のんびり、やさしく。

ヒーリングと物語とものつくり。

User Tag [小説 ]を含む記事一覧

【陽の雫115】 Trumps 8

足音を荒げ、すでに人でいっぱいの書斎の戸口まで公安部隊がなだれ込んでくる。 優越感に満ちた顔でグエンが頷いた時、突如として部屋に女性の声が響き渡った。きれぎれの震えた声で少々聞き取りづらいが、その様子から録音を最大限のボリュームで再生しているようだ。 「……教えるわ。……私もあんなことされるのかと、怖くて……。喋る、…から守って。……だって、…あんな……」 続くすすり泣きに、一度は笑んだグエン・ミン大将の顔が真...

【陽の雫114】 Trumps 7

「……こちらへ」 赤っぽい焦げ茶の髪の青年は、周囲をうかがいながら背後の男をそっと部屋へ招き入れた。きっちりと軍帽をかぶった長身が、青年に続いてドアの隙間に消える。 ドアを閉め灯りをつけると、埃のにおいが鼻をつく。フェロウ隊の備品倉庫のように使われているその小部屋には、さまざまな書類や備品が半分雑然と保管されている。狭い通路のみ残して周囲三方は無機質な灰色の棚が天井まで据えつけられており、下にはダンボ...

【銀月外伝】 夏至の扉

ガキン、と鍔が鳴った。 よし、と小さく呟いてからの数合。互いに走り寄って激しく打ちあったが、鍔ぜり合いになれば筋力の強さでこちらが勝つ。本体にも昔していたような日常での基礎鍛錬を課して、毎日十キロ前後は歩かせているのだ。 しかし相手はほんの瞬間力を抜いたと思うと、猫のように細い身体をしならせて一気に間合いの向こうまで飛び退った。手元から流れ去る銀髪に、オーディンの唇が短い口笛を奏でる。相手にとって不...

【陽の雫 外伝】 Crocus vernus

お腹が痛いのかと思ったのだ。 道端に変な姿勢で蹲り、地面を見つめているようだったから。 大丈夫ですかと背後から声をかけて、近づいてそっと肩を叩こうとしてわかった。その人は、長い手足を窮屈そうに折りたたみ携帯機器のカメラを構えて、足元に咲きそめた紫色のちいさな花を撮ろうとしていた。 春の女神の爪先みたいなその花は、ぬるみはじめた土を割って地面すれすれに咲く。舗装された道路の脇は広い公園になっていて、春...

【ものがたり】 森のサーカス

夏の宵闇がせまり、あちこちの窓に明かりが灯る頃。涼をよぶ風に誘われて夕闇に繰り出す人々のざわめきの中、街外れから音楽が聞こえてきた。徐々に大きく聞こえてくるどこか懐かしいそれは、顔を白く塗ったクラウン(ピエロ)のアコーディオンと赤いリボンのフィドルだ。「サーカスだ!」「サーカスが来た!」さっそく手を振りながら駆け出すのは、外れの空き地に彼らがテントを張り始めた時から目ざとく見つけていた子供たちであ...

【陽の雫104】 セピアの仕事部屋

ちいさな卓上のランプだけが灯り、その光もうずたかく積まれた資料や書類に阻まれてドアまで届かない、うす暗い部屋。 質素だが頑丈で大きい机に向かって、ルカは背を丸めるようにして仕事を続けていた。 大神官室の隣にある、通称仕事部屋。 使い込まれた机と椅子、それに壁を埋める書棚、ガラス戸のついた腰高のキャビネット。奥には大きな窓もあるが、今は厚手のカーテンで外界からさえぎられている。 華美な装飾はないが、神殿...

【陽の雫 96】 山麓の翳り 3

拘留されている北部基地の一室で、セラフィト・ケントゥリアはのんびりと目を覚ました。 目の前には蜂蜜色の髪をした若者。すこし呆れた顔をしているのは、セラフィトに焦りの色がまったく見えないからだろう。 「よう、ニールス。おはよう」 にやりと笑って伸びをする。 どうせこのところ激務で睡眠時間が減っていたから、ちょうどいい機会とばかりに睡眠薬と知りながら出された飲み物を飲んで、気持ちよく爆睡していた彼であった...

【陽の雫 91】 水と宿と緑

中央大神殿の大神官執務室の窓からは、中庭の緑がよく見える。 ななめに射す秋の木漏れ日が落ち着いた色のカーペットにちらちらと踊る中、アルディアスは大きめのプロジェクタに画像を出してじっと見つめていた。 一面の星の大海。 中央やや下、緑の丸印で囲まれている惑星が、彼の住むヴェールだ。 右上の黄色の丸印はサライ。 左上の水色の丸印はアキュームという。 現在、この三星の勢力で星間争いをしているところだった。 サ...

