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【銀月物語 30】 蛍 1

ルキアには地球時間に準じて昼夜がある。
暗い窓からソフィアが見上げる夜空には、糸のように細い月がかかっていた。
ゆるやかに曲線を描く長い黒髪に黒いドレス。星明りのなか、白い顔と胸元、手だけがほんのりと浮かんでみえる。

彼女の脳裏に、先ほどの場面が繰り返した。

黒い黒い世界だった。ロストしたかけらを探しに行った先。
魂全部がロストになったら転生は不可能だが、そうはならなくとも自分を責め続けながらの生を繰り返していくことで、徐々に、あるいは部分的に振動数が下がってしまうことがある。
そうすると、たとえば内臓の一部などが細かくロストしていることがあった。

最初にそのかけらを見つけたのは、ララーだった。神殿で、時が残っていたならば銀巫女が教え導くはずだった茶色い髪の少女。現在の本体同士も仲がいい。
彼女はソフィアとデセルと一緒に暗い奥底に降り、自分自身の心臓のかけらを探し出した。

ララーは、愛していた楽師の命を奪ってしまった、と思っていた。
そんな自分は生きていてはいけない、けれど自殺してはいけない。そんな死にたいけれど死ねない気持ちを持ち続けているうちに、心臓の次元が下がってしまったらしい。

その話を聞いたソフィアの本体は、当然自分にもあるだろうなと思った。
きっと多かれ少なかれ、誰もがあるに違いない。
自分の身体を丁寧に感じてみると、冷え切って空虚な部分がやはりある。
それを探しにいかなければならなかった。


ソフィアはたったひとり暗い場所に降りていっていた。
銀巫女が降りていった闇の底ともまた違う、ほのかに暖かいような空気の澱んだ感覚。
かつて神殿で、砕けた魂を探した暗闇に似ている。深海のような圧力がかかり、シールドを張らなければとてもではないが降りてゆけない。

それでも、やはり自分の一部だからなのか、この先にある、という奇妙な確信をもって彼女は進んだ。
どれだけ潜ったかわからなくなってきたころ、小さな弱々しい光をみつけた。
頭より高いところに浮いている、氷漬けの腎臓のかけら。

そのキーワードは『緩慢な死』。
腎臓は沈黙の臓器であると言われる。自覚症状がないままに病理がすすみ、症状が出た頃にはもう手遅れになっているのだ。
自分自身が犯した罪を赦せず、かといって自死もできずに責め続けた選択の結果。本体が腎臓を病んで生まれてきたのには、こんな理由もあったのだろう。

ソフィアは背伸びして凍りついた腎臓に手をのばした。冷え冷えとかたく、その場から動かすことができない。
エネルギーを送ってみても無駄で、逆に指のほうがかじかんでくる。痛みをおぼえた指先をもどして息をふきかけながら、彼女は途方にくれた。
しかしここで放置して帰るわけにはいかない。

もう一度爪先立ちになり、氷塊に手を伸ばす。
するとふいに背後の高い位置から大きな手がのばされ、彼女の細い手に重ねられた。
途端に暖かなエネルギーが塊に通り、氷が溶けだしてゆく。

「なぜ私をお呼びにならなかったのです?」

少し怒ったデセルの声。もう片方の手で肩をしっかりと支えてくれているのがわかる。ソフィアの胸がずきんと痛んだ。
だって、と呟く言葉も声にならずにうなだれる。

「・・・・・・迷惑じゃないかと、思ったの」

蚊の鳴くような声にデセルがそんな、と目をみはったが、こちらも言葉にしては何も言えず、硬い沈黙が流れた。

重ねられた二人の手のむこうで、かけらの氷が溶けてゆく。
ぎこちない心を抱いて、無言のまま二人は帰路についたのだった。




(・・・・・・もう消えてしまいたいわ)

細い月を見つめながら、心にソフィアは呟いた。胸中に本体の声がきざす。

  しようがないよ。
  困らせるつもりじゃなかったでしょ?

(もちろんだわ・・・・・・困らせるなんて、そんな)

  私だって、この年になって恋する乙女を感じるとは思わなかったよ。
  まして「失恋」するとはねえ・・・・・・。
  でもさ、デセルさんの愛は大きかったってことだよね。
  デセルさんにとって、あなたは銀巫女と同じなんだもの。
  捧げられる限りの敬愛と、尽くせる限りのすべて、なんて普通もらえないよ。

(・・・・・・わかってるわ、わかってるの)
ソフィアの声がふるえる。泣きはらした瞳は赤く、すみれ色というよりうるんだアメジストに見えた。

  そうだよね。うん、知ってる。
  あなたがわかってたってことはね・・・・・・
  不毛だって言わせたくなかった。喜んでほしかったんだよね?

  ・・・・・・だったらさ、ソフィア。
  これから他のことで喜んでもらえるようにしようよ?
  私だってデセルさん好きだし、このままぎくしゃくしてるの嫌でしょう。

(彼は・・・・・・赦してくれるかしら)

  それはわからないけど。
  赦すとかじゃない次元で困らせちゃってる気もするけど・・・・・・。

  こういうときはね、何が一番自分にとって大事かを確認するのよ。
  ソフィア、あなたにとって一番大事なものは?

(彼の幸せ)

  ・・・・・・本体の幸せ、じゃないところがさすがトールと同じ魂というか、我ながらあっぱれというか。
  了解、それじゃ、それを第一優先で動けばいいよ。

(いいの?)

  嫌だ、って言ったって無駄でしょうが。
  あなたは私なんだから。性格の特性くらいわかってるって。

  あなたはマリアより振動数が低いんだと思う。だから愛じゃなくて恋をしたんだと思うけど
  だからといって恋が悪いわけじゃないでしょ。
  それはそれで、えがたい大事な経験でしょ。
  だからじっくり味わったらいいと思うよ。いっぱい泣いてさ。

(・・・・・・そうね)

ソフィアは泣き笑いに微笑んだ。すると、雲隠れの月が現れたような光が差した。
本体は胸中にひとりごちる。

  ハイヤーに恋愛講座するっていうのも妙な心持ちだけど・・・・・・
  でも私はあんなに素直には泣けない。
  それはやっぱり羨ましいと思うよ、ソフィア。

悩み苦しみ泣き笑う、すべてを味わうためにここにきた。
ならばより三次元に近い分身が出てくるということにも、きっと意味があるのだろうと彼女は考えた。
















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Comment

せつないですね~ 

いつも素敵な物語ありがとうざいます☆
読み終わったあとの余韻に、いっつも浸っています。
しばらくほぉ~となっちゃいます・・・
出てくる方たちの気持ちが、すごくダイレクトに伝わってきて・・・

これからも楽しみにしてますね~^^
  • posted by わかめ 
  • URL 
  • 2009.04/26 07:43分 
  • [編集]
  • [Res]

Re:【銀月物語 30】 蛍 1 

人間とは哀しくって愛らしい生き物ですね!どこまで昇れば自我から自由に為れるのでしょうか!?
  • posted by dayan 
  • URL 
  • 2009.04/26 09:21分 
  • [編集]
  • [Res]

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Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
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ルシフェルの翼Calling You 開発者。
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