のんびり、やさしく。

ヒーリングと物語とものつくり。

Category [第一部 銀月物語 ] 記事一覧

【銀月物語 101】 日蝕式典 ~ 光の糸 ~

歌のエネルギーがいったん収束すると、トールはそっと少女の後ろから離れ、翼を広げて足場を蹴った。 空中に高く舞いあがると、会場から地球へ広がるグリッドがよく見える。 (グリッド班全員、聞こえるか?) (了解) 放った心話にすぐ反応がある。スタッフルームやグリッド坑道に散らばる人員から、さきほどの歌のエネルギーの到達報告が次々になされた。 (027ポイント、コンマ002、到達) (045ポイント、コンマ00...

【銀月物語 100】 日蝕式典 ~ 歌 ~

アシュタールの部屋を辞した後、二人は控え室に入って打ち合わせをすませた。 警備状況の報告にやってきたエル・フィンが、部屋内にあふれる光に圧倒されて目をしばたたく。 「どんな感じだい?」 「現在賓客を含め4割の入場といったところです。不審者およびトラブルはなし。ステーションの入口で揉めそうになったのは共有エリアの警備班によって穏便におさめられました」 統括として感覚でも把握はしているが、今日は細かくチェ...

【銀月物語 99】 式典準備

「いやです」 にべもなくトールは言った。ここではっきり言っておかなければ、何をさせられるかわかったものではない。 「なんだって私達がそんな演出に使われなければならないんです。あなたがやればいいでしょう、アシュタール」 「まあ、そう言うな。式典なんじゃから、ある程度の演出がなければつまらんじゃろうが」 「だから目立つところは全部お譲りしますよ。それでなくても、私は人為グリッドの開始で忙しいんですから、他...

【銀月物語 98】 破壊工作

こころなしか嬉しそうな表情でデセルが執務机の前に立ったのは、日蝕前日の午後だった。 「戦闘教官さんのクローンのあるラボ、下見に行ってこようと思うんですが外出許可もらっていいですか?」 明日の式典、グリッド計画の準備で部署内はどこもてんやわんやだが、どうやら自分の書類は一段落をつけたらしい。 トールはちらりと机の上の紙の山を見やり、肩をすくめた。 「いいよ。私も行きたいところだけど、これでは無理だな」(...

【銀月物語 97】 フェンリル、還る 5

次にフェンリルは、本体に向き直った。 久しぶりで泣きそうになるかと思っていた本体だったが、その太陽のような色のフェンリルがなんだか別人すぎて笑ってしまう。 「そっちはどうよ」 「解放されたから楽だよ」 フェンリルはいい笑顔で答えた。闇の泥に浸かっていた彼しか知らない本体は、フェンリルってこんなにノリ軽くないぞ、と思わず眉根をよせてしまう。 それに気づいたトールが言った。 「いや、もともとはこういう感じだ...

【銀月物語 96】 フェンリル、還る 4

「ほらこれ。ルースにはごつくて悪いけど、もうもう、デザインより加工を褒めてちょうだい!」 フレデリカの店に、彼女の本体、緑の少女、トールが集まっている。 彼女は奥から、そろいの銀色の指輪を出してきた。それはフェンリルが緑の少女に遺した、鎧兜と巨大なハルバート(戦斧)から切り出して加工したものだ。 「あの馬鹿、自分が巨人族だってこと絶対忘れてるのよね……ルースがそのまま使えるわけないじゃないの。つけもの...

【銀月物語 95】 フェンリル、還る 3

オペはすぐに了承された。 研究所に専門の場所が用意され、私はそこに入れられた。 力づくで鎧を外し、本体いわく「魚のように」捌かれて頭だけを培養槽に入れられた。他に運ばれていった身体がどうなったのかは知らない。 ただ、できれば右腕だけはあの男に返してほしいと思った。彼自身の腕はとうに私に溶けてしまっていたが、お返しに私の右腕を。 金色の溶液に、ぽこぽこと気泡が立っている。 数週間私はそこに入っていた。本...