【銀月外伝】 瑠璃色綺譚 1

それは、桃の花もそろそろ終わり、新緑がとってかわろうかという頃合いでございました。 父母に連れられていった大きなお屋敷の中庭には、しなやかな枝にたくさんの新芽をつけた立派な柳の木と、大きな茉莉花の茂みがありました。 両親が領主様と話している間、五つになったばかりのわたくしは、胸に布製のちいさな人形を抱いて、その中庭をうろうろしていたのです。赤く塗られた柱の渡り廊下がその周囲をめぐっており、そこから出...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - Party Party -

「来たか」 昼間がそろそろ終わろうとする時間。 グラディウスを私室に呼び出した琥珀色の髪の司令官は、到着報告をするとかけていた椅子から立ち上がった。 そのまま近づいて背を押される。その先には寝室のドア。 明かりをつけた部屋に押し込まれた背後から、「そこの服に着替えて来い」という声がかかる。 彼ひとりを残してあっさりと閉まったドアを見やり、広いベッドへ、そして脇のクロゼットの表側に吊るされた服へと視線を...

【陽の雫 90】 冬の手前に

シンプルなジャケットに長い銀髪の長身が、なにやら考えるふうにゆっくりと歩いている。 珍しいのはそれが基地や神殿内ではなく、ショッピングモールのそれも大型書店とは反対側の区画という点だ。 そもそもここに彼がいるという時点で、かなり稀な確率であると言わねばならない。 時移りから二週間。晩秋の陽差しはまだ暖かいものの、日ごとに朝晩は冷えるようになってきて、ショーウインドウは冬物一色だ。 眺めつつ歩いている彼...

【陽の雫 89】 pierce a hole in …

「あ、ここです」 階段を下って濃い色のドアを押しあけると、カウンターの奥の端に座っていた濃い色の金髪が振り返った。 広すぎない店内はよく手入れされた飴色を基調にまとめられ、しっとりしたBGMが流れていた。白ひげをたくわえたマスターがひとり、静かにグラスを磨いている。 「すみません、お忙しいところにお呼び出しして」 「どういたしまして、なかなか会えないしね。先日は訪ねてくれてありがとう。リンが喜んでいたよ...

【陽の雫 88】 時移りの神事 2

森の若木のような気配が突然自分を包み、シエルは思わず声をあげてしまうところだった。 (ルカ兄さん!?) (祭主様からお許しが出たから、少しだけね) 微笑んだ気配はそのまま、身体は蝋燭を持って立っている少年の意識だけを連れて、翼が生えたように空に飛んでゆく。 肉眼ではなく脳裏にあざやかに浮かんだ、上空からはるか見下ろした世界に、シエルは息をのんだ。 中央大神殿の舞台を囲む四つの大きな篝火、衛士たちの掲げ...

【陽の雫 87】 時移りの神事 1

夕焼けの色を帯びてきた太陽が、遠く西の山に身を寄せようとしている。 神殿の中庭と回廊には巫女や神官たちが揃い、手に手に鈴を鳴らしながら聖歌を歌っていた。 水に広がる波紋のように音の響く広い庭の中心には正方形の舞台がしつらえられ、白くゆったりした式服をまとい矢筒を背負ったアルディアスとルカが、弓を片手に背中合わせに立っている。 ヴェールの各地で同時に祭祀が行われるのは、夏の大祭と同じだ。 陰陽の神事ほど...

【陽の雫 86】 弓

小気味よい音を広い練習場に響かせて、ルカが弓をおろした。 「的中。さすが」 隣で微笑んだアルディアスが、今度は自分の弓を引き絞る。 春夏の陽の気から秋冬の陰の気へ、あるいはまた逆へ。春分と秋分に行われる時移りの祭りを明日に控え、二人は弓術の練習をしていた。 祭りは、別名鏑矢の神事とも言われる。 特別に作られた弓矢を使って鏑矢を放つと、風をきって不思議な音が周囲に響き渡る。その音によって古きものを還し新...

【銀月外伝】 La promessa del mare - lettera d’amore -

親愛なるシレーナへ。 この手紙は、君に届くかな…。 わからないけど、伝わることを祈って綴るよ。 肉体を失くした今、私の髪は何色なんだろう。銀色? それとも、彼の焦げ茶色? まあ、どちらでも変わらないけれど。 ようやく思い出したんだ。 あの時、焦げ茶の髪をしていたとき、私はいわゆる海賊に親しい友人がいて。 まともな商人なら報酬を払えば護衛もする、弱小商人の寄り合い船なら頼まれなくても護ってやる、でも悪徳で儲...

