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【銀月物語 44】 天使の子 -記憶-

赤ん坊の笑い声がきこえる。
けぶるような金髪の、ひどく愛くるしい子だった。
小さな体をそっと抱き上げると、もみじのような手をのばしてにこにこと笑った。

「私のことがわかるのかい?」

銀髪の男が笑う。愛しみをこめた指先で、彼は赤子の頬をさすった。くすぐったそうな声があがる。

この子の魂が誕生した瞬間を、彼は鮮烈に覚えていた。
美しい輝きだった・・・・・・
魂の誕生を見たのは初めてではない。
しかし闇を知る異端の天使であるために、ずっとひとりでいた彼の心を魅了して余りあるほど、それは神々しくも美しい未来と希望の光だった。

彼女の魂の設計図を、彼は知っている。
愛されるべき護られるべきあどけない形質をもってつくられる、痛みを知らぬ戦いの天使。
闇の特徴たる母性に訴える特質をそなえて。
やがてその施術に携わらなければならないであろうことも、彼は知っていた。

そもそもがひどく冷酷なこの計画は、いったい誰が考えたものだったのだろう。
鋭利に研ぎ澄まされすぎた光は、闇の底と同質であるという証左だったのだろうか。
考えるほど胸が重くなる。


だが、実際に赤子を抱いていると、そんなことはどうでもよくなってしまうのだった。
後から添加された特質のせいではない。
彼はその奥の、彼女の真実の姿を知っている。

その魂そのものが愛おしかった。
これをなんと表現したらいいのだろう?

彼女がどんな人格でも、どんな外見でも、どんな人生を歩もうとも。
かまいはしないのだ、彼女自身が選んだものでありさえすれば。

幸福にもツインソウルの位置をえた・・・・・・けれどそれより、彼女を愛する方が先だった。
だから彼女が、自分以外の誰かを選んでもかまわない。
その自由を大事にしたかった。

「愛しているよ、ルース」

優しい目で、彼は小さな耳にささやいた。きゃははは、と赤子が笑う。
ルーシーと呼ぶ大人が多い中で、彼はこの愛称を気にいっていた。きらきらと輝く碧い目の宝石。その色は、ときにエメラルドにも似て。

「愛される特質を添加」という計画のために、今後彼女は苦しむだろう。
周りにどんなに愛されても、それは素の自分ではなく後からの特質に向けられたものではないのかと、悩まずにいられないだろう。

けれどどんな魔法でも、まったくの無から有を生み出すことなどできはしない。磨いた宝石が輝くのは、原石にじゅうぶんな素質があったからだと、いつか気づいてくれるだろうか。


そのとき隣で見ていたもうひとりの天使が、待ちきれないように低い声を出した。

「はいはい、交代っ。さあおいで、アタシのカワイコちゃん」

彼のものよりごつい手が、そうっと赤子をとりあげる。

「は~い、おかあちゃんですよ~」

にこにこと柔らかい頬にキスをする。赤子は嬉しそうに笑い、あーうーと一生懸命なにごとかを話した。

「そうそう、そうなのぉ。うんうん」

フレディ・・・・・・フレデリカは碧い目を見て真面目にうなずく。天界の保育士をしている彼女は、これからこの子を育てることになっていた。
フレデリカもまた、闇の形質をもつがゆえにひとりでいることを選んできた天使だ。これからはまっすぐで大きな愛を、彼女に注いでゆくのだろう。

「そうよねぇ~、あんなおじちゃんよりは、おかあちゃんのほうがいいわよねぇ~」

「おじっ・・・・・・。それはひどくありませんか、フレデリカ」

いささか傷ついて銀髪の男は言った。天使に年齢はほとんど関係ない、というよりもそれを言ったらフレデリカ自身はどうなるのだ。

「こぉ~んな可愛いと、おヨメにあげたくなくなるわねぇ。ね、カワイコちゃん?
あなたのことが大好きよっ」

フレデリカは聞いてもいない。とろけるようなその笑顔は、すべて腕の中の赤子に向けられていた。
これから育てる幼子に、彼女自身も癒されていくのだろう。銀髪の彼もそうであったように。

誰かを好きだ、と言えることの幸せ。
その想いをむける相手がいるという奇跡。

怒る気も失せて、銀髪の男は二人に微笑みをむけた。
フレデリカの腕の中で、小さなエメラルドの瞳が男をとらえる。その視線をやわらかに包んで、彼はいっそう深い微笑をうかべた。


愛しているよ。
君が生まれた瞬間から、この世界のすべてが終わるそのときまで。



・・・・・・それは、幸せな、幸せな記憶。

















----------

◆【銀の月のものがたり】 道案内

◆第一部 目次

過去シリーズに入ってから話が暗いので、この-記憶-は心のオアシスです(爆
このお話が偶然44話目にきたのにも、何か意味があるのかなあ、なんてね。
あ、ロ○○ンじゃないんですよー。
緑ちゃんの魂なら年齢は関係ないのです。ただそれだけ 笑


コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!
おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。
どれも大切に嬉しく拝見しております♪
続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪


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Comment

Re:【銀月物語 44】 天使の子 -記憶-(05/13) 

読んでいるとハートがほこほこしてくるのに、泣けてくるから不思議。。。
ほんとにほんとに愛してるってすごいなぁ。
  • posted by オリーブ 
  • URL 
  • 2009.05/13 12:16分 
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通信 

トールは夜見。
  • posted by 掲示 
  • URL 
  • 2009.05/13 14:20分 
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  • [Res]

うわ~んTT 

コメントでは初めまして、でしょうか、
ちょこちょこお邪魔してますm(__)m

“存在そのもの”へ向けられた愛が深くて、
うう…泣けます…。
温かくって…なお切ない…。
切なくても、どこまでも果てしなく包み込む。
ありがとうございます☆
  • posted by Berry the Mariel 
  • URL 
  • 2009.05/13 15:37分 
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Re:【銀月物語 44】 天使の子 -記憶-(05/13) 

>天使に年齢はほとんど関係ない、というよりもそれを言ったらフレデリカ自身はどうなるのだ。

うははは!(笑)そうですよね~トールさん!


>幸福にもツインソウルの位置をえた・・・・・・けれどそれより、彼女を愛する方が先だった。
だから彼女が、自分以外の誰かを選んでもかまわない。
その自由を大事にしたかった。

たまりませんね…
本当に温かくも切ないです…
  • posted by しっとり:) 
  • URL 
  • 2009.05/14 10:01分 
  • [編集]
  • [Res]

ステキ(*^ー^*) 

>愛しているよ。
>君が生まれた瞬間から、この世界のすべてが終わるそのときまで。

献身的な愛に胸が熱くなりますね(♡♡)
  • posted by まみー 
  • URL 
  • 2009.05/14 14:02分 
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  • [Res]

Re:【銀月物語 44】 天使の子 -記憶-(05/13) 

とても素晴らしい文章でつづられた銀月物語、毎日アップされているのを読ませていただくのが、とっても楽しみでした。そして、魂と魂の繋がりの深さを実感しました。
現在、なに見えカードファイルが届いたので、いかにしてトール氏の傑作をプリントアウトしようかとわくわくしております。ありがとうございます。
  • posted by ニャン太 
  • URL 
  • 2009.05/15 09:41分 
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Author:さつきのひかり
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