【銀月物語 94】 フェンリル、還る 2

そのとき、私は巨大な狼だった。 フェンリルと呼ばれていた。 私は黒くつややかな毛並みで、魔狼と呼ばれいつも自由に森や戦場を駆けていた。 その中で、戦乙女の姿をしたあの娘にも出会った。私は娘を背に乗せて走った。首にしがみつき、目を閉じている彼女の感触があたたかい。 あるときは座っている私の大きな背中に、娘は頭をもたせかけていた。とくに何を話すわけでもない。それでもその時間は私にとって宝だった。 しかしあ...

【銀月物語 93】 フェンリル、還る 1

フェンリル。 ……それはフレデリカの元なる魂。 はじめ生まれたのは混沌の中だった。 たいらかな地面に広がる泥濘だった。 ただひたすらに空を見つめた。 動く、とはなんだ。 身体、とはなんだ。 生きる、とはなんだ。 のっぺりと広がる泥の塊のように、ただひたすらに空を見つめた。 あるとき、青空に白い光が走った。 白い翼、たくさんの天使たち。 赤茶の髪の少女が手を広げて立っている。大地の上に。私の上に。 なんて躍動する...

【銀月物語 92】 両腕

「ったく、よくやるよなあ。おかわり」 セラフィトが杯を置いた。はいはい、とトールが笑いながら琥珀色の液体を注ぐ。 天使エリアの一角にある小さなバーで、男二人は久しぶりに旧交を温めていた。 カウンターに片肘をついて、セラフィトは隣の人物をねめあげた。昔通りの銀髪が、穏やかな間接灯に照らされてほんのりと光を放っている。 「お前達のぶちあげた計画はよ、今まで誰もが思いつきながら、誰も手を出さなかった、そうい...

【銀月物語 91】 エル・フィンの多忙な一日

エル・フィンは、ステーション天使エリアに新設された遊撃隊の隊長を務めている。 彼が自らスカウトしてきた七人の隊員とともに、通常の見回り班では対応しきれない緊急の、および高度な案件を扱っているため、当然毎日が忙しい。 地位としては技術主任のデセルと同等であり、エリア統括の二人だけが上司になる。 トールは自らの両腕として二人を深く信頼し、大きな裁量権を認めていた。見ていて働きすぎだと思えば止めることもあ...

【銀月物語 90】 訪問客

「グラッシェアンス、参上しました」 クリロズの部屋のセキュリティを開放をすると、ブルーグレーの軍服を着た一人の男が現れた。 長身に赤みがかった濃い金髪を後になでつけている。完璧な敬礼をしながら、朱色の瞳がなつかしげに笑っていた。 「やあデオン、ひさしぶり。今は敬礼は必要ないよ。楽にしてくれ」 トールは笑って椅子を指し示した。人為グリッド計画が始動してから彼への訪問客も飛躍的に増えたため、クリロズの自室...

【銀月物語 89】 おむかえ

トールは世界樹の根元にいた。オークに似た懐かしい手触りの木肌。かつてあまりにも長く守人として共生していたため、もはや自分の一部と融合しているような感覚さえある。 巨大な根元にある小さなドアから、しわくちゃの小柄な老婆が顔を出した。 「あの子ならいっちまったよ」 「ええ、知っています。ありがとう」 トールは微笑む。先ほどまで、緑の少女はこの老婆の家にいたはずだった。 世界の流れが速くなり、大波小波が人々...

【銀月物語 88】 始動

メッセージは、双方にきていたらしい。 七夕から数日後、期せずして耳に聞こえるスカボロー・フェア。 デセルはルキアの神殿を訪れていた。 神殿の最奥部にある祭壇のさらに奥に、大きな光の柱が立っている。その柱の中央に、ホログラムのようにゆらめくマリアの姿があった。 七夕パーティに行った彼女は分身だった。夏至祭りは平気だったのに人酔いなんておかしいと思ったら、まだ半分彼女は柱に拘束されたままだったのだ。 人酔...

銀月物語 幕間

なんとな~くお盆でまったりモードになってしまい、更新もまったりになっておりますがこんにちは(笑)怒涛の毎日アップが続いてましたけど、実は元々の私はのんびりやなのですwいや、数話書き溜めたストックがあるにはあるんですけどね。なんとな~く、今日じゃないや、って日が続いていまして。アップの日とかはどこぞの上にいるプロデューサー様によって決められてるぽいので、まあそういうときもあるでしょうってことでwまあ...

