がかたくなに休もうとしないのは、夏至祭りから当日にかけて、トールと少女が瞑想部屋にこもりきりになっていたため、ルーチン処理をすべく代理でルキアのトールが出勤していた、と知ってからだった。
それだって実際は、瞑想部屋での二人のエネルギー交流がある程度成功したために、仕事自体が二割ほど減っているのだ。
理想からするとまだ半分程度ではあるが、なんとか実用レベルにはなってきたと思っていい。

だから本当に大丈夫だ、と何度も伝えるのだが、エル・フィンは休もうとせずに、もう五日ほどもステーションに詰めていた。忙しいときにのんびり休暇などとってしまったことが、よほど許せないらしい。

また見回りに行くというエル・フィンの背中を見送って、トールはため息をついた。

(シェーン、ちょっといいかい)

クリロズにいる彼の守護竜に心話をつなぐ。

(これはお久しぶりです)

シェーンはすぐに応答した。かつてエル・フィンと二人、トールに恩を受けたこともある。ドラゴン族であることに高い誇りを持っているシェーンだったが、彼にはつねに一目置いていた。

(エル・フィンがそちらへ帰らない件なんだけどね)

(わかってます。そろそろあなたにお願いしようかと思っていたところでした。本体からもメールを書いてます)

シェーンは肩をすくめるような波動を送った。思念の苦笑がかえってくる。

(そうか、それなら話が早いな。当人にはいくら言っても駄目だろうから、君の了承がもらえればそちらに強制送還してヒーリングをかけさせてもらうよ。
今は昼過ぎか……よければ明後日いっぱいまで、二日半の連休とするが)

(もちろんよろしくお願いします。……ただ、彼のことだからここでも端末で仕事を続けるんじゃないかと心配で。本体もその旨書いていましたが)

(確かに。ではそこも細工しておくとしよう)

(ありがとうございます)

心話を切ると、トールは部下の気配をさがした。エリア統括である以上、やろうと思えばエリア内で誰がどこにいるかも探ることができる。
エル・フィンは小さな修復をいくつか終えて、報告のために戻ってくるところだった。
ひととおり彼の報告を聞いてねぎらってから、おもむろにトールは言い渡した。

「エル・フィン。ただいまより二日半の休暇を命じる。クリロズに帰るように」

ゆっくりとした口調。めずらしく微笑を含まないベニトアイトの双眸が、反論を封じるようにまっすぐにエル・フィンの碧眼を見つめている。
青年は口をひらきかけ、無駄をさとったのか声を出す前に一度閉じた。

「……わかりました」

「よろしい。レオンとゆっくり遊んでおいで」

トールは微笑み、青年を送り出した。
彼がクリロズに着いたことを確認し、シェーンとの約束どおり、端末を開けようとする前に強烈なヒーリングを送って眠らせる。もう五日はほとんど寝ていないはずだから、効きは嫌でも良好だった。

そうしながら、今度はクリロズのトールが、端末回線につないで彼の端末を遠隔操作しはじめる。
たまたまクリロズに来ていた緑の少女が、トールの背にもたれながらそれを見ていた。

「なにやってるの?」

「いや、エル・フィンが働きすぎだから、ちょっと休ませようと思ってね」

彼の操作する画面に、「休暇中につき使用禁止」という文字が出てくる。少女はぱっと顔を輝かせた。

「あたしも描く! やらしてやらして」

はいはい、とトールが席を譲ると、少女は以前に資料室の端末にいたずらしたときのような動画をつくって、いそいそと画面にはりつけた。
何かタコのようなものがボールを投げ、そのボールがどこかに行って、何かに当たって返ってくる……という、言ってしまえばただそれだけのものだ。
端末を立ち上げた生真面目なエル・フィンが、心底脱力するであろうことが容易に想像されて、すこし可哀想な気がしなくもない。

まあでもそれくらいのほうが、いっそ仕事する気をなくすだろう。
彼がワーカホリックなのは性格であるとともに、自分を心配してくれているからだと知っている。

ならばよけいに、ゆっくり休んでほしかった。



















<水晶薔薇庭園館綺談4 6月末の休暇前> (エル・フィンさん)
http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-32.html


<☆七夕セラフィムヒーリングとパラパラ漫画の謎☆> (じぇいど♪さん)
http://plaza.rakuten.co.jp/californiajade/diary/200907040000/





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◆第一部 目次

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Re:パラパラ漫画の謎 

こんにちは!
こちらでははじめまして!
いつもヒーリングではお世話になっております。

緑ちゃんのパラパラ漫画、ずっとツボにはまりまくりなのに、
まだ見えない私です。
脱力系パラパラ漫画、エル・フィンさん見れていいなー!(違うか…)
  • posted by なが 
  • URL 
  • 2009.07/31 18:18分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【銀月物語 79】 強制休暇(07/31) 

これが噂のエル・フィンさん強制休暇&パラパラ漫画の場面ですねw
私もまだ見られないのが本当に残念です。
ある意味エル・フィンさんにとっては最強のヒーリングかもしれませんねw
  • posted by たまねぎ 
  • URL 
  • 2009.07/31 18:54分 
  • [編集]
  • [Res]

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さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

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ルシフェルの翼Calling You 開発者。
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