【銀の月のものがたり】 道案内

【銀の月のものがたり】 世界は大きく繋がってはいますが、別立ての物語になっておりますので第二部、外伝、どこから読み始めていただいても大丈夫です♪◆◆第一部 トールや緑の姫君をはじめとする、「上の人たち」のリアルタイムで起こった話。 目次http://satukilight.blog.fc2.com/blog-entry-462.html登場人物紹介(随時更新) http://satukilight.blog.fc2.com/blog-entry-408.html◆◆第二部 陽の雫 アルディアスとリフィア、ヴ...

銀の月のものがたり 外伝目次

------【銀の月のものがたり】 道案内 http://satukilight.blog.fc2.com/blog-entry-556.html-------- ■外伝■ ★印は現在の物語~ The SIX ISLES(ザ・シックスアイルズ)~【導く者】【導く者 2】 【導く者 3 -出会い-】【グラディウス - 浮かびくるもの】★【グラディウス - 相反するもの】★【グラディウス - 怯える小さなもの】★【グラディウス - 繋ぎ待つもの】★【グラディウス - 名の無きもの】★【グラ...

【陽の雫】 登場人物紹介

■アルディアス・L・フェロウ (アルディ、アル、オルダス)  本編の主人公。長身に長い銀髪、遊色する藍色の瞳(ベニトアイト)。強いサイキックを持ち、軍人でありながらヴェール星の大神官を兼務。 ■セラフィト・ケントゥリア (セリー、北部訛りではセロス・ケンテル)  軍人。焦げ茶の髪とアキシナイトの瞳。ウルフヘアで体格がいい。アルディアスとは士官学校からの旧友。 ■ニールス・ヴァリスバーグ  軍人。蜂蜜色の髪...

【銀月外伝】 La promessa del mare 3

胸元の小瓶から、海のちいさな囁きが聴こえる。 列車の窓からはもう、青く広い輝きが見えていた。 もう少し。 もう少し。 はやる心を抑え、何度目か荷物を確認する。 旅行用のマントがひとつ。鞄の中には私の本と、身近な細々としたものが少し、それから金髪にも黒髪にも似合いそうな、金色の縁取りのついた鮮やかな緑色のリボン。 自分なりの身仕舞いをととのえて、私はあの海に向かっていた。 陸に戻ってからずっと、繰り返して...

【銀月外伝】 La promessa del mare 2

一日二日で、足は立ち上がって水場に行ったり周囲に生えている食べられそうな草を採ってくるくらいはできるようになった。 しかし思ったよりも難儀したのが左手首で、甲をそらせると鋭い痛みが走る。力を入れてオールを漕ぐことはしばらく難しそうだった。 流された小舟もなかなか見つからず、月が二度満ちるほどの間、私はその岩場に暮らした。 何度も彼女が海藻や貝を届けてくれた。夜に見た時は黒かった長い髪は、昼は青い海に...

【銀月外伝】 La promessa del mare 1

ごほっ、と水を吐いた。 しばらく咳き込み、やっとのことで上半身を起こすと足に刺すような痛みが走った。生きている。思わず自分の手を見つめた。 白く浮かぶ月に寄せ返す波音。 「ここは…。君は……?」 岩礁に両手をついてこちらを見ている若い女性に問いかけた。 その下半身は岩に隠れて見えないが、波の下のはず。長く波打つ夜色の髪も濡れ、服は着ていないように見えた。 彼女が助けてくれたのだと聞いて、ほっと息をつき落ち...

【銀月物語 第二部 陽の雫】 目次

【銀の月のものがたり】 道案内 http://satukilight.blog.fc2.com/blog-entry-556.html-------- ◆◆第二部 登場人物紹介(随時更新)◆◆ 1 【惑星】2 【満月】3 【担当】4 【出撃】5 【人質】6 【再会】7 【早春】8 【神降】9 【緑陰】10 【双極】11 【戦果】12 【異動】13 【部隊】14 【指令】15 【噂話】16 【心話】17 【冬空】18 【正体】19 【炎柱】20 【安眠】21 【標...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - nightmare 3 -