【銀月物語 87】 星の隙間

「オルダス……いやアルディアス!」 七夕パーティの後、紳士連に次の河岸へ連行される途中、背後からいきなり声をかけられた。 振り向くと懐かしい人物の顔があり、トールは目を細めた。 「セリー。セラフィト、君か」 「なんだよ、お前……何億年姿消してやがった。今頃のこのこ戻ってきやがって。天使エリアの新統括だって、ばかやろう」 最後は涙声になっている。飾らない言葉づかいに、あたたかな親愛の情がにじみ出ていた。 すま...

【銀月物語 86】 星合の夜に 2

緑の少女は、躊躇なくマイクを手にした。いつもの彼女よりも上品で大人っぽい、黒の女性の混ざった状態だ。 にこやかに品よく饒舌に、言語の通じない人のためにもテレパシーを同時に使って、手短に、自分たちが誰でどういう経緯で着任したのか、セキュリティの現状と今後の構想などを話していく。 「細かい計算などはまだまだこれからの、叩き台の話ではありますが」 断って彼女は計画の話に入った。 「つまり、今どんどん増えつつ...

【銀月物語 85】 星合の夜に 1

七夕で月食の夜。 その日、ステーションではあちこちでパーティが催されていた。 当然トールの元にも招待状が届いていた。断ろうかと思っていた矢先、式典などでなく気軽なパーティだからぜひとも出席してほしい、とアシュタールから念を押されてしまった。 あの老人ときたら、最近泣き落としまで使うんだからな。トールはため息をつきながら、フレデリカが作ってくれた新品の服を纏って緑の少女の部屋へ行く。 今回、トール、緑の...

【銀月物語 84】 はじめの一歩

光のブレスレットをつなぐのに足りなかった「黄色」。 それが人の意思であるかもしれないという結論から、少女は練習を決意した。 トールは言わずもがな、デセルもエネルギー調整を専門とする技術者だし、自分だけがエネルギーを自発的に扱うことに慣れていない、という事実に気がついたのだ。 練習といっても「生きている人間の意思」が必要となるならば、三次元の本体同士でもタイミングを合わせなくてはならない。その調整をと...

【銀月物語 83】 息抜き

天使エリアには、大規模な戦闘訓練や実験のための、ルキアの荒れ地に相当する巨大な体育館のような場所がある。 当然何重にも強固な結界が施してあり、かなり荒っぽいことをしても大丈夫だ。 壁際の結界処理を確認して、ふうん、これならね、とデセルは呟いた。 そもそもの発端は、先日デセルが羽を見てもらうために専門のクリニックに行ったときのこと。 経絡図を見て説明を受けたり、三次元の駐機場のように羽を広げてケアしても...

【銀月物語 82】 ぶらんこゆれる

ここちよい風の吹くルキアのブランコに、トールは横向きに腰かけていた。長身の彼が足を伸ばして座れるくらいだから、ブランコはかなり大きい。 その足の間に、緑の少女がちょこんと座っていた。 夏至がすぎ、ジャカランダの並木は花のかわりに青々とした葉をつけて、濃い緑陰を作り出している。 夕方の涼しい風がゆうらりと揺らすブランコの上で、少女はトールの肩先を見つめていた。 そこには普段はしまっている白い大きな羽が二...

【銀月物語 81】 剣術指南

エル・フィンとの模範試合から、数日後のことだった。呼び出されて校長室へ行くと、白髪に長い白髭の紳士が笑みを浮かべて立っている。この人の笑顔は危険だ、といいかげん刷り込まれているトールは、ドアを閉めるなりため息をついて言った。「……今度はいったい何をさせるつもりです? アシュタール」「おう、勘がいいのう。助かることじゃ」「まだ受けるなんて言っていませんよ。それでなくても他の仕事で忙しいんですから」では...

【銀月物語 80】 落とした翼

「羽なんだけど。六枚を……どこかの時点で必要があって、二枚に落とした、ということは? 記憶に……ない?」 少女の本体がそう言ってきたのは、夏至祭りから六日後だった。エル・フィンに強制休暇をとらせた直後のことだ。 なぜ?と聞き返した本体に、彼女は今生で羽が大の苦手だというトラウマを説明した。 ルシオラが死んだときの、羽が片方折れたときの映像が元だと思っていたが、当時自分は痛みを快感に変換されていたはずだし...

【銀月物語 79】 強制休暇

祭のあと、皆は足りないビーズは何なのか、をずっと探していた。 光(白)から闇(黒)をつなぐならば、三原色の黄色が足りない、と発見したのはデセルだ。シュリカンのルビーを含めて、エメラルド、ベニトアイト、ペリドット。確かに黄色はない。 ではその「黄色」は具体的に何を指すのか。色の言語によると、黄色は人間の意思であるという。 ならば下が寝落ちしたりせず、最後まで意識的にエネルギーを扱うことがまだできていな...

【銀月物語 78】 足りないビーズ

夏至前から、デセルはクリロズの動力部で調整を行っていた。 いままではほとんどクリロズ自体に入ったことがなかったが、今回天使エリアとクリロズのセキュリティをどちらもトールが統括することになったため、同じチームが管理にあたることになったのだ。 元々クリロズは同艦隊の一部であったし、エル・フィンの遊撃隊も兼務だしで、それほど違和感はない。 デセルは黄緑色の瞳をきらめかせて、動力源の一番最深部、更に中心部分...

【銀月物語 77】 夏至祭り

陽の気が極まる夏至前夜。 銀樹の提案で、浮島クリスタル・ローズ・ガーデンでは庭でケルト音楽の夕べが催された。 トールやエル・フィンも、ハープやフィドルでメイン演奏者として参加することになった。 ちょうど数日前、マリアが夢の中でレオンに黒いティンホイッスルをあげていたので、もちろんレオンも参加。 銀樹自身はフィドルや相当の腕前のバイロンを叩く。緑の少女もハープと踊りやる!と増えたあちこちの家でハープを探...

【銀月物語 76】 ジャカランダの花の下

ジャカランダの並木が、紫色のみごとなトンネルをルキアに作り出している。散った花びらが白壁の家の前を埋めて、まるで一面青紫の絨毯のようだ。 それは本体のいる土地で初夏のさわやかな気候に咲く、桜と同じように緑の少女が愛する樹だった。 家の横、並木を見渡す位置の木陰に、大きな木製のブランコがかけられている。 トールと緑の少女はそこに並んで座り、のんびりと花を眺めていた。 「あれから、考えたんだけどさ」 足先...

【銀月物語 75】 思い出話

「……それはそれは、ひどい戦いじゃったよ」 校長がそう言って白髭をひねると、聴きいっていた生徒達の間からため息がもれた。 「先生、バラッド(古詩)のようなことは本当にあったんですか?」 尖り耳に丸眼鏡の少年に、もちろんあったとも、とうなずく。少年はますます目を丸くして尋ねた。 「有名な翼の物語や、月の騎士の物語も、ですか」 「そうじゃとも。伝説というのはな、実際にあったからそう語り継がれてきたんじゃよ」 ...

【銀月物語 74】 ヒカリの子

「右脇が甘いぞ」 結界を張ったクリロズの裏庭で、トールの攻撃がエル・フィンを狙う。はい、と答えながら、部下は手に握った木の枝で突きをはらった。対するトールの武器も、そのあたりに落ちていた手ごろな木の枝である。 「そうだ、ステーションの例の件は解決しました」 アドバイスの礼を述べながら身体をひねり、はらった体勢から回転力をつけて相手の胴を狙う。 「それはどうもありがとう。助かるよ」 乾いた音をたててトー...

【銀月物語 73】 赤ちゃんドラゴン

緑の少女とトールはルキアでひと休みしてから、技術部の懇親会にちらっと顔を出した。 行ってみると一次会のお開き直前で、皆ですっかりできあがっている。 顔を出したツインの上司に、陽気な酔っ払い達がわーきゃーと盛り上がって何度目かわからない乾杯をしてくれた。 部門のセキュリティの仕事は時間もきりもなくて激務だが、皆暖かくて気のおけない人達ばかりだ。職場から動けなくてもさほどの不満がないのは、皆の人が好くて...

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さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

エンジェルリンクファシリテーター、
レインボー・エナジー・フレイム(REF)
ルシフェルの翼Calling You 開発者。
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