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【銀月物語 52】 木漏れ日の下で

明るいルキアの庭。
大きな樹の下に白いテーブルセットを出して、たくさんのごちそうが並べられていた。

トールの弟子であるジョゼ少年が、機械作りと授業に夢中になりすぎて倉庫で寝たり食事をせずに学校に行ったりしてることが発覚したため、サバトの隣に部屋を作って住んで、もうしばらくになる。

はじめ寡黙でつねに何かに警戒しているような様子だった黒い羽のサバトは、完全に安全なルキアにいるうちに少しずつ安心を取り戻し、マリアの畑仕事を手伝ったり、森を散歩したりしてのんびりと過ごすようになった。
いままでずっとサバトと一緒で、彼がいなくなって寂しさを押し隠していたジョゼ。夜にはこっそり、もらった瑠璃のマントをかぶって寝ている、と本体にばらされて怒っていた彼も、ともにルキアに来ることで笑顔が多くなっていた。

そんな彼らも、今日ルキアを出立する。
二人が挨拶だけしてクリロズに帰ろうとマリアを探したときには、もうごちそうはテーブルに並べられていた。
湯気のたつ具だくさんのスープや焼きたてパンにサラダ、新鮮なフルーツに美味しそうなケーキ。

「さあ、最後にお別れパーティしましょうね」

マリアが微笑んだ。少年たちの健康な胃袋はいい匂いに刺激されてすぐに反応した。
二人は顔を見合わせ、照れたように笑って促された席についた。
テーブルにはトールとマリアの他に、デセルと緑の少女の笑顔もあった。

「ちゃんと紹介するのは初めてだね。デセル、この子がジョゼ、こちらがサバト。で、彼がデセルだよ」

行儀良くぺこんと頭を下げた少年達に、よろしく、とデセルが笑う。
話はよくトールから聞いていたから、二人を見るペリドットの瞳が優しい。

ジョゼは同じく技術畑、それも師匠の親友の人だ……と眩しそうな憧れの目でデセルを見つめていた。
あまり自分から話をしないサバトが、師匠やデセル、マリアには照れくさそうでも自分から話をしている。それが嬉しくて、ジョゼはにじんだ涙を素早く袖でぬぐった。

「あっこいつ、泣いてる」

目ざとくそれをみつけたのは緑の少女だ。少女は腕をのばして隣の席のジョゼの髪をぐりぐりかき回すと、にやりと笑った。皆が笑う。
いくつもの優しい笑顔が心を満たして、気恥ずかしいやら涙があふれそうになるやら、ジョゼはむちゃくちゃに袖で顔をこすった。

「僕……僕、ありがとう、ございます」

ようやくそれだけ言ってしゃくりあげる。嬉し涙を拭いた後の食事は、腹にしみるほど美味しかった。

「それじゃあ、緑さんは週末から入院なんですか?」

トールと話していたサバトが言った。過去世で行われた改変の、復旧手術をするということだった。執刀はトールがやるらしい。錬金術師は口にしなかったが、それが先日マスターと話し合った内容だった。

「じゃあ僕達、緑さんが元気になったころにお見舞いに行きます! 師匠みたいにアップルパイ作って」

ほおばっていた木の実いりのパンをスープで飲み下してジョゼが言った。

「ほんとか? 楽しみにしてる」

緑の少女が笑う。

楽しい食事が終わって皆が席を立つと、ジョゼとサバトは並んで深々と頭を下げた。

「ほんとに、ほんとにありがとうございました!」

「二人ともね、来たくなったらいつでもここに帰ってきていいのよ」

マリアとトールが微笑む。ジョゼがあげた顔を輝かせ、サバトは恐縮しながらも嬉しそうだった。みんなのことが大好きなのだ。

ちゃんと食事して、それから今度クリロズで催されるイベントの花火を頑張るから、ぜひ見に来てください、とジョゼは言った。トールがうなずく。
その日はオペに近いから正式に参加はできないかもしれないが、後ろのほうからでも必ず見に行こう、と彼はかわいい弟子に約束した。



ルキアを出立する少年二人を見送った後、マリアはデセルの長身に目をやった。
デセルも今、自分の家を作るべく場所を探している。今すぐではないだろうが、近い未来に彼もまたここを発ってゆくことになるのだろう。
そして、今は離れに家族で住んでいるララー達も。皆一緒にいてくれるのは嬉しいし楽しいが、彼らには彼らの場所があっていい。

門出の季節とはいえ寂しくなるわね、とすみれ色の瞳がちらりと分身を見やる。銀髪の男はわずかに肩をすくめ、それからね、と緑の少女に向き直った。

「あなたもここを家だと思って、もうそのへんの道端なんかで寝ないでくださいよ」

青灰色の瞳が心配そうな光を投げる。
少女は下の娘の家にきちんと部屋があるのに、ステーションの「どこかそのへん」で転がって寝ていることが多く、シュリカンがいつも回収にまわっているのだ。
その理由をトールは知っているが、心配であることに何も変わりはない。

「……それ、やめてくれたら考える」

眉根をよせて少女は答えた。

「それ?」

「敬語。だってそれ……わざと距離、とるためなんだろ」

半分睨むように背の高い男を見上げる。トールは少女の怜悧さに微笑んだ。
その通りだ。
彼女の準備ができるまで、過去を思い出させることがないよう、そして自分を戒め馴れすぎることがないよう、あえて距離をとってきた。
過去世を統合してからは、つい口調が昔の、それこそ天使時代の親しいものになりそうになるところを、理性で踏みとどまっていた。

でもそれはもういい、と青灰色の瞳を覗きこんで少女が言う。

わかった、と彼は答えた。


















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◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第一部 目次

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Comment

Re:【銀月物語 52】 木漏れ日の下で(06/03) 

 いつも楽しみに読んでいます♪
 魂の物語は、どれほど壮大なのかと思うと、ホントにただただ圧倒されてしまいます。
 さつきのひかりさんとはスケールは全然違うのでしょうが(笑)、でも、きっと人それぞれに、本当に大事な大事な物語があるんだろうな~と思うと、今ここにいる自分自身のことも、なんだかとても愛おしく思えてきます。物語を読みながら、自分のこと、出会う人や出来事、その一つひとつをちゃんと大事にして、生きてゆきたいと思えるようになりました。
 ヒーリングも銀月物語も、いつもホントにありがとうございます。
 現代編も楽しみにしていまーす(^^)
 
  • posted by くまたろう 
  • URL 
  • 2009.06/03 19:58分 
  • [編集]
  • [Res]

ラブですね^^ 

すっごい愛に溢れててにやにやニコニコしちゃいます。

あと、こちらのブログを読んでいると、ふいにすごく身体が前後に揺れだすのですがなんかあるのかなー?って思ってます^^
  • posted by わかめ 
  • URL 
  • 2009.06/06 00:41分 
  • [編集]
  • [Res]

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物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
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