※作中えぐい表現があります。苦手な方はお気を付け下さい。------ 夢に、うなされる。 遠く時を経て、過去の痛みを見つめながら。 足を引きずって歩いている。手をついた壁に、不規則に途切れた赤い波線がいくつも描かれてゆく。 死体置き場から出ようとして。 浅い呼吸。 酸素が足りず、長くゆっくり息を吸おうとすると冷や汗が額に吹き出す。 歩いても歩いても、灰色の廊下が終わらない。 辿り着いた部屋の医師が、肥った女幹部...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - nightmare 2 -

※作中えぐい表現があります。苦手な方はお気を付け下さい。------「よう。元気か?」 無遠慮に開けられたドアの脇。若い男の赤茶の髪をかすめ、飛ばした指弾が硬質な音を立てて跳ね返る。うっかり制服組に当てたら処罰ものだから、銀玉は威嚇であってはなから当てるつもりはない。 体内時計は、約20時間眠ったと告げている。 声の主は小さく口笛を吹いて、面白そうに緑色の目を細めた。 「弱っても戦闘員か。たいしたもんだ」 「...

【銀月外伝】 THE SIX ISLES - nightmare 1 -

※作中えぐい表現があります。苦手な方はお気を付け下さい。------<死神>と呼ばれたグラディウスが、まだ10代半ばの少年の頃の話。 背中の激痛で、一瞬目が霞んだ。 戦場でそれは命取りだ。右腰に重い一撃を受け、衝撃で前にのめる。どうにか踏みとどまると、振り返りざまに相手の脇をかいくぐって致命傷を与えた。 片手で傷をかばっていては戦えない。 患部の筋肉に力を入れて、血止めを意識する。手持ちの布を巻きつけて戦い...

【銀月外伝】  天翔ケル白銀ノ翼

星を、眺めているのが好きだ。 大きな翼を高い山の頂に休め、眼下の雲海と星の海がひとつに混ざってゆくさまを見ているのが。 音がしそうな満天の星が、中天をめぐり人界に流れこんでゆく。 生命のいない岩山の上で、ちいさないのちの息吹を雲の下遠く確かに感じながら、眠るのが好きだ。 ああ生まれくるのだ、と思う。 はかない泡のように結んでは消えてゆくいのちの輪廻。 我が翼は白銀の息吹。 遠く凍る天に羽ばたけば氷雪を喚...

【銀月外伝】 月の森のティールーム ~本番編~

そしてティールームの開始時間。 待機しているバトラーは、トールやアルディアスなど銀髪の人々に、シエル、ルカ、ユーリヒ、ラウシェン、オーディン、ニールス、リューリエル、レイヴン、デセル、リンクス。 リンクスは女性だが長い髪を背に三つ編みでまとめ、ベストを着て軽やかに歩いている。 裏方のリフィアが順番に銀髪の人を呼んでは、本人たちが適当にやったのでは足りないと、その長い髪を背できれいに「一本みずら」に結...

【銀月外伝】 月の森のティールーム ~準備編~

リチャードは片眼鏡の奥の瞳をやわらげ、にこにことして周囲を見回した。 夜にティールームが開催される月の森。今回は手伝いも多いこととて、わいわいした賑わしい人の流れも心を高揚させる。 かつて吸血鬼ヴェスパタインの元で半世紀の長きにわたって仕えた彼は、一流の執事たる矜持を持っている。 今回手伝いに来るシエルやレイヴンといった若者たちに、服の着こなしや立ち居振る舞いなどまで細かく教え込んでゆくのも楽しいこ...

【陽の雫 75】 家族

神殿で業務をこなすルカの元に聞き慣れた声の心話が届いたのは、まだ日の高い頃、現地でシエルが発見されてしばらくのことだった。 (ルカ、聞こえるかい?) (はい、アルディアス様。はっきりと) 書類の整理をしていた手をとめ、周りの人間に心話中を知らせるために片手を耳に当てる。 市街戦の戦場になった街は、かつてエル・フィンが赴任していた地方都市よりもさらに遠い。中央からは飛行機が必要な程離れている。 しかし希...

ご案内

Moonlight

Counter

Calendar & Archives

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

MONTHLY

Profile

さつきのひかり

Author:さつきのひかり
物語を書くこと、一斉ヒーリングをすること、それに太極拳とケルトハープが趣味♪
最近はワイヤーワークにもはまり中。

エンジェルリンクファシリテーター、
レインボー・エナジー・フレイム(REF)
ルシフェルの翼Calling You 開発者。
プロフィール詳細

コメントレスはできたりできなかったりで、のんびりですみません^^;
お手紙はこちらのフォームから。
土日はPCに触れないことが多いので、メールのお返事は平日になります。

携帯(ガラケー)版スマホ版

New entry

ブログ内検索

Instagram

Twitter



